世の中はゴールデン・ウィークの真っ最中。
東京外為市場のドル・円の直物出来高も連日50~60億ドル程度の低レベルに留まり、様子見ムードは変わらない。
サポート・レベル(下値抵抗線)とみられていた107円の下値を切り、一時106.36の安値を示現したがドルの下落が加速する兆しは無い。
多くのディーラー諸君が在宅勤務を強いられていて“動くにも動けない。”状態なのかも知れないが、昨年の1年の値幅を僅か2週間で熟した3月の大相場を経験した後、“ちょっとやそっと”のニュースには余り反応しなくなってしまったのかも知れない。
先週発表された米国第一四半期の国内総生産(GDP.)が4.8%のマイナス成長となり、第二四半期は前期比でマイナス40%にもなるとの予測もものともしないのが不思議でならない。
米労働省が4月30日に発表した25日までの新規失業保険申請件数は約384万件となり、申請件数は6週間で3000万件を超え、米労働市場で6人に1人が失業した計算になるのだが、為替市場の反応は鈍い。
今週金曜日に発表になる3月の米雇用統計は失業率が16%(先月は4.4%)、非農業部門雇用者数がマイナス2100万人(先月はマイナス70万1千人)と酷い数字が予想されるが、果たして市場の反応は如何なものか?
もっと不思議なのは米国株式市場の堅調さである。
ダウ30種平均株価は3月に18,592ドルの安値を付けた後4月に入って2万ドルの大台を回復し、4月末は24,346ドルで引けて4月は凡そ16%の上げを演じた。
FRB.の果敢な金融緩和攻勢によりお金が余って株式市場に流れているのかも知れないが、更なる景気後退が確実の中、何かおかしい気がしてならないのは筆者だけであろうか。
静かではあるが、ドル・円相場は徐々に下値を下げている気がする。
3月の緊急的なドル需要が減少しつつあることもあるが、他にも幾つかドル安要因が生じつつある。
-トランプ米大統領は中国が初期対応を誤った結果、新型コロナウイルスが世界に拡散したとして、関税引き上げや損害賠償金の請求などの報復措置を検討していると明らかにし、
ワシントン・ポスト紙は“米国は中国保有の米債務の一部を帳消しにすることを検討している。”とも述べた。
これは中国が保有する米債の元本の返済や利払いを停止すると言うものだが、これはとんでもない話だ。
その実現性は低いだろうが、(日本以外の)米債保有国は心中穏やかではあるまい。
外貨準備の組み換えを含め、ドル離れが進む可能性は有る。
-原油価格の下落による我が国の貿易収支の好転=経常収支黒字の増加。
-ドルの買い手と目された本邦機関投資家の意外な行動。
下は財務省が毎週発表するネットの対外証券投資の数字であるが、新年度に入って新規外債投資を増やすと目されたGPIF.を含めた大手機関投資家は、何と4月はネットで1兆8千億円の売り越しに転じていたのである。
恐らく利が乗っている虎の子の外債を処分して株式投資で被った損失を埋めようとの動きが有ったものと思われるが、この動きが続けばドル・円相場は上がらない。
ここ2週間狭いレンジ内に留まるドル・円相場であるが、どうやらモメンタム(最近はやっているので使わせて下さい。)はドル安&円高に動きつつある感じがする。
今週は戻り売りのスタンスで臨みたい。