“何故に、円だけ?”

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先週ニューヨーク株式市場では3指数とも史上最高値を更新し、日経平均株価も2万7千円を伺う株高となってリスク・オンとなり、安全資産(?)と思しきドルや米債が売られてドル安&金利高となっている。

ややこしいのは円までもが安全資産と目されてドルと共に売られる状況が続いてドル・円相場が動かないことである。

下はニューヨーク市場の11月2日と12月7日の約一か月の値動きを比べたものであるが、ユーロ・ドルとポンド・ドルが揃って4.1%上昇し、豪ドル・ドルに至っては5.7%も上昇しているのに対して円はほんの0.5%しか上昇していない。
何故に円だけが蚊帳の外なのか?

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ドル・円の底堅さの理由の一つに先週は米国と覇権争いを行っている某国が104円割れでドル・円の買いを入れたことも挙げられるが、他にも我が国でのドル・円相場に対する認識が“政策的にも我が国政府がドル安&円高を許容しない。”と言う希望と共に願望が有るからではなかろうか?

確かに2014年から100円丁度に近付く場面や極めて短期的にそれを割り込むことは有ったが、何れも見事に跳ね返されてきた。
今年3月にコロナ・ショックで101円台にドルが暴落した時も、すかさずそれ以上の速さで111円台まで10円以上戻して、“矢張り100円は切らない。100円台のLow.は買いなんだ。”との認識を強めた感がある。

我が国個人投資家の持ち高を見てみると先週の火曜日時点でネットのドルの買い持ち額が約37億ドルに達しており、これは数年来で極めて高い額と言える。

以前にも紹介したがこの残高の推移はドル・円相場の動きと割合近い相関関係が有り、ドルが下がるとドルの買い持ち額が増え、ドルが上がるとドルの買い持ち額が減少する傾向が強い。
明らかに我が国の個人投資家はドル・円が下がればドルを買う、と言う逆張り取引を行っているのが一目瞭然である。

次にシカゴIMM.の投機筋の円の持ち高を見ると、今年のコロナ・ショック以降円の買い持ちに転じ、先週の火曜日時点のネットの円の買い持ち(ドルの売り持ち)は47,500枚(約57億ドルの売り持ち)で此方も数年来で極めて高い額と言える。

片やドルは下がらない(円は上がらない。)と判断してドル下落に対して逆張りでドル買いに向かい、片やドルは下がるであろう(円が上がる。)と判断してドル下落に対して順張りでドル売るに向かっているのである。

さて、この両者の勝負(ドル買いが勝つか、或いは逆にドル売りが勝つか?)何方に軍配が上がるのか?

此処何回かのレポートでも書いている様に塾長はシカゴ・IMM.組の一人であり、ドル・円は下がるのではなかろうかと思っている。

何度も指摘した米新政権(恐らくバイデン大統領の基)の財政支出拡大策とFRB.による金融緩和政策によるドル安に加えて、新閣僚(イェレン財務長官を始めとして)によるドル安に対する寛容な態度もあるのではないかと思っている。

財政赤字と貿易赤字の双子の赤字に対する対処法としてドル安放置(ドル安を標榜する訳ではない。)は簡単で、何のコストも掛からない。

留意する点としては財政拡大による債券相場下落で長期金利が上昇することであるが、その場合はFRB.による長期金利上昇を抑制するためのオペレーション(フォワード・ガイダンスを一歩踏み超えた具体的な債権購入策など)が行われても不思議ではない。


何れにせよ、ECB.による金融緩和策強化でユーロが下落した場合(ドルの上昇)や、何らかのきっかけでドルが上昇する局面ではドルを売ると言うSell on rallies.の戦略を継続したい。

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