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16年ぶり失業率6.6%を記録した香港で二極化する所得 香港ドルは上「日本人の知らない香港情勢」戸田裕大

日本人の知らない香港情勢

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、発表された報道や現地の声、公表された経済データなどをもとに、香港や中国本土の最新の情勢について迫っていきます。香港ドル・人民元などの通貨売買のご参考にして頂ければ幸いです。

第31回は「16年ぶり失業率6.6%を記録した香港で二極化する所得 香港ドルは上」でお届けいたします。

それでは、さっそく本題に入っていきます。

目次

1.16年ぶり失業率6.6%を記録した香港の経済状況
2.区議会議員への踏み絵を敷く政府と撤退を決意するヘッジファンド
3.香港ドルと人民元相場のアップデート

1.16年ぶり失業率6.6%を記録した香港の経済状況

19日に発表されました、香港の2020年10月-12月の失業率は、2004年以来、つまりSARS流行以来となる、6.6%を記録し、香港の経済活動の停滞が鮮明になりました。

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厚生労働省長官の羅致光(Law Chi-kwong)氏は「新型コロナウイルスの第四波により、消費のセンチメントと、経済活動や雇用環境に、今後しばらく下押し圧力が掛かるだろう」と発言しています。

外食産業の失業率が13.8%、美術・エンタメ・娯楽関連が9.0%、ホテルと小売業が8.3%と芳しくない状況にある一方、不動産・金融・IT・その他専門家・公務員の失業率は低水準で推移しており、産業による明暗がはっきりとわかれているのが特徴です。

不動産市況については、区域によって区々です。ハイエンドの物件販売は好調のようですが、不動産関連指数を細かく見ていくとローエンドの賃貸価格は全体的に低下しているように見えます。不動産は、関連指標が多すぎて追いきれていないのですが、雇用環境と同様にハイエンドとローエンドで好不調がはっきりとわかれているように感じています。

つまりコロナ下で所得の二極化がより一層、進んでいる訳ですけれども、それを香港市民がどう感じ、どのような行動に移していくか、そこは現段階では、はっきりとはイメージ出来ませんので、引き続きウォッチしていきたいと思います。

2.区議会議員への踏み絵を敷く政府と撤退を決意するヘッジファンド

憲法及び、本土確認事項を担当する曾国衛(Erick Tsang Kwok-wai)長官は、国家安全維持法への忠誠を示すべき公人の適用範囲について、従来の立法会議員だけでなく、区議会議員への適用を検討していることを明らかにしました。区議会議員は、香港の地方議員で、立法に関する権限はないものの、民意を受けて地域の行政にあたっており、選挙で選ばれる452議席のうち392議席を野党、つまり民主派議員が占めていることから、槍玉に上がったものと推測されます。

立法会の民主派議員は総辞職に追い込まれたと言う認識ですので、区議会の民主派議員も同じ流れを辿ることが想定されます。民主的ではなく、強権的にルールを変更することで、香港社会にどのような変化が現れるのでしょうか。

19日に米著名アクティビスト・ファンド(物言う株主)のエリオット・マネジメントが香港の拠点を閉鎖することを明らかにしました。人員と機能を英ロンドンに移すようです。強権的な世の中では、株主の権利の一つである議決権が侵害されていることになりますので、グローバル・ファンドが香港から撤退していく、これは必然の流れになると思います。

ですから香港の受け皿をと言うことが、世界で我先にと色々な国がオファーしているわけですけれども、我々日本はどこまで良い案をオファーできるでしょうか。東京・大阪・福岡の国際金融都市構想に期待をしたいと思います。

3.香港ドルと人民元相場のアップデート

さて恒例の相場のアップデートをしていきたいと思います。先週末は調査会社IHSマークイットが発表した1月の米製造業購買担当者景気指数(PMI、速報値)が、前月比2ポイント上昇の59.1となり、算出の始まった2007年5月以降で過去最高を記録するなど、景気回復の兆しがみられる一週間となっています。 香港ドル/日本円(HKD/JPY)から見ていきます。

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リスクオン相場の中で株は上昇しましたが、為替はもみ合い、ドル円は底堅く推移したものの、104円台を維持することは出来ず、香港ドル/日本円も13.40を挟んでの推移が続きました。今週も、ドル円の動きに大きく影響をうけることを想定していますが、ドル円が3ヵ月の移動平均を上回る水準、つまり104円台をキープ出来るのであれば、香港ドル/日本円も13.40台が定着し上抜けてくる可能性が高いとみています。つまり香港ドルは買いがワークしやすいと考えています。

米ドル/香港ドル(USD/HKD)は依然としてもみ合いが続いています。米香の金利差もほぼない状況ですので、一旦、予想はフラットとしたいと思います。

最後に人民元を見ていきます。

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人民元/日本円(CNH/JPY)は16円を挟んでの攻防が続いています。人民元が絡む通貨ペアはドル円よりも大きく長いトレンドが出やすいのが特徴です。移動平均を用いると、中期、長期で上昇気流に乗っている人民元/日本円、基本的には下がったところを買いで入り、長期間ホールドするとワークしやすいと考えています。なお外為どっとコムさんではスワップポイントもプラスの日が多いですので、スワップ面でも買いやすいと言えます。

米ドル/人民元(USD/CNH)については、6.50よりやや下での推移が続いています。人民元金利の低下も一服してきましたので、この辺りでしばらく拮抗するかも知れません。人民元の買いでエントリーする場合には、今は対円の方がワークしやすいと思います。


それでは本日はここまでとなります。

引き続き注目度・影響度の高い、香港及び中国本土の情報について皆様にご報告させて頂きたく思っております。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。

戸田裕大

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<参考文献・ご留意事項>

各種為替データ
https://Investing.com

日本経済新聞: 米物言う株主エリオット、香港拠点閉鎖 東京に一部移管
https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN19EB90Z10C21A1000000

Census and Statistics Department: Labor Force
https://www.censtatd.gov.hk/hkstat/sub/sp200.jsp?tableID=006&ID=0&productType=8

South China Morning Post: Hong Kong fourth wave: jobless rate hits new 16-year high of 6.6 per cent with city deep in coronavirus fight
https://www.scmp.com/news/hong-kong/hong-kong-economy/article/3118331/hong-kong-fourth-wave-jobless-rate-hits-new-16

South China Morning Post: Hong Kong homebuyers defy broken economy, surging unemployment, snapping up flats at Wheelock’s Monaco project in Kai Tak
https://www.scmp.com/business/article/3118738/hong-kong-homebuyers-defy-broken-economy-surging-unemployment-snapping

South China Morning Post: National security law: Hong Kong district councillors will be required to pledge allegiance to city, top official reveals
https://www.scmp.com/news/hong-kong/politics/article/3118716/national-security-law-hong-kong-district-councillors-will

【過去の「日本人の知らない香港情勢」はこちら】

株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。