総括
リラ下落に積極的防衛策なし、特定の目標なし
(通貨最下位、株価5位)
予想レンジ トルコリラ/円 11.8-12.8
(ポイント)
*中銀はトルコリラ下落に積極的防衛策を打ち出さない 特定の目標なし
*今年のインフレ見通しを12.1%に引き上げ
*10月製造業PMIは改善、貿易・経常収支以外の指標は悪くはない
*株価も世界全体ではそれほど弱くはない
*対仏関係さらに悪化
*トルコのみならずイスラム諸国が仏製品のボイコットを呼びかけ
*その他数多くの国際紛争に関わっている
*ロシア製ミサイルの試射に米国が反発
*米議会はロシアへのミサイル売却問題で制裁を決定
*外貨取引規制を緩和
*外貨準備は再び減少
*ムーディーズが格付け引き下げ
*エルドアン大統領は20年プラス成長を予想、政府と民間の成長予想に差異
*2Q・GDPは前年比9.9%減で、約10年ぶりの縮小
*カタールの枠増加に続きに続き中国ともスワップ協定締結
(中銀、リラ下落に積極的防衛策打ち出さず、特定の目標なし)
中銀はリラについて特定の目標水準を設けていないとし、「中期的にマクロファンダメンタルズに近づく見通し」と述べた。リラは対ドル で8.4リラと最安値を更新。年初からは40%値下がりしている。
外貨準備の枯渇を巡り投資家の懸念が強まる中、トルコは他の中央銀行と通貨スワップの創設や拡大を目指しているが、ウイサル総裁は「スワップ協議には具体的な進展があり、一部は最終段階に達している」と明らかにした。
ただ過去にリラが崩壊した際は、主要政策金利の積極的な引き上げにより最終的に安定を取り戻したと見られている。
(中銀、今年のインフレ見通しを12.1%に引き上げ)
中銀は10月28日、2020年末時点のインフレ率予想を3%ポイント超引き上げて12.1%とした。今年下半期について、当初見込んでいたインフレ率の鈍化が起こらなかったとしている。
ウイサル総裁は、通貨リラ安に伴う輸入コスト上昇、食品価格の上昇、力強い信用の伸びが、インフレ率予想引き上げの主因と説明した。
総裁は、トルコ経済は新型コロナウイルス流行に伴う低迷からV字回復を遂げたと主張。輸入コストの上昇に加え、食品価格の値上がりや信用供与の増加に伴い、今年後半に予想されていたインフレ率の低下は実現せず、信用が伸びる中、インフレ率は予想より高くなった。前年比のインフレ率は予想のレンジ内にとどまっているが、今年残りの期間の見通しは上昇トレンドを示している、と指摘した。
(製造業PMIは、消費者物価は)
10月の製造業PMIは53.9で、前月の52.8から上昇し、景況拡大と悪化の分かれ目となる50を5カ月連続で上回った。需要が回復し、受注と生産の急速な持ち直しにつながった。
企業が新規受注に対応するため生産量を増やす中、雇用創出ペースは約3年ぶりの水準に加速した。生産過程での使用や原材料入手の難しさから、材料在庫が減少。企業は、海外からの調達について、サプライチェーンの遅れを指摘した。
リラの下落に伴い、投入価格と産出価格の双方に大幅な上昇がみられた。
本日は10月消費者物価の発表がある。インフレがさらに上昇すれば再び金融政策の信頼感が疑われる
(対仏緊張。取り上げきれないほどの対立国がある)
マクロン仏大統領が打ち出した新たなイスラーム対策は、宗教の自由を脅かすものとして、イスラーム各国から批判を集めている。イスラム教徒に殺害された仏の歴史教員は授業で、イスラームの預言者ムハンマドの風刺画を教材に「表現の自由」について語っていたが、マクロン大統領は「フランスは風刺を止めない」と宣言した。エルドアン大統領はマクロン大統領が「正気を失った」と発言。パキスタン政府はフランス大使を呼び出して抗議した。その他アゼルバイジャン紛争、ギリシャとの東地中海領海問題、米国とのミサイル問題、シリア、リビア問題もある。前途多難だ。
(ロシア関係もさらに緊張、シリアとアゼルバイジャンで)
エルドアン大統領は10月28日、シリア北西部イドリブ県で10月26日にあった空爆はロシアの攻撃と断定、「ロシアが恒久平和を望んでいない」と非難した。トルコが支援する反体制派はアサド政権側に「大規模な報復」を開始。反体制派の最終拠点、イドリブ県で3月から続く停戦が崩壊の危機にある。
ナゴルノカラバフ紛争ではトルコがアゼルバイジャンを支援、ロシアはアルメニアと軍事同盟を結んでいる。ロシアの空爆はトルコへの警告で、軍事優位性を示す目的で実施したとみられている。
(大地震)
週末にはトルコ沖のエーゲ海で、マグニチュード7.0の地震が発生した。これまでにトルコ湾岸都市やギリシャ諸島で71人の死亡が確認されている。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
下げ続ける
日足、10月29日-30日の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限(2σ、3σがサポート。5日線下向き。雲のはるか下。
週足、ボリバン下限に沿って下落。10月19日週-26日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、5月-6月の上昇ラインを下抜く。9月-10月の下降ラインが上値抵抗。ボリバン下限。
年足 5年連続陰線、今年は陽転して始まるも陰転。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
メルハバ
菅首相がエルドアン大統領と会談
トルコと数少ない友好関係にある国の一つの日本の菅首相は10月28日、トルコのエルドアン大統領と電話で会談し、両国の関係を一層強化したいという考えを伝え、引き続き、緊密に連携していくことで一致した。
電話会談はトルコ側の申し出で行われた。
この中で、菅首相は、両国の関係は安倍前総理大臣とエルドアン大統領との間で急速に深まったとしたうえで「一層、関係を強化していきたい」と述べた。
これに対しエルドアン大統領は、10月に経済開発などに関する両国の技術協力の協定が署名されたことも踏まえ、さまざまな分野での協力が拡大することに期待感を示した。両首脳は、引き続き緊密に連携していくことで一致した。
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