工場経営者として3つの事業所を駆け回る日々を送りながら、資産運用の手段としてFXを選んだMさん。高レバレッジ取引での失敗で後悔をした経験から、ロスカットにならない「安心ロット」での堅実運用に切り替え、着実に収益を積み重ねている。最近はSNSを利用して知識を学んでいるという。Mさんに、FXに対する思いをうかがった。
(この記事は2021年4月8日に掲載した記事名『工場経営者 Mさん「経験則に基づくルールで仕事の合間に堅実運用」トップトレーダーに聞く!(前編)』を一部修正したものです)
Mさん プロフィール
年齢性別 :40代男性
職業 :会社経営者
FX歴 :3年
トレードスタイル:デイトレ、スキャルピング
投資商品 :FX
収支 :2021年1月&2月(約2カ月間)で1,200万円超
※㈱外為どっとコムでの収支
通貨 :ポンド/円
趣味 :ソロキャンプ
▼目次
1.選んだ資産運用はFX
2.デモ取引で練習、資金5万円からのスタート
3.葛藤から2年間のブランク、そして再開
4.ツールの使い方はコールセンター、手法はSNS動画
5.ロット(取引数量)を増やした取引で後悔
6.ロットを減らしたら相場についていけるように
7.テクニカルは向いていない
選んだ資産運用はFX
編集部:- FXとの出会いからお聞かせください。
Mさん:- 株式などFX以外の金融商品の投資経験は、今までまったくありませんでした。ただ、投資による資産形成には興味がありました。私は製造会社の社長ですが、工場を経営し、コツコツ貯めてきた個人資産を増やす方法として、数ある資産運用方法の中で一番手軽に始められそうだったのがFXでした。
編集部:- FX取引の手軽さが魅力的であったということでしょうか?
Mさん:- 私は事業をしていますが、会社経営は成果が出るまでに、かなりの時間がかかるんです。その間に世間の状況はどんどんと変わっていきます。例えば投資でいえば、収益物件で利益を得るためには、家賃収入を見越して土地と建物を購入し、まず、入居者を探して、その後は物件管理を行うなど、収益が得られるようになるまでに、いろいろな条件をクリアする必要があります。その上、不動産会社や管理会社と取引しなければならないので、1人だけでは完結しない投資なわけです。ところが、一方のFX取引は個人で簡単に始められるし、結果が出るのも速い。私は、そこにFX取引の魅力を感じました。だから現状、資産運用はFX一本です。自分が頑張っただけの「見返り」もあると感じています。
編集部:- 資産運用で個人財産を増やすためにFXを始められたのですね?
Mさん:- もちろんそうです。世間がすごいスピードで変化する中で、経営者として自分が置かれている立場、営んでいる事業業種が、向こう何年、「メイドインジャパン」として存在できるのかを考えたとき、何があっても安心できるくらいに個人資産を増やしておけば、今の生活を「この先20年くらいは持続できるな」と考えたんです。
デモ取引で練習、資金5万円からのスタート
編集部:- FXで資産を増やしたいと思っても、なかなか一歩を踏み出せない人も多いようですが、Mさんの場合どうでしたか?
Mさん:- 私も最初はデモ取引で何度も練習していたんですが、やっぱり、本気でやらないとダメだと思って、5万円で本番の取引を始めたんです。スキャルピング、デイトレ、スイングなどで、売買の回数はもっと細かくするのがいいのか、時間のスパンはとったほうがいいのかなど、どうすれば利益が得られるのか、手法をいろいろと追求していきました。チャートの見方もだんだんとわかってきて、「これならいけるかな」と自信がついてきたのは、始めてから3カ月くらい経ってからですね。そこで資金として500万円を入金し本格的に取引を開始しました。ただ、取引ロットが大きくなり、利益も大きくなりましたが、損をする金額も大きくなっていき大きな損失を出してしまうことも経験しました。
葛藤から2年間のブランク、そして再開
編集部:- 2年ほどFX取引を停止されていたとの事ですが、いったん止められたのには、何か特別な理由があったのでしょうか?
Mさん:- その時期、自分の中である葛藤が生まれて、FX取引から離れていたんです。
編集部:- どういうことでしょうか?
Mさん:- FXは投資ですから、いわゆる仕事のときのような「労働」はともなわないですよね。そのため「自分が汗水垂らして作った商品で稼いだお金を、FX取引で短期間の内に簡単に利益を出したり、逆に損失を出してしまってもいいものなのか」と悩んでしまったんです。だから、一旦は、FX取引を全部忘れるくらいに完全に為替の世界から離れました。
編集部:- 深く悩まれたんですね。再開するきっかけは何だったのでしょうか?
Mさん:- FX取引はしていませんでしたが、暇なときには、FXのSNS動画を見ていたのです。「そうそうこんなんやったな」とか「へえ、そんなに大きい金額を動かしているのか、この人すごいなあ」とか、そんなことを思いながら見ているうちに、「そういえば、まだFX口座が残っていたかも」と思い出したんですね。そして、取引を再開しました。だから、自分はFXの”十年選手”などではなくて、経験値としたら、まだまだ甘い方です。
ツールの使い方はコールセンター、手法はSNS動画
編集部:- FX取引を始めた頃、ツールなどはすぐに使えるようになりましたか?
Mさん:- 外為どっとコムさんでは、コールセンタースタッフがどんな質問でも細かいところまで丁寧に教えてくれました。だから当時、オペレーターの助けも借りながら、ツールの使い方を学んでいきましたよ。
編集部:- 書籍などでは勉強はされなかったのでしょうか?
Mさん:- トレード手法のほとんどは、SNSにアップされている動画から学びました。いろんな人が動画をアップされていますよね。結構見ています。
編集部:- SNSで学べることは多いと思いますか?
Mさん:- もちろん多いですね。ただ、自分に合わないと感じるものもあります。ですから、経験則から取捨選択しています。たとえば、安倍前総理が辞任したときとか、アメリカのトランプ前大統領がコロナにかかったときとか、ドル/円相場がものすごく動きました。また、雇用統計の発表のときも、動きが出ることは予測できますよね。ただ、上がるのか、下がるのか、どっちに進むかは、誰にも分からない。SNS上の方々は、そういうときには極力ポジションを持たないようにすすめます。そんな時、実は私は逆にポジションを持つようにしています。
編集部:- いろんな人の意見や手法を参考にするけれども、自分に合うか、合わないかは、最終的には自分の経験から判断するということでしょうか?
Mさん:- そうです。彼らの予測が実際とは逆になることもよくあります。次の動画を見たときに、そのことに触れるのかなと思ったら、まったく触れないわけです(笑)。「あまり当てにならないな」と思うわけです。この瞬間から1時間後に何が起きるかは、誰もわからないのです。結局のところ、自分の経験とセンスで、自分を信じて取引するのが重要かなと捉えています。
ロット(取引数量)を増やした取引で後悔
編集部:- 500万円の資金を運用した後、運用結果はどうなりましたでしょうか?
Mさん:- その後、100ロット、1,000ロットと取引数量を増やしました。収支がプラスになるときは、ワクワクしますが、マイナスになるときは、ドキドキするわけです。会社を経営していますから、大金は見慣れていますが、一瞬で損失を出すことが頭をよぎると、やっぱり、仕事が手につかなくなったり、チャートから離れられなくなったりするわけです。ちょうどそのころに、強制ロスカットを何度か経験し短期間で300万円を失った経験もあります。そこで初心に立ち返り、安心できるロット数までポジション数を減らしました。やはり、他のことが手につかなくなるような状態はよくないと、考えを改めました。
編集部:- そんなときもあったのですね。
Mさん:- 維持率が105%になるようなことは、絶対してはいけないのだなと思いましたね。資金が5万円なら110%になって、ちょっとの変動で強制ロスカットされても、損失の金額はたかが知れています。しかし、資金が2,000万円となると話は別です。維持率105%にまでになると、これがなかなかの金額なのです。それ以来、強制ロスカットには絶対にならないと思える「安心ロット数」まで、ポジションを減らして運用するようにしました。
ロットを減らしたら相場についていけるように
編集部:- なるほど。それはリスクを取りすぎないレベルまで、レバレッジを下げたということだと思いますが、それで何かトレードに変化はありましたか?
Mさん:- ええ、相場の動きについていけるようになりました。資産はできるだけ早く増やしたいと思います。でも、だからといってロット数を増やしすぎると、リスクも高くなりすぎて、結局、自分が目指すところから、どんどん離れていってしまうんです。
編集部:- 相場の動きについていけるレベルまでリスクを抑えた運用のほうが、大きな利益を狙って高額運用するよりも、最終的には「利益」がのせられるという「経験則」ですね。
Mさん:- こんなのは、専門家の人にしてみたら、基本の「き」なのかもしれませんが、私は「そうなんだ」ということに気が付いたんです。私のルールで言えば、運用資産が2000万円なら最大2000ロットまでにするということです。
編集部:- 保証金でいうと運用額の半分だから維持率200%に保って運用するということですね。
Mさん:- 相場が逆行しても維持率140%程度で収まるようなイメージです。だいたいですが、今、相場はレンジなのか、それともトレンドで「上向き」なのか「下向き」なのかっていう根本的な判断をした上で、私はレンジ相場で、ちょっとした差額を狙いにいくタイプなんです。2週間もすれば、だいたいプラスマイナスゼロくらいに戻ってくるレンジ相場です。
編集部:- 「経験値が少ない」と謙遜されていましたが、1年間に本当はすごく濃密な体験をされていたんですね。
Mさん:- 私、悔しがりなんですね(笑)。
テクニカルは向いていない
編集部:- メインでトレードされている通貨ペアを教えてください
Mさん:- ポンド/円ですね。初めはドル/円でしたが、SNSの影響で切り替えたんです。ほかの通貨にも興味はありますが、正直、「利益を出せる気」がしないのと、実際に「利益を出せる」ようになるまでが大変ですから。「ドル/円に戻ってもいいかな」とも思うのですが、直近では相場があんまり動かないですからね。躊躇しています。
編集部:- チャートを駆使するようなテクニカル分析を用いたトレードスタイルですか?
Mさん:- いいえ、私は”ナマ”のチャートしか見ないです。ボリンジャーバンドとか、この辺に雲があるとか分析する手法は、私には向いていませんね。
編集部:- 確かにテクニカル分析で表示されるデータを使えば収益が得られるというなら、みんな成功を収められますよね。チャートの動きには「だまし」はあっても、「絶対」はないですからね。それよりも、ご自身の経験に基づいて、チャートの動きを読むというわけですね?
Mさん:- はい。まったく、その通りです。
(後編に続く)
PickUp編集部より
Lot数を減らしたことで、相場の動きについていけるようになったというM氏。維持率だけの問題だけではなく、ドキドキして他のことが手につかなくなるような精神状態でなくなったこともおおきかったのではないでしょうか。後編では、より具体的なトレード手法について伺います。
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