総括
リラ急騰、金融政策改善期待と新米国大統領誕生にワクチン開発で
(通貨最下位、株価5位)
予想レンジ トルコリラ/円 12.5-13.5
(ポイント)
*中銀総裁は更迭、財務相は辞任
*新中銀総裁は物価安定へあらゆる政策ツールを躊躇なく活用すると強調
*バイデン新米国大統領誕生やワクチン開発進展でもリラは急騰
*9月は64億ドル介入か
*今週は失業率、経常収支、鉱工業生産の発表がある
*10月消費者物価は11.89%
*10月製造業PMIは改善、貿易・経常収支以外の指標は悪くはない
*株価も世界全体ではそれほど弱くはない
*対仏関係さらに悪化
*トルコのみならずイスラム諸国が仏製品のボイコットを呼びかけ
*その他数多くの国際紛争に関わっている
*ロシア製ミサイルの試射に米国が反発
*米議会はロシアへのミサイル売却問題で制裁を決定
*ムーディーズが格付け引き下げ
*エルドアン大統領は20年プラス成長を予想、政府と民間の成長予想に差異
*2Q・GDPは前年比9.9%減で、約10年ぶりの縮小
*カタールの枠増加に続きに続き中国ともスワップ協定締結
(中銀総裁で政策見直し発言で急騰)
中銀のアーバル新総裁は、初の公式見解として、透明性・説明責任・予測可能性の原則の枠組みの下、政策対話を強化する考えを表明した。物価安定の目標達成へあらゆる政策ツールを躊躇なく活用すると強調した。
さらにワクチン開発の進展のニュースもありリラは急騰した。
(中銀総裁交代)
エルドアン大統領は、リラの下げが数週間続く状況を受け、ウイサル中銀総裁を更迭し、アーバル前財務相を後任に任命した。ウイサル氏は8月以降、利上げや他の手段による金融引き締めに動いたが、通貨の十分な下支えと公式目標(5%)を大幅に上回る2桁台のインフレ抑制を実現できなかった。
(財務相は辞任)
アルバイラク財務相が11月8日、健康上の理由で辞任すると表明した。アルバイラク氏はエルドアン大統領の娘婿。2015年にエネルギー相に就任後、2018年に財務相に起用された。アルバイラク氏は、エルドアン大統領が後任の中銀総裁に起用したアーバル前財務相と政策面で対立している。辞任には大統領の承認が必要になるとみられる。アルバイラク財務相とウイサル中銀総裁の退任発表を受けて、リラは上昇した。大幅な利上げが予想されている。
アーバル新総裁については、政府や与党で経験を積んでおり「利上げの承認をうまく取り付けられるかもしれない。利上げしなければ、金融危機は悪化する一方だろう。リラ安は対外債務の拡大を招き、企業倒産につながる」とされている 。
アーバル新総裁は、銀行幹部と会合を開き、マクロ経済の見通しや政策について意見交換をした。主要政策金利は現在の10.25%から少なくとも6.0%引き上げられると予想が出ている。
(介入、9月に64億ドルの為替介入か)
ゴールドマンサックスによれば9月に64億ドル規模の為替介入実施、年初来の介入は1010億ドル相当とされている。
(今週は)
今週は失業率、経常収支、鉱工業生産の発表がある。
(国際紛争は続く)
仏とのイスラム風刺画問題、アゼルバイジャン紛争、ギリシャとの東地中海領海問題、米国とのミサイル問題、シリア、リビア問題もある。
(11月のリラ、株、長期金利)
11月9日はリラ急騰、株価指数は上昇 長期金利低下した。
リラは8%高(対円)で年間では33.57%安から28.25%へ改善、株価指数は3.32%高で年間では7.63%高、10年国債利回りは前日の14.2%から13.4%へ低下した。
(10月消費者物価は11.89%)
10月消費者物価は前年比11.89%上昇。10月は11.75%。雑貨が27.4%、食品が16.5%、健康関連が15.6%上昇した。
(フィッチは警告)
フィッチは、トルコは通貨リラに対する支援が不十分との認識を示した。また、8月の格付け見通し引き下げ以降急速な悪化はみられないものの、外貨準備と海外債務は引き続き潜在的な弱点と指摘した。
過去最安値水準のリラ、高いインフレ率、外貨準備の急減により年末までに政策金利が引き上げられる可能性は「大幅に高まる」見込みだという。
主要格付け会社3社はトルコの格付けを「ジャンク等級」としている。フィッチの格付けは「BBマイナス」で最も高いが、見通しは8月に「安定的」から「ネガティブ」に引き下げられている。
中銀は9月、今年の下落率が30%となっているリラの押し上げと、12%付近となっているインフレ率に対応するため利上げに踏み切った。さらなる引き上げの可能性もある。フィッチは過去数カ月の金融引き締めはリラ安と外貨準備減少のトレンドを逆転させるには不十分と分析した。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
急騰 最近見たこともない大陽線
日足、11月5日-6日の下降ラインを上抜き急騰。ボリバン下限から一気に中位越えへ。9月25日-10月22日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。雲のはるか下。11月6日-7日の上昇ラインがサポート。
週足、ボリバン下限に沿って下落。10月26日週-11月2日週、10月19日週-26日週の下降ラインを上抜く。10月5日週-10月19日週の下降ラインが上値抵抗。11月2日週-9日週の上昇ラインがサポート。
月足、5月-6月の上昇ラインを下抜く。9月-10月の下降ラインが上値抵抗だが近づく。ボリバン下限。
年足 5年連続陰線、今年は陽転して始まるも陰転。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
SNS規制、罰金命ず
トルコは米ツイッター、米フェイスブックなどの大手SNSにそれぞれ1000万リラの罰金を科した。政府当局者によれば新たに制定されたSNS規制法に従わなかったためとしている。
トルコは7月に成立した同法で、1日の利用者が100万人超の大手SNSに国内代表者を置くことを義務付けたが、期限としていた11月2日を過ぎたのが理由という。今後も対応しなかった場合は罰金が増額され、接続制限もありえる。
2社以外に罰金の対象になったのはユーチューブ、写真共有のインスタグラム、動画中継のペリスコープ、動画投稿のTikTok(ティックトック)。
トルコはエルドアン大統領を批判したSNS投稿などを巡り、たびたび投稿者を拘束している。過去にはユーチューブへの接続を遮断したほか、オンライン百科事典「ウィキペディア」を閲覧できないようにしたこともある。
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