世論調査ではバイデン氏有利
去る4月27日、USAトゥデー紙とサフォーク大学が共同で実施した2020年米大統領選を巡る世論調査の結果が公表された。それによると、ジョー・バイデン前副大統領の支持率が44%、トランプ大統領の支持率が38%で、バイデン氏がトランプ氏をリードしていることが判明した。
この調査は、第3政党の候補の選択肢も回答者に提示しており、その選択肢をなくすとバイデン氏が50%、トランプ氏が40%程度になるという。トランプ氏の支持率は新型コロナウイルスの危機によって低下気味となっており、ことに無党派層の離反が目立っていると見る向きが多い。むろん、そうとなれば目下最大の焦点とされる経済の再生に猛然と突き進むのも「トランプ流」ということになろう。
トランプ氏は4月17日の記者会見で「ドルはとても強い。強いドルは全体としてとても良いことだ」と語った。ここにきて、同氏が強いドル政策を容認するようなコメントを発するのは、これが初めてではない。今こそ「米国第一」イコール「強いドル」で、コロナ禍に敢然と立ち向かう『戦時の大統領』を米国民に印象付けようとしているようにも思える。4月24日に、米政権は4840億ドル(約52兆円)規模に及ぶ追加の新型コロナウイルス対策も可決・成立させ、資金繰り支援・雇用対策によって中小企業経営者の支持を取り付けようとすることにも余念がない。
結果、これまでの経済対策と合せて米国の財政出動の規模は3兆ドルに迫ることとなるわけであり、その点でも「強いドル」は重要となろう。ただ、その一方で新興国の通貨安が急速に進み、それが新興国経済の不安定要因として懸念されはじめていることも決して見逃すことはできない。
新興国通貨安が円高要因の一つとなり得ることは言わずもがなである。ただ、執筆時においては基本的にドル高傾向が強まっていることもあり、良かれ悪しかれドル/円は比較的安定した値動きを続けている。目先は一目均衡表の日足「雲」下限あたりが下値支持として意識されている模様で、もう一段の下値を試すとしても105円台半ばあたりがいいところなのではないかと個人的には考える。
目下は、米・日株価が比較的堅調な推移を続けていることも市場に買い安心感と一定のリスク選好ムードをもたらしており、その点も過度に円買い需要が高まっていないことの一因と見ていいだろう。ただ、執筆時点においてはNYダウ平均で24000ドル前後、日経平均株価で2万円手前という其々の節目が目先的な上値の重しとなっていることも事実であり、これらの節目をクリアに上抜けてこないことには、むしろ米・日株価があらためて下方に押し戻され、ドル/円が再度下値を試すといった展開になる可能性もないではない。
そこは、やはり米国における今後の行動制限解除の進捗度合にかかっているとも言える。経済活動の再開は言わば「希望の光」であり、それは新興国にとっても例外ではない。順調な経済活動の再開はトランプ大統領の支持率回復にも貢献し、結果的に適度なドル高の流れにも与する可能性が高い。むろん、仮に「コロナ第2波」の恐れが強まれば、再びリスク回避のムードも強まりかねない。よって、今しばらくは普段以上に厳しいポジション管理が求められることとなろう。
田嶋智太郎氏
経済アナリスト 慶應義塾大学を卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券を経て、経済アナリストに転身。現場体験と綿密な取材活動をもとに、金融・経済全般から戦略的な企業経営、個人の資産掲載まで幅広い範囲を分析・研究。 WEBサイトで経済・経営のコラム執筆を担当し、株式・外為・商品などの投資ストラテジストとしても高い評価を得ている。 また、「上昇する米国経済に乗って儲ける法」など書籍も手掛けるほか、日経CNBCレギュラーコメンテーターも務める。