先月初である8月3日のドル・円相場の始値は105.82、月末8月31日の終値は105.90で月足ベースでの“8月は円高。”のアノマリーは今年は僅かながらの差で外れてしまった。
9月に入ってからの先週の為替相場の動きは、ドル・円は106円を挟んでの小動きに終始したが、ユーロ・ドルは大台の1.20を超えた後三日で1.170台まで急落し、ポンド・ドルも1.3482の高値から1.31台まで急落するなど、ドル安の調整が顕著な週となった。
もっと顕著な動きは株価と金やWTI.先物の大幅下落である。
以下は先週の主要通貨と株価、金、原油先物の価格の変化を表している。
8月28日 9月4日 変化 週の高値 週の安値
ドル・円 105.34 106.22 円安 106.54 105.29
ユーロ・ドル 1.1904 1.1839 ユーロ安 1.2010 1.1781
ポンド・ドル 1.3349 1.3277 ポンド安 1.3482 1.3175
ダウ 28,653.87 28,133.31 -1.8%
ナスダック 11,695.63 11,313.14 -3.3%
S&P. 3,508.01 3,426.96 -2.3%
金 1,974.9 1,934.30 -2.0%
WTI.先物 42.97 39.77 -7.4%
中でもハイテク株中心のナスダックの下げが顕著で、木曜日と金曜日の二日間だけで6.5%の下げを記録した。
連日のナスダック最高値更新のニュースを聞く度に過熱気味ではないかと思っていたが、どうやらその裏にはソフトバンク・グループによる巨額のハイテク株へのオプションのコール(買う権利)購入があったらしい。
コール・オプションの売り手は株価がストライク・プライスを超えると無限の責任を負うことになるので、現物株を買ってヘッジせざるを得ず、上がるから買う、買うから上がる、上がるからもっと買う、買うからもっと上がると言う過熱相場に成ってしまった。
木曜日のナスダックの600ドル近い暴落が果たしてソフトバンク・グループによる利食いなのかどうかは定かではないが、提灯を付けて買い向かっていた個人投資家は痛い目に遭ったかも知れない。
折しも個人投資家がネット取引で多用する米ネット証券のロビンフッド・ファイナンシャルが顧客の注文を超高速取引業者(HFT)に回送している事実の開示を怠っていたとして、米証券取引委員会(SEC)の調査を受けているとの報道が有ったが、これも株価の下げを加速させたのかも知れない。
株価やコモディティーの下げは当然リスク・オフの動きを誘い、安全資産であるドルと円や米債に買いが入るが、金曜日の債券市場では逆に売りが入って10年債は前日から+0.085%の0.721%で引けた。
この米長期金利上昇がドル・円相場の堅調地合いを保っているのだが、どうも一筋縄では行かない。
我が国では菅官房長官が次期総裁候補に立候補して安倍路線の踏襲(言い換えればアベノミクスの踏襲)を一面に押し出しているが、安倍首相辞任表明で一時600円近く下げた日経平均株価や105.21まで円高が進んだドル・円相場も今は落としどころを探っている感じがする。
個人的には今はすっかり色褪せたアベノミクス(或いはスガノミクス?)がどうなろうと相場には影響は無いと思うのだが如何であろうか?
今日はレーバーデイでニューヨーク市場が休場で、先週の株価とコモディティーの価格調整が更に進むかは明日からの動きを見るしか無いが、幾度となく述べた不気味な米中関係と不透明な米大統領選の行方などのリスク・オフ要因を考えるとドル・円相場が大きく上がるとも思えない。
かと言って現時点では突発的な事が起きない限り、ドル・円相場が大きく下げるとも思えない。
暫くは105.00~107.00の狭いレンジ取引が続くのであろうか?
今週はECB.理事会が開催されるが政策金利の変更は無い。
先週のユーロ下げのきっかけとなったECB.高官のユーロ高懸念がラガルド総裁によって再び指摘されるようであれば更なるユーロ下げも期待出来るが、中期的なドル安&ユーロ高の流れは変わるまい。
ユーロ安によるドル高でドル・円が107円に近付く様な展開に成ればドル売り戦略も面白かろう。