“楽観、そしてリスク・オン。“

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塾長の目論見(?)に反して大幅な株高と円安が進んでいる。

ドル・円相場は前週の終値107.78から先週末は109.59で終わり1週間で約1.7%の円安となったが、これはその他通貨に対する円安度から比べたら穏やかなものである。

同じく先週1週間のその他通貨に対する円安進行は凄まじいものがある。

             5月29日終値  6月5日終値  円安進行の割合
ドル・円          107.78     109.59     1.7%
ユーロ・円         119.72     123.70     3.3%
ポンド・円         133.14     138.83     4.3%
豪ドル・円          71.87      76.34       6.2%
ニュージーランドドル・円       66.90                  71.28                 6.5%

これは米中関係やコロナ騒動悪化懸念、そして降って湧いた様な白人警官による黒人に対する暴行死に対する抗議のデモや暴動に対する懸念よりも世界的な経済活動復活に対しての楽観論が台頭してリスク・オン(投資家が新たなリスクを取って新規投資に積極的になる。)の動きとなり、株が買われて(株価上昇)安全資産の米債が売られ(金利上昇)、米株が買われているにも拘らず基軸通貨のドルが売られ(その他通貨が上昇)、安全資産だか低リスクだか知らないが円が売られる展開となったことによる。

上昇したその他通貨×ドル・円相場であるクロス(ユーロ・円などの円がらみのその他通貨)は当然上の表の様に急上昇するが、ドルと円と言う二つの売られた通貨同士を掛け合わせたドル・円相場はそんなに動かなかった訳である。(ドル・円相場は1.7%上昇したが..)

リスク・オンの引き金となったニューヨーク株式市場の3指数の騰勢も円安進行度合いと同じくらい凄まじい。
ナスダックはとうとう史上最高値を更新した。
 
                      5月29日終値 6月5日終値  変化
ダウ30種平均   25,383.11       27,110.98    +6.8%
ナスダック        9,489.87         9,814.08     +3.4%
S&P                  3,044.31         3,193.93     +4.9%

そしてリスク・オン相場が続いている中、金曜日に発表された5月の米国雇用統計の数字は驚くべきもので、更に市場のリスク・オン・ムードを増長した。

失業率は13.35%で依然として酷いものなのだが市場予想の19.7%よりも良くて市場は一安心。
非農業部門雇用者数は市場予想がマイナス800万人であったところに何とプラス250万人9千人で市場は驚きを通り越して、一部にはこれらの数字の信憑性を疑う声も聞かれた。

Washington Post.紙もすかさず以下の記事を書いた。

A ‘misclassification error’ made the May unemployment rate look better than it is. Here’s what happened.
(誤分類の間違いが5月の失業率を実際よりもよく見せている。これが実際に起きたことだ。)

When the U.S. government’s official jobs report for May came out on Friday, it included a note at the bottom saying there had been a major “error” indicating that the unemployment rate likely should be higher than the widely reported 13.3 percent rate.
(金曜日に政府の正式な雇用統計が発表された時、レポートの一番下に失業率は公表された13.3%よりも高いであろうことを示す重大なエラーがあったとする注釈が含まれていた。

The special note said that if this “misclassification error” had not occurred, the “overall unemployment rate would have been about 3 percentage points higher than reported,” meaning the unemployment rate would be about 16.3 percent for May.
(特別注釈は、“もしこの誤分類の間違いが起きなければ総合失業率は報告されたよりも凡そ3%高かったであろう、言い換えれば5月の失業率は凡そ16.3%であったであろう。”と述べている。

この誤分類とは現在職を失っている就業者を休業中とするか、或いは失業中とするかの分類のことであるが、この議論は以前から有った。

この記事が反トランプ色の強いWashington Post.紙による単なる嫌がらせとも思えない。
非農業部門雇用者数を含め、6月の雇用統計発表時に5月の数字の大幅な改定が為される可能性に留意したい。

何れにせよ果敢な金融緩和政策と大規模財政支出で米国経済が最悪期から脱出しつつあるのかも知れないし、市場がそれをより楽観的に解釈して株を買うことは理解出来る。


昔から相場の動きに乗ることを“Join the wagon.”=(ワゴンに乗れ。)と言ったが、そのワゴンのスピードが速過ぎると下手をすると乗ったはいいが振り落とされる危険性が有る。

はっきり言ってこの株高と円安の動きは想定外であり、個人的には大いに過熱感が漂うが、“ちょっと待ってよ、アメリカの失業率は13.3%なんだよ、もしかしたら15%かも知れないよ。”と言っても今は誰も聞く耳を持たない。


暫く107円台のHigh.で売ってそれを107円台のLow.で買うと言うレンジ取引が上手く行っていたが、今は108円のレジスタンス・ライン(上値抵抗ライン)と108.40近辺に在る200日移動平均線を上切った為に今度は108円がサポート・ライン(下値抵抗ライン)となる可能性があろうか?

ドル売り戦略は108.40を下切ってから考えたい。

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