“早期利上げ期待は後退。”

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先週の金融市場ではFOMC.後に盛り上がった早期利上げ期待は後退し、FOMC.後に大きく下げた株価は値を戻し、ナスダックは火曜日から木曜日まで三日連続で最高値を更新し、S&P.も木曜日と金曜日に相次いで最高値を更新した。

債券市場では一時1.4%を割り込んだ10年債利回りも1.5%台を回復したのだが、先週も述べた様にそもそも早期利上げ期待が高まっているのに10年や30年の長期債の利回りが低下したこと自体が理解出来なかったので、一言で言えば“やれやれ、やっと落ち着きを取り戻した。”ということであろうか。

ドルは小動きの中、主要通貨に対しては前週のドル買いの流れの調整となるドル安が進んだが、対円ではドル高となった。

6/21始値 6/25終値
ドル・円 110.21 110.78
ユーロ・ドル 1.1862 1.1937
ポンド・ドル 1.3793 1.3882
豪ドル・ドル 0.7482 0.7593

早期利上げ期待が後退した大きな理由は、パウエルFRB.議長の22日の米下院の公聴会での証言内容であろうか?
パウエル議長は足下のインフレの上昇は一時的な要因が大きく、いずれは鈍化し始めるとの見解を示した上、“雇用が好調すぎるとの考えやインフレの兆候への警戒を理由に、予防的に利上げすることはない。実際のインフレやその他不均衡の事実に基づいた証拠を待つ。”などと述べてインフレの兆候によって拙速に利上げに踏み切るつもりがないことを明確にした。

これだけ強い言葉で早期利上げの可能性を否定されたら市場に安心感が広がることは理解出来るが、どうもこれらの発言は利上げに積極的な所謂タカ派のFOMC.メンバーのそれとは余りにも違い過ぎる。

タカ派と目されるFOMC.メンバーの発言を挙げてみると、
-ブラード・セントルイス連銀総裁
“インフレ抑制に向け、利上げを2022年終盤までに開始すべき。”
-カプラン・ダラス連銀総裁
“テーパリングを直ぐに開始することを支持する。
-デイリー・サンフランシスコ連銀総裁
“今年の年末もしくは来年初めにもFRB.はテーパリングを開始する準備が整う可能性がある。”

勿論他にもパウエル議長寄りのハト派的な意見を述べるFOMC.メンバーは居るが、部外者としてみれば“FRB.としては一体どうしたいの?”と首を傾げざるを得ない。

米国長期金利の動向に敏感なドル・円相場は10年債利回りの上昇に伴って値を上げたが、上で紹介した様にその他主要通貨に対してドルは下げている。
再びドル安&円安の状況だ。

ドルにとっての上昇要因として米国金利上昇による金利差拡大が挙げられるが、同時に膨らみ続ける米国財政赤字と貿易赤字の事を忘れてはなるまい。

FOMC.内で緩和政策からの脱却のタイミングについて意見が分かれる状況では金利差拡大だけに目を向けている訳にも行くまい。

10年債利回りが1.7%~1.8%へと急上昇する様な事が無い限り、ドルが大きく上昇するとも思えない。

ドル・円に関してはレンジ取引が続くのであろうか?

今週のテクニカル分析の見立ては110.10~111.10のレンジを意識しながら、下サイドに留意すべきとのこと。
110.10を下切れば109.45までの調整も有りか?

我が国個人投資家はレンジ取引の中で上手く立ち回って、レンジのドルの安値ではドルを買い、高値ではドルを売っている。
1年3ヶ月ぶりの111円台を見てドルの買い持ちポジションをぐっと縮めて現在は約4億ドルの買い持ちとなっている。

お見事である。

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