いよいよ米大統領選挙の投票日があと2週間に迫った。
どうやら民主党バイデン候補の優位は揺らがず、大方の予想はバイデン新大統領誕生で、大統領、上院・下院の過半数の三つを民主党が支配するトリプル・ブルーの可能性もその実現性を増して来た。
先週のレポートで大統領選の結果による市場の反応を考えてみて、
-バイデン新大統領誕生。上院共和党過半数を失う。
大統領民主党、上院民主党、下院民主党のトリプル・ブルーが実現しバイデン新大統領の政策遂行が優しくなり、株価は上昇して金利も上昇。
これが現時点で市場が期待するシナリオに成りつつある様な気がする。
そしてその結果、ドル・円に関しては
-ドル下落、ドル・円は金利上昇分を打ち消すドル安が優勢となり下落と見る。
と述べたが、このシナリオを打ち砕くバイデン候補にとって極めて不利なニュースが駆け巡った。
それはバイデン候補がウクライナ疑惑で自身の子息が関与を疑われていた会社の幹部と面会していたことを示すEメールの存在を大衆紙“ニューヨーク・ポスト”が暴露したのである。
バイデン候補は今迄その会社との関連を頑なに否定していたのだが、“ニューヨーク・ポスト”が紹介したEメールを見る限り、その関与は明白である。
ところがこのEメールは4年半前の2015年4月17日に出された物で、しかも現物は子息のハンター氏が街の修理屋に修理に出したパソコンのハードディスクに埋もれていたのをFBI.が押収して調査を始めたと言うから、ちょっとその信ぴょう性については100%信じる訳には行かない。
トランプ大統領は当然ここぞとばかりにSNS.でバイデン攻撃を始めると思いきや、民主党に好意的と言われているフェイスブックとツィッターが、“政治的な宣伝になる。”との理由でこの報道を伝えるのを事実上禁止した為、これがかえってバイデン候補にとって“致命的な悪材料”となる可能性を秘めているとも取られている。
何が真実なのかは知る由も無いが、まるでスパイ映画を見ている様な気がしないでもない。
4年半前のEメールが突然出て来たが、2週間後の選挙を控えて未だ何かびっくりする様なニュースが出て来ても驚かない方が良いかも知れない。
今週は第二回目となるトランプ対バイデンのテレビ討論が行われるが、今や窮鼠となったトランプが起死回生を狙って何かをしでかす可能性はゼロではなかろう。
いや、実はもっと怖いのは選挙後トランプが勝つにせよ、負けるにせよ1月20日の憲法が決めた新大統領誕生の日までトランプはアメリカ合衆国の大統領であるという事実である。
選挙結果次第ではトランプの窮鼠状態は選挙日までではなく、その後2ヶ月半以上も続くというのは実に恐ろしい。
投資家の立場から言ってこの様な状況下で大きなリスクが取れる訳が無い。
先週の欧米株式市場はまちまちの動きをしたが基本的にはリスク・オフ(投資家が既存の保有債権を処分し、新たな債権取得を逡巡する。)の動きが続くものと思われる。
最近のリスク・オフの動きの特徴として安全資産のドル、円、そして債券が買われる傾向が有ったが、最大のリスク・オフ要因(大統領選挙)がアメリカ発であることを考えると闇雲にドルを買う気にも成れない。
暫くは104.50~106.50のレンジを意識しながらDefensive.=(受け身)な取引に終始しても良かろう。
此処の所のドル・円相場の膠着に対して現役ディーラー諸君の恨み節を聞くが、50年近くも為替をやって来た者にとっては、“我慢も相場。”であることを理解している積りである。
明けない夜は無い。