(画像=PIXTA)
2019年12月13日掲載の『FXを「投資?ギャンブル?」と比べること自体がナンセンス』を加筆・修正したものです。
FXはただのギャンブルなのか?投資とギャンブルの違いを考える
私は以前、証券会社のFX部門で働いていました。当時から規則でFX取引はできませんでしたが、為替レートを毎日眺めながら、「今日は円高になるだろう」「今日は円安になるだろう」と予測するようになり、「実際に自分がFXをやったらどうなるかな」と思っていました。
そんな毎日を送っていた私が、あるとき先輩社員との会話の中で、
「FXってやってみたいですよね」と言うと、
「私はギャンブルはやらないと決めている。だからFXはやらない」
という返事が返ってきたのです。
「証券会社の社員でさえ、FXとギャンブルの区別がついていないのか」
私は先輩の答えに大きなショックを受けました。
また祖父には「お前は証券会社に勤めているのか。オレは博打が嫌いなんだがなぁ・・・」と言われたこともあります。
FXとギャンブルはまったく違うのに、証券会社で働く私の先輩も、私の家族も、そのことを理解していませんでした。実際、世の中でその違いを理解している人たちは、本当に少ないのです。
「投資とギャンブルの区別を、きちんと伝えなければいけない」私はそのとき思いました。
FXとギャンブルの違いに関するネット上の説明
インターネットで、「FX ギャンブル」というキーワード検索をしてみてください。「FXはギャンブルであるか、否か」を説明するサイトがたくさん出てきます。
「FXはギャンブルだ」というサイト、「FXはギャンブルではない」というサイト、それぞれがどのような理由を説明しているか、抜粋して紹介してみましょう。
「FX=ギャンブル(FXはギャンブルだ)」というサイトの主張
「FXはギャンブルだ」 |
1)FXもギャンブルのように、大儲けしたり、大損したりするから |
2)FXも「勝つか」「負けるか」の予測が不可能で、サイコロや“丁半博打”のように「運まかせ」だから |
3)FXもギャンブルも「胴元」と呼ばれる主催者・運営者が存在し、「胴元」は絶対に損をしないように手数料を徴収して報酬を決めているから |
「FX≠ギャンブル(FXはギャンブルでない)」としているサイトの主張
「FXはギャンブルではない」 |
1)リスクを適切にコントロールすれば、大儲けはしにくくなるが、大きな損失を回避できる可能性も高められるから |
2)FXは分析や情報収集などで、利益率を高められるから |
3)あくまで、投資家の注文を市場に繋いでいるだけで、投資家の利益に対する還元率などのルールを決めていません |
FX会社はギャンブルの「胴元」ではない
多くのサイトが「『胴元』が徴収する手数料の大きさ」、「損益の大きさ」「勝敗が運任せかどうか」などの視点から解説しています。
しかし、もっと本質的なところから、本来「FX」と「ギャンブル」の違いは考えてみるべきではないでしょうか。
まず、はっきりさせたいのは、FX会社はギャンブルの「胴元」ではないということです。
ギャンブルの運営者である「胴元」は、勝敗のルールを決め、勝敗に参加するための参加料や、参加者が買ったとき、負けたときの報酬もすべて決めます。
一方、FX会社はFXを管理・運営している「胴元」のように見えるかもしれませんが、FX会社は市場を主催したり、運営したりしていません。
投資家の注文をインターバンク市場(世界中の金融機関の間で外国為替取引が行われている市場)に取り次いでいるだけです。
そのとき、スプレッドと呼ばれる「買い」と「売り」の価格の差分が、実質的なFXの「取次手数料」で、FX会社の収入になりますが、ギャンブルを主催する胴元が取る手数料とは、まったく意味が異なります。
続いて「損益の大きさ」や「損益の回数が運任せかどうか」ということですが、金額の差、勝率の差でしかないので、「FX」と「ギャンブル」の「本質的な違い」の理由にはならないのです。
それでは、「FX」と「ギャンブル」の「本質的な違い」とは、いったい何なのでしょうか?
ギャンブルは「ゲーム」投資は「ビジネス」
FXはギャンブルではありません。FXは投資なのです。
この違いを理解するために、まず「ギャンブルとは何なのか」からみていきます。
ギャンブルとは、「胴元が定めたルール上で『勝敗』を決める」という「ゲーム」で、勝った場合には、胴元から報酬を受取ることができます。
ギャンブルでは胴元がルールを決めます。
勝った場合、負けた場合の報酬も、胴元が決定し、胴元が提供します。
「○○が競争で1位になったら、掛け金の1.5倍の報酬がもらえる」
「○○のカードの組み合わせになったら、他のどの組み合わせよりも強く、場に出したチップの2倍の報酬がもらえる」
このようにルールも、勝敗も、参加料も、報酬も、すべて主催者・運営者が決めるこの仕組みは、まさに「パソコンやスマートフォンで遊べるコンピューターゲームと同じではないか」と私は思います。
続いて、もう一方の「投資とは何か」を説明しましょう。
投資とは、「価値のある商品を安いときに購入し、それが値上がりしたときに売却する」という「ビジネス」です。
金融商品の価格が「上がるか」「下がるか」は、(胴元のようにみえる)金融機関が決定しているわけではありません。
金融商品を買いたいと思う人が、売りたいと思う人よりも増えたときに、その価格は上昇し、商品を売りたいと思う人が、買いたいと思う人よりも増えたときに、その価格は下がります。
金融商品の価格が上がったから、下がったからといって、金融機関が報酬を提供するわけではありません。投資家は保有している金融商品を、ただ現金と交換しているだけです。
言い換えると、投資家は将来の需要増を予測し、金融機関を通じて商品の「仕入れ」を行い、価格が上がったときに、金融機関を通じて「販売する」というような「ビジネス」をしているのです。?
FXは需給を予測し、売買する「ビジネス」
例えば、FXでは、アメリカの金利が上がるという観測が報道されたら、将来、ドル需要が増えると予測して、ドルをロングポジションで持ち、十分に上がったところで決済します。
このようにFXは「投資」という「ビジネス」なのです。
そしてFXとは、金融システムを構成する枠組みのひとつです。
FX市場があるから、世界中の財やモノ、サービスは円滑にやり取りできるのです。また、株式、債券、金利などの金融市場安定化にも、大いに貢献しています。
このように、FXとギャンブルの間には、「本質的な違い」があるのです。
それにもかかわらず、「大儲けしたり、大損したりするから」とか、「取引結果が運任せのように見えるから」とかいう理由で、「FXは投資か?それともギャンブルか?」などと比較すること自体、本当にナンセンスなことなのです。
みなさんはそう思いませんか?
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株式会社タートルズ代表/テクニカルアナリスト
2004年、東京工業大学から一橋大学へ編入学。専門は数理経済学。卒業後、FX会社のシステムトレードプロジェクトのリーダーになり、プラットフォーム開発および自動売買プログラムの開発に従事。その後、金融系ベンチャーの立ち上げに参画。より多くの人に金融のことを知ってほしいと思い金融教育コンテンツの制作に集中するために会社を創業。現在は、ハイリスク・ハイリターンの投資手法ではなく、初心者でも長く続けられるリスクを抑えた投資手法を研究中。
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