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FXは投資?投機?デイトレの社会的な存在意義は?

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FXはギャンブルなの?

FXの話をすると「FXはギャンブルだ」という認識をもった人が多いことに気がつきます。
以前、私は「FXを『投資?ギャンブル?』と比べること自体がナンセンスです」という記事を書かせていただきました。

その記事では、FXは本質的にギャンブルとは異なること。
そして、ハイレバレッジで大きく利益が出たり、大きく損失が出たとしても、FXはギャンブルではないことをお伝えしました。

www.gaitame.com

「株式は投資でFXは投機」という考えは正しいのか

調べてみると、「FXはギャンブルである」という人、「FXは投資ではない。
投機である」という人も一定数います。
また、「株式は投資でFXは投機」という人もいます。

この言葉の裏には、「投資は善であり、投機は悪である」といったニュアンスが含まれているように感じます。

そこで、私は投資と投機について、一度、整理をしたいと考えました。

長期保有が投資?短期保有が投機?

東京証券取引所が運営しているサイトに「投資と投機の違いについて」の解説がありました。

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出典:投機と投資の違いは? 長期投資に欠かせない運用コストを意識しよう
https://money-bu-jpx.com/news/article004555/
最終アクセス日2021/10/14

この分類は、一見、明確に分かれているようで、実は非常に曖昧です。
投資のイメージは「じっくり育てる」とありますが、じっくり育てたとしても、利益が出ることもあれば損失が出ることもあります。
保有期間についても、どこまでが短期で、どこからが長期かは、まったく不明です。
「利益」「リスク」「短期の価格変動」について投機と投資の違いが説明されているものの、投機の説明内容に少し悪意を感じるのは、私だけでしょうか。

まあ、株の「長期保有」を推奨している東京証券取引所のページなので、仕方がないのかもしれません。

ただ、株式投資も結局は「安いところで買って高いところで売る」という価格差で、自己資金を増やすことが目的なので、この点ではFXと同じです。
その保有期間が「長い」とか「短い」とかで、「投資か」それとも「投機か」を議論しても、意味がないのではないかと思います。

プラスサムが投資?ゼロサムが投機?

以下のような「損益構成者の和」を紹介されることもあります。

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このゼロサムやプラスサムを引用し、投機と投資の違いを紹介する場合でも、参加者全体がプラスになる株式投資を推奨するような文脈で語られていて、「投機的だ」と紹介されるFX取引は、少し分が悪いように思えます。

ただ、一言、これに意見をつけ加えるならば、株式投資はマイナスサムにもなり得るということです。

例えば、日経平均株価は1989年(平成元年)12月29日に最高値となる38,915円87銭をつけてから、「アベノミクスの始まり」といわれる第2次安倍内閣発足の2014年まで、株価はずっと下落トレンドでした。

“失われた20年”といわれるこの期間は、「平均」株価が下落トレンドを続けているということで、多くの投資家が保有する株式が、平均的に下落していることを意味します。
これはプラスサムではなくマイナスサムです。

市場全体が下落トレンドであったり、企業業績がどんどん悪化する企業への株式投資よりも、ゼロサムだと評価されたFXのほうが、実は“まし”なのではないでしょうか。

FXは投機?元FX会社の社員はこう考える

さて、掲題の「FXは投資なのか?投機なのか?」という問いに対してどのように考えているかというと、「FXは投機だ」と私は考えています。
外国為替は2国間の通貨ペアの交換比率です。
交換比率は、その時々の2国間の経済情勢や政治情勢などによって変化します。
現在の状況を勘案すると、通貨ペアのうち一方の通貨が日本円であるドル/円、ユーロ/円、豪ドル/円などを長期的に保有する根拠が見当たりません。

それだけではなく日本の政治情勢、経済情勢が劇的に変化して、長期デフレから脱出し、金利が上がり始め、円高・ドル安になる可能性もあります。
このようなシナリオが現実になると、ドル/円などの「買い」ポジションを持っていたら損をしてしまいます。
こう考えると、長期保有に向かない性質のFX取引は、東証の定義を借りると「投機」と呼ばざるを得ないのではないかと思っています。

これは私の考えになりますが、世間一般からあまり良い評価とは言えない「投機」に、FXは分類されてしまうものの、上述した通り、「投資」と「投機」の違いは曖昧であり、しっかりとした区別がつけられないものなので、その点については、あまり気にしなくていいと思っています。

それでも自分のFXによる資産運用が、「投機だ」とか、「ゼロサムゲームだ」とか、揶揄されてしまうことが気になる人は、金融システムといったマクロの視点から、FXの社会的意義を考えてみるといいかもしれません。

デイトレの社会的な存在意義

外国為替市場は、国家間の財やサービスを交換するための通貨の交換比率を決定するために、なくてはならないものです。
そして、その外国為替市場を個人、法人問わず多くの人々に開放するFXは、市場に流動性(売買の機会)を与え、価格決定の効率性をもたらし、決済のための手数料を引き下げる圧力を持つ「社会インフラ」です。

いい印象が持てないような紹介をされている「デイトレ」や「スキャルピング」などの短期売買をする「投機家」も、金融市場に流動性を与える担い手であり、安定した金融システムを支えるために不可欠な存在です。

彼らがいなければ、外国為替レートのボラティリティ(変動率)はもっと大きくなり、相場暴落時の谷はもっと深くなるかもしれないのです。

「FXが投資か投機か」「投機は悪なのか」などは気にせず、自己利益を追求しよう

『我々が食事をとれるのも、肉屋や酒屋やパン屋の博愛心によるものではなくて、自分自身の利益にたいするかれらの関心によるものである』
これは近代経済学の祖アダム・スミスの「国富論」の中にある、「世の中がどのように豊かになっていくのか」についての一節です。

例えば、おいしくて安いパンは、パン屋さんの博愛心によって分け与えられているのではなく、あるパン屋さんが、他のパン屋さんのパンよりもおいしく、安くすることによって、他のパン屋さんよりも、多くのパンを販売しようとする自己利益を追求した結果であるということを説明しています。

アダム・スミスは、このパン屋さんのような自己利益を追求する人々が集まった結果、「神の見えざる手」に導かれて、社会全体の利益が最大化されていると言いました。

FXも同じではないでしょうか。
アダム・スミスの言葉の通り、これからFXを始めようと考えている人たちは「社会全体の利益の最大化」や「金融システムを支える」などを考える必要はありません。
ただ、自分の利益の追求のみに注力しましょう。
社会全体のことは「神の見えざる手」が自動的にやってくれるからです。

これまで「投機」「ゼロサムゲーム」「デイトレード」といった言葉に悪い印象を持っていて、自ら心理的なブレーキをかけていた人は、ぜひアダム・スミスの一節を読み返して、「投機」の社会的意義を確認してみてください。

心にブレーキをかけたままで、FX投資はうまくなりません。
「投機」家は資本主義経済において、大切な存在であり、誰も否定することのできない存在なのです。


Pickup編集部 
FX投資が初めての方へ!FXの魅力や特徴(初心者編)はこちら

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岩田仙吉(いわたせんきち)氏
株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。