トランプ大統領対バイデン元副大統領の第二回目のテレビ討論が終わったが、第一回目と違って相手が話している間は自分のマイクをミュート(消音)にすると言う前代未聞の処置によって大きな波乱も無く終わった。
今や窮鼠とも言えるトランプ大統領の猛反撃こそ見られなかったが、バイデン副大統領の受け答えや主張にも新鮮味は無く何だか拍子抜けであった。
バイデン候補は咄嗟に北朝鮮の金正恩の名前が出て来ないハプニングも有り、正直言って“大丈夫かいなあ?”とも思ったが、まあ良しとしよう。
討論会後の世論調査もバイデン候補寄りのメデイアは“バイデンが勝った。”と言い、逆にトランプ寄りのメデイアは“トランプが勝った。”と主張して、まあ余り参考にはならない論調が目立った。
依然としてバイデン候補優勢の状況は変わっておらず、トリプル・ブルー(バイデン候補が大統領選挙で勝ち、上院も民主党が過半数を獲得して、大統領、上院、下院の三つが民主党の配下に下る。)の実現の可能性が高いと言う意見が目立ってきた。
塾長が信頼するソースによると現在バイデン勝利の確率が65%で、トランプ再選の確率が35%らしい。
この数字から判断するとやはりバイデン優位は変わらないが、見方を変えれば依然としてトランプが勝つ確率も35%有り、“水物”である選挙では、2016年の時の様に土壇場でトランプ逆転の可能性は低くはないのかも知れない。
市場は取り敢えずバイデン候補勝利に賭けて、Biden Positioning.=(バイデン勝利に向けてポジションを作る。)の動きに出ているのかも知れない。
市場のPerception.=(知覚に基づいた評価)はバイデン勝利であれば株価上昇、金利上昇、ドル下落であると思われるが、株価は既に大幅に上昇した後であり、逆のシナリオ(トランプ再選)を考えて利食い売りが出ても不思議ではあるまい。
ここ最近のダウ、ナスダック、そしてS&P.の調整気味の値動きを見るとそれが計り知れる。
債券相場は新政権の大規模財政支出による需給過多を考えて下降しているが(金利は上昇)、残りはドルである。
ユーロ・ドルが1.18、ポンド・ドルが1.30のレジスタンス・ライン(上値抵抗線)を超えてドル安(通貨高)が進んでいるが、ドル・円も105.00のサポート・ライン(下値抵抗線)を下切り、ドルのベア・トレンド(下値を目指す。)の動きが始まったとも言えるかも知れない。
対中国政策で寛容と目されるバイデン候補が勝利すれば人民元が強くなると思われ、最近は人民元高が顕著となってきた。
一時1ドル7.15を超えていたドル・人民元は直近では1ドル6.70を下切るドル安&人民元高が進んでいる。
以前は人民元高の折はヘッジ目的で円が売られる傾向にあったが、最近は人民元と円はパラレルに動く傾向が有り、人民元高は円高に成り易い傾向が有る。
暫くはドル・人民元の動きにも注意したい。
大統領選挙をあと1週間に控えて動き難い状況が続くが、トリプル・ブルーのシナリオに沿ったリスク・オンの動きが続く様であればドルのベア・トレンドに乗っても悪くはあるまい。
ドル・円に関しては再びSell on rallies.=(ドルの戻り売り。)の戦略に戻したい。
余談であるが、先週親しいアメリカ人の友人に“このままバイデンが勝つのか?”と尋ねてみた。
彼は元銀行員で、勿論バリバリの共和党員である。
ブッシュ元大統領と笑顔で並んで映った写真を何度も見せられた。(一緒に写真を撮る為に、個人的に幾ら献金したかは知らないが..)
返事は、“大方の世論調査によるとバイデンが勝つことになっているが、4年前も彼らはヒラリー・クリントンが勝つと予想したからなあ。俺は“For our own sake.”=(我々の為に)トランプに勝って欲しいと思っている。”と本音を述べた。
恐らくこれが割合裕福なアメリカ人の偽らざる心境であろうか?
心配なのは11月3日の選挙が終わっても結果に関して直ぐには決着が付きそうにないことである。
此のレポートでも述べたが、よっぽどの大差でバイデン勝利が確定しない限り(恐らくその可能性は低かろう。)トランプ大統領が敗北宣言をするとは考えられない。
投票日当日とその後数日の開票結果を盾にして郵便投票の無効を訴える可能性が大で、連邦最高裁判所に提訴することも考えられる。
そして憲法で定められた新大統領が誰になるかを決着せねばならない2021年1月20日までこのごたごたが続く可能性も無きにしも非ずである。
憂鬱になりません?