先週はダウ30種平均株価が史上最高値を更新し、日経平均株価も30年半ぶりの戻し高値を更新する中、ドル・円相場は大きなレジスタンス(上値抵抗線)と言われた200日移動平均線である105.50を大きな抵抗も無くすんなりと超えて高値106.21を示現した。
リスク・オンで対円でのドル高となったのだが、実はこの動きは個人的には意外なものであった。
ドルの上昇を促した理由は幾つか有る。
そしてそれに対しての勝手なコメントを書いてみたい。
-週初に菅首相が衆議院予算委員会で“米国の株価やわが国の株価も見るが、基本的に為替については注視している。”と言及し、海外から“未だ円安を望んでいるのか?”と思われて慌て者の短期プレーヤーのドルの買い戻しが起きた。
(一国の宰相の一番の関心事が為替とは笑止千万。かつての我が国が輸出立国時代の円高恐怖症が払拭出来ないのであろう。)
-新型コロナ・ウイルスに適用するワクチンの輸入が先週から始まり、ニュースでもワクチンを積んだ飛行機の到着シーンが話題になっているが、英アストラゼネカ社に対するポンド建て支払代金、米ファイザー社やモデルナ社に対するドル建て支払代金が俄かに脚光を浴びて円売り・ポンド買い、円売り・ドル買いのオペレーションが意識されて円売りが台頭した。
(実際にワクチン会社に支払う代金は知らないが、聞くところによるとアメリカでは一回のワクチン投与代金が凡そ20ドルと聞く。ワクチン1瓶当たり5回分取れるとした注射器の交換で6回分取れると聞いたので甘く見積もって我が国でも凡そ20ドルで接種出来るとして、日本の総人口1億2千600万人で2回接種するとして計算してみると、1億2千600万人×2回×20ドル≒50億ドルとなる。
50億ドル(約5千億円)が大きいか、否か?
外国為替市場で1日に取引される額は凡そ7兆ドルで、その内ドル・円は凡そ1兆ドルと言われている。
まあ50億ドルと言えば大海の一滴と言っても良かろう。
しかもこのワクチン輸入代金の総額50億ドルが一度に買われる訳ではない。
先週輸入された分の代金はせいぜい数百万ドルそこそこであろうか?)
-原油代金が値上がりし、決済額が増えて我が国国際収支悪化となる。
(原油価格は現在60ドル近くまで上昇しているが、これはアメリカ・テキサス州での寒波によるシェール・オイル採掘能力が約40%も落ち込んでいる事が大きな理由である。
サウジアラビア増産の思惑も有って、この原油価格上昇は一過性のものではなかろうか?)
-米国長期金利が上昇して10年債利回りが1.3%を超え、30年債も2%の大台を超えた。
(ドル・円相場は米国長期債券利回りに対する感応度が高く、利回り下落=ドル・円相場下落、利回り上昇=ドル・円相場上昇の傾向が顕著である。
2021年の金融市場はバイデン政権発足と共に財政支出拡大期待から株価上昇と共に債券価格下落=利回り上昇は筋書き通りであり、余り驚くにはあたらないと思うのだが。
23日と24日にパウエルFRB.議長が議会証言を行うが、現在の長期金利上昇に対して何らかのコメントを出すかが注目される。)
先週、106.21を高値として再び105円台に下落したことは至極当然と見るが、今週は200日移動平均線である105.50の攻防が注目される。
105.50を下切らなければ再び106.25近辺までのドルの再上昇には驚かないが、105.50を終値ベースではっきりと下切ると104.40近辺(90日移動平均線)までの下落も視野に入れておきたい。