“悲観論と楽観論。”

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ドル・円相場の動きがすっかり落ち着いてしまい、先週のレンジは安値106.93、高値108.51と1円58銭の値幅に留まった。
東京外為市場の出来高も1日凡そ40億ドルくらいに留まって3月の半分以下に減少している。

コロナ・ウィルスの影響でディーラー諸君の多くが在宅勤務を余儀なくされていることも一因であろうが、実は世の中は依然として激しく動いている。

その中でもアメリカの景気減速の実態は驚くべきである。
先週発表された指標を振り返ってみると、

4月NY連銀製造業景気指数 -78.2 予想―35.0 過去最悪。
3月小売売上 -8.7% 予想 -8.0% 過去最大の落ち込み。
3月鉱工業生産 -5.4% 予想 -4.0% 戦後最悪。
新規失業保険申請者数 524万5千人 予想510万人 4週連続で約2,200万人の新規失業者が生まれた。
4月フィラデルフィア連銀製造業景気指数 -56.6 40年ぶりの低水準。
3月住宅着工件数 -22.3% 予想-18.7% 36年ぶりの下落率。
と目を覆う様な結果となり、地区連銀経済報告で“経済活動は突然かつ急激に収縮した。”とのコメントが載せられた。

市場は悲観的になるかと思いきや、そうでもない。
日々のニュースで株価は目まぐるしく動き、ダウ30種平均株価の動きを見ると、13日(月)-329ドル、14日(火)+559ドル、15日(水)-445ドル、16日(木)+33ドル、そして17日(金)に+705ドルで結局先週は週初から+852ドルで引けた。

米国のリセッション(景気後退)懸念が台頭してリスク・オフの動きとなって株安となる思いきや、債券とドルが小動きの中株価は上げている。

先日も嘆いた様に過去の経験則が決して同じ様にワークしない。
ダウ30種平均株価が上げたから東京でも上げるだろうとの思惑は通用しない。
リスク・オフだから株価は下げ、円が買われるであろうなどの推測は意味を為さない。

今日の動きを見ても良く分からない。

金曜日にダウ30種平均株価が705ドル高で引けて日経平均株価も高値圏で推移するかと思いきや、いきなり約280円安となり午後2時半現在で約200円安の19,700円前後で取引されている。
ドル・円相場は金曜日の終値と同値の107.55でオープンした後高値107.89を付け、現在は107.80前後で静かに推移している。

どうやら市場には依然として猛威を振るうコロナ・ウィルスとその影響に対する悲観論と楽観論が入り混じっている様に見受けられる。

あれだけ悪いアメリカの経済指標が発表されたにも拘わらず株価が堅調なのは、FRB.の果敢な金融政策に対する高評価とトランプ大統領の“米国は新たな感染のピークを過ぎた。経済は3段階で活動再開する。”との楽観的な発言によるものなのであろうか?

確かにコロナ・ウィルスに対する新薬の治験とかが行われ、何となく最悪期から脱しつつあるかの様な感じもするが、事を楽観視するのは早かろう。
未だあと数週間はアメリカの雇用環境は悪化するであろうし、それに伴う消費の落ち込みも当然であろう。

あと少し気に成るのは果敢な金融緩和策と資金供給により膨れ上がりつつあるFRB.のバランスシートの行方である。
FRB.のバランスシートは果敢な資金供給によって2008年のリーマン・ショック時を彷彿させる程の規模に膨れ上がりつつある。
リーマン・ショックの際は、日銀とFRB.の資金供給量の差を比較した“日米マネタリーベース比率”、いわゆる“ソロスチャート”が注目されたがFRB.が量的緩和を実施するなかで資金供給量を急拡大させた為、日銀のマネタリーベースをFRB.のマネタリーベースで割った“ソロスチャート”が急低下し、ドル・円相場は107円台から90円台へ急落した。

現在もFRB.のマネタリーベースは増え続けており、“ソロスチャート”は低下傾向にある。

矢張り中長期的にはドルの低下傾向は変わらないのかなと思っていた矢先にびっくりする様なニュースが飛び込んできた。

ブルームバーグ通信によるとトランプ大統領が17日の記者会見で、“ドルはとても強い。強いドルは全体としてとても良いことだ。” =“The dollar is very strong, and strong dollars are overall very good.” と語ったと伝えられた。

これが本当だとすると米製造業者や輸出業者にとって有利なドル安政策を掲げて来たトランプ大統領が、“強いドル”支持に方向転換したことになる。

ただ不思議な事にロイターを始めとする他のニュース媒体を調べてもこのニュースを見付けることが出来ない。

かと言ってブルームバーグ通信がガセネタを配信するとも思えない。

このニュースを知ってか知らずか、ドル・円相場は極めて小動きで午後2時半現在依然として安値107.52、高値107.89の狭いレンジに留まっている。

個人的には上で述べた様にアメリカ経済が益々悪化する中、トランプ大統領がドル高容認をするとも思えないのだが、よく分からない。


この様な状況では依然としてディフェンシブな取引が肝要だと思っており、大きなリスクを取る事は避けたい。

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