金曜日、注目の6月の米国雇用統計が発表され、市場は面白い反応を見せた。
発表された中身は非農業部門雇用者数は先月の+58万3千人(改定値)から大幅に改善して+85万人となったが、失業率は先月の5.8%から1ポイント悪化して5.9%(市場予想は5.7%)となり、また時間当たり賃金の伸びも市場予想よりも悪くて結果としては“良し悪し混在。”となり、FOMC.後に一挙に高まった早期利上げ期待の雰囲気はどうやら収まった。
ドル・円相場は発表直後には“良し。”に反応して111.60近くまで買い上げられたが直ぐに売りが入って111.20まで下落し、その後多少の行ったり来たりは有ったが結局は111円台を割れることとなった。
債券利回りもドル・円相場と似た様な動きを見せ、発表直後は1.5%を上回る水準まで上げたが直ぐに切り返して週の安値である1.430%で週を終えた。
ニューヨーク株式市場の反応は“6月の雇用統計を受けてFRB.は当面早急な緩和脱却には動かない。”と見て買いが進み、ダウは4日連騰、ナスダックは2日連騰、そしてS&P.は7日連騰して3指数とも最高値を更新して週を終えた。
ドル・円相場の動きを見ると、一言で言って“市場は相当気迷っているな。”と感じる。
発表直後のドル上げ、そして落ち着いたらドル下げがそれを物語っていようか?
本日が米国の独立記念日で市場が休場となる為、3連休を控えてポジション調整が起きた可能性が高いが、確かに順張り(相場が上がれば一緒に追いかけて買う。)が得意なシカゴ・IMM.の投機筋は先週も円の売り持ち(ドルの買い持ち)を増やしており、ドルの高値圏での利食いに走ったことは想像に難くない。
恐らく今週発表の数字では円の売り持ち額(ドルの買い持ち額)が減っているものと思われる。
興味深いのは逆張り(相場が上がればそれに売りで立ち向かう。)が得意な我が国の個人投資家は先週からのドルの上げに対して売り向かい、ついにネットのポジションが僅かながら円の買い持ち(ドルの売り持ち)に転じた。
東の投機家(我が国の個人投資家)と西の投機家(シカゴ・IMM.)が相異なる相場観を抱いている感じがするが、まあこれも双方に気迷いがあるのだろうと考えれば納得出来る。
問題は、何方が正しいかであるが..
この気迷いは明確なFRB.のスタンスを計りかねての事であろうが、先週面白いニュースを見た。
FRB.が6月末に行ったリバース・レポの額が約1兆ドルに達したと言うニュースである。
リバース・レポとは短期資金市場で金利が上昇した場合に中央銀行が市場に資金を提供するシステム・レポの逆で、市場に余っている資金を中央銀行が吸収するオペレーションの事で、民間の金融機関から余剰なドル資金を吸い上げる形となる。
今回FRB.が巨額のシステム・レポを行った背景には、FRBが金融緩和で大量の資金を供給し続ける一方、市場では金が余っていることを意味する。
余った金は株市場に流れる。=株高。
余った金は長期債券市場に流れる。=長期債券利回り低下。
FOMC.後に米国長期金利が上がるどころか下がることを不思議に思っていたが、もしかしたら市場がこの様なテクニカルな点も見逃さないでいるのかも知れない。
今週は前回のFOMC.議事要旨が発表されるが、早期利上げを決めたFOMC.での議論の中身を知ることは大変興味深い。
パウエル議長と他のFOMC.メンバーとの意見の相違がより明確になる様であれば、早期利上げ期待に再び火が付く可能性も有ろうか?
今週のテクニカル分析の見立ては依然としてレンジ取引を示唆。
何方かというと下サイドのブレークに注意。
110.40を下切るとさらなる下落に要注意。