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「トランプ帝国」の実態は火の車だった? NYタイムズ紙暴露のすごい中身 吉崎達彦(双日総研チーフエコノミスト) 米大統領選2020

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「トランプ帝国」の実態は火の車だった?

いやもう、これ以上、何を驚けばいいというのだろう。

  • RBGことルース・ベイダー・ギンズバーグ最高裁判事が逝去(9/18)
  • トランプ大統領が保守派の女性判事エイミー・バレット氏を後任に指名(9/26)
  • ニューヨークタイムズ(NYT)紙がトランプ氏の税金記録をスクープ(9/27-28)
  • 第1回のテレビ討論会は「勝者なき泥仕合」に(9/29)
  • トランプ夫妻がコロナ陽性と判明(10/2)
  • ホワイトハウス関係者や上院議員にも続々と陽性者が判明(10/3)

 「トランプ劇場では、サプライズは連続する」という法則がある。加速度的に新たな事態が発生するので、どんどん前のことは忘れ去られていく。ご本人が入院した今となっては、税金のことなど完全に宙に浮いている感があるが、ここではNYT紙のスクープについてご紹介しておこう。

 これまでトランプ氏は、納税申告書をけっして公表しようとしなかった。NYT紙はどこからかこれを入手して、解読作業を行った。ヘッドラインになったのは、「トランプ氏が大統領に就任した2017年の納税額は750ドルだった!」である。あのトランプさんの年間所得税が、アパート1か月分の家賃程度であったとは、そりゃあ大いなる驚きである。

 しかし9月27日の”LONG-CONCEALED RECORDS SHOW TRUMP’S CHRONIC LOSSES AND YEARS OF TAX AVOIDANCE”(長く隠されてきた記録は、トランプの慢性的損失と税金逃れを示す) と28日の”HOW REALITY-TV FAME HANDED TRUMP A $427 MILLION LIFELINE”(リアリティTVの名声はトランプに、4.28億ドルの命綱を与えた) という2つの記事は画期的なものであった。

 2回分の報道はものすごい分量なので、読み込むだけでヘトヘトになってしまう。なおかつ「さらに続く」とある。以下はごくかいつまんでご紹介しよう。

 記事はこう断言する。「トランプ氏はビジネス界の大物になったのではなく、ビジネス界の大物を演じることに成功しただけなのだ」と。

 トランプ氏は過去15年間のうち、10年間の所得税を払っていなかった。これは稼いだ以上のおカネを失っていたからで、それ自体は責められるべきことではない。ただし、実業家として、あまり優秀ではなかったということも意味している。

 トランプ氏は、1974年に父親から4000万ドルを譲り受けて事業を始めた。様々な事業に手を出した中で、これだけは成功したと、言えるのは1983年に完成したトランプタワーである。それ以外はことごとく失敗で、特に1990年代に進出したカジノ経営は10億ドル近くの損失をもたらした。このことは最大で18年間使える税額控除の源泉となった

 2002年時点で、トランプ氏はほぼすってんてんだった。ここに近付いたのが敏腕プロデューサーのマーク・バーネットである。リアリティTV「サバイバー」で成功を収めた同氏は、今度は企業を舞台にした企画を温めていた。そこでトランプ氏が人材を募集し、毎週、誰か1人を「お前はクビだ!」(You’re fired!)としていく番組を考案した。トランプ氏はこの提案に乗った。2004年にはシリーズ『アプレンティス』が始まった。

 番組は大成功を収めた。トランプ氏は番組のホスト兼プロデューサーとして、合計1億9700万ドルを得た。と同時に、トランプ氏は真の意味での「セレブ」になった。今度は”Trump”ブランドを様々な形で売ることにより、2億3000万ドルのライセンス料も得た。その中にはマルチ商法もどきや、ロシアなどの怪しい海外事業家も含まれていた。

 成功に気をよくしたトランプ氏は、そのカネを全世界のゴルフコースやホテル業などに投資した。ところがそのほとんどは、損失をもたらすばかりだった。トランプ氏はさらに資金を借りて事業を拡大した。2015年には大統領選挙に出馬したが、それはTrumpブランドをテコ入れするためだったのかもしれない。

 トランプ氏は現在4億ドル程度の負債を抱えていて、それは今後4年以内に期限を迎えるという。トランプ氏は資産家ではあるけれども、赤字のホテルやゴルフコースは簡単には現金化できないだろう。果たしてそれだけの資金を用意できるのだろうか? NYT紙の記事は、4億ドルの借り先までは突き止めていない。変な筋からのおカネでなければいいけれども、合衆国大統領の懐具合がかくのごとき状態であるというのは、かなり怖い話ではないだろうか。

 トランプ氏の病状は思ったより早く回復しつつあるようだ。しかし「命の次に大事なもの」の問題も控えている。前途多難と言えよう。

yoshizaki.jpg吉崎達彦氏
1960年富山県生まれ。1984年一橋大学卒、日商岩井㈱入社。米ブルッキングス研究所客員研究員、経済同友会代表幹事秘書・調査役などを経て企業エコノミストに。日商岩井とニチメンの合併を機に2004年から現職。 著書に『アメリカの論理』『1985年』(新潮新書)、『オバマは世界を救えるか』(新潮社)、『溜池通信 いかにもこれが経済』など。ウェブサイト『溜池通信』(http://tameike.net )を主宰。テレビ東京『モーニングサテライト』、BS-TBS『Biz Street』などでコメンテーターを務める。フジサンケイグループから第14回正論新風賞受賞。