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「我々は配られたハンドでプレイしている」エミン・ユルマズ FX特別インタビュー(中編)

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今回はテレビでもお馴染み、複眼経済塾株式会社取締役・塾頭でエコノミスト兼為替ストラテジストのエミン・ユルマズ氏にインタビューしました。
中編では証券会社でのお話や、投資のエッセンスについてお伺いしました。

▼目次
1.真の価値を理解する
2.小麦の起源を探し求めた大学院時代 
3.能力が足らないと倫理観も低くなる
4.投資で尊敬する人
5.自ら価値を見つける訓練

真の価値を理解する

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PickUp編集部:
前編ではエミンさんの子供時代について伺いました。中編では投資についてのお話に進みたいのです。突然ですが、投資をするときの大事にしたいことがありましたら、教えてください。
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エミン:
はい。私はポーカーが好きなんですが、ポーカーと投資との共通点ってエッジがあると思ったら仕掛けるということだと思っています。勝つ確率が低いものに挑むのはイヤですが、6割とか7割とかの確率でいけそうなエッジがあるものだったら取り組みますよ。リスクは自分のスキルで理解できる範囲であれば、オポチュニティ(好機)だと思ってね。言い換えると、エッジがあるって事は期待値がゼロでもマイナスでもないって事ですね。

私はいつも言っているんですけど、投資とギャンブルとで何が違うかというと、投資は期待値がプラスのものなんですよ。人生って、ある意味いろんな選択をしていろんなものにチャレンジしていますよね。例えば学校、受験もそうだし、結婚もそうだし、お付き合いもそうだし、就職もそう。これ全て、期待値がプラスだと思うものにチャレンジしていますよね。時間、そして労力という、自分の一番重要で価値が高く、限りあるアセットを使って。そういう事を考えると、常に、人生にもプラスを期待して投資しているわけです。
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PickUp編集部:
なるほど。エミンさんが生物学の勉強を頑張ったのも、自分への投資として取り組んだということですね。
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エミン:
おっしゃる通りです。ただ、大学では生物学を勉強していたけど、就職する時には資産運用の世界に行ったというのも、そっちの世界の方が成功する期待値が高かったからなんです。
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PickUp編集部:
そうなんですか?生物学者としても大成したんじゃないですかね。
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エミン:
まあまあの事は出来るけれども、実験が得意じゃなかったりしたので、生物学は私の追及する分野じゃないなと思ったんです。最終的には僕は間違ってないと思ってるんですけど。常に投資っていうのは、物事の真の価値を見極める仕事だと思ってます。それを英語でバリュー(根源的価値)って言うんですが。物の高い安いっていうのは、ただ単に市場が決めているんですが、そもそもの物の価値を知っていれば、高いか安いかっていうのは自分で判断できるじゃないですか。自分で判断して、自分が思っている水準より市場で安ければそれはお買い得だし、自分が思っている水準より高ければこれは割高だとなる。ウォーレン・バフェットさん、もしくはピーター・リンチさんみたいな投資家を見ると、彼らは真のバリューっていうのを分かっているんですよね。根源的価値と市場価値、その間に非統一性があるということです。
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PickUp編集部:
物事の価値にはズレがある、歪みがあるという事ですね。
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エミン:
そう。そのズレで儲けると言うか、これこそが僕は投資のエッセンスだと思っています。似たようなことって普段の生活の中でもたくさんあるじゃないですか。例えば、あるところに新しいラーメン屋さんが出来ました。食べに行ったらめちゃくちゃ美味しかった。でもまだ有名になっていないから、あまり混んでいない。こんな時、つまり店が空いていて価格も安いんだったら、みんなが気付く前に通うべきですよね。これって株と一緒ですよ。もしくは為替と一緒です。だからそこにバリューがあると分かったら行動する。物事の真の価値を理解するというのは恐らく全ての基本だと僕は思っています。価値を分かったうえで、値段が高いのか安いのかを自分で決めれば良い。
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PickUp編集部:
先ほどポーカーのお話が出ましたけど、エミンさんはポーカーのトーナメントに出場されるなど、そちらでも活躍されていますよね。ポーカーでも今のお話のような考え方をしているのでしょうか。
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エミン:
そうです。ポーカーっていうゲームもまさに期待値の高いほうにベットするゲームなので。
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PickUp編集部:
ポーカーに詳しくないんですが、配られるカードって偶然性が入ってきますよね。手札を見た時に、乗るか降りるかっていうのを判断するんですか?
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エミン:
その通りです。自分で判断して、乗って良いのか乗ってはいけないのか、捨てるべきなのか続けるべきなのか決めますね。これはポーカーも人生も一緒ですよ。我々は配られたハンドでプレイしているので。
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PickUp編集部:
なんだか深い話になってきました。そうすると、当たり前ですけど、カードも人生も投資も、全部自分でコントロールできるわけじゃないということになります。
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エミン:
何が配られるか分からないですよ。究極的には、人間って与えられた環境や、いろいろな人達との出会いがあって生活しているので、100%自分でコントロールすることなんてできない。そうすると大事なのは、まずは健康でいる事、それがベースなんですよ。体が資本ってやつですね。

私は今年の夏に病気をしましたけれど、いつまた病気になるか分からないですよね。だからこそ体を大事にする。資産運用も、健康を失ったらどうでも良いことになりますよね。 体を大事にするっていうのは自分への投資なので、それも忘れない方がいいですね。

小麦の起源を探し求めた大学院時代

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PickUp編集部:
話が脱線するんですが、大学院ではどのような研究をしていたんですか?
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エミン:
私はですね、大学院の時には小麦の研究やっていました。
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PickUp編集部:
え、小麦ですか?
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エミン:
小麦の栽培の起源を探していたんです。これが面白いんですよ。小麦栽培っていうのは約1万年ぐらい前に始まっているんですけど、小麦栽培は人間の文明と実は凄いシンクロした歴史がある。人っていうのは元々狩りをしていたけれども、小麦を栽培するようになって、それでパンを作れるようになった。パスタも作れる。小麦を貯めて時間が余ったので人口を増やすことも出来たし、色々な技術を発展させることも出来た。ある意味文明が出来たのは小麦のおかげなんですよ。
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PickUp編集部:
小麦の役割は、日本だとお米にあたりますかね。
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エミン:
まあ似たような物ですよ。お米も小麦もイネ科だから。それで、小麦の起源、つまり人類の文明の起源はどこなのか遺伝的に探していました。色々な地域から小麦のサンプルを集めて探していたら、ほぼ特定できたんですよね。今で言うトルコの南東部。
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PickUp編集部:
おお、そうなんですか。小麦の起源はトルコなんですね。
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エミン:
そうです。シリアの北西部とトルコ南東部の間、その辺りなんですよ。
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PickUp編集部:
やっぱり文明の発祥地と場所が合うんですね。
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エミン:
メソポタミア文明もそこで始まっているので、合うんですよ。
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PickUp編集部:
そもそもですが、なぜ遺伝子を解析していくと文明発祥の地が分かるんですか?
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エミン:
今使われている小麦に一番近い野生種を調べると分かるんです。これは遺伝的な近さではかります。元々野生で育っていた小麦を掛け合わせて今のものになっていったので、原種に近い野生種がどこにあるかっていうので大体分かるんです。
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PickUp編集部:
ちょっと強引かもしれないですけど、エミンさんの本質への追求が、学生時代にも発揮されていたんだなと感じました。オリジンを探しに行って、本質価値に近づくということですもんね。
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エミン:
そうです。なんでも一緒ですよね。証券会社に入って最初はM&Aをやっていたんですけど、このM&Aっていうのも、企業の価値を見極めるっていう仕事でしたね。

能力が足らないと倫理観も低くなる

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PickUp編集部:
研究も仕事も繋がっていますね。入社された野村證券でのお仕事を、少し詳しく聞かせてください。
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エミン:
バリエーション、査定をやる仕事でした。3年くらいやりました。そこからマーケットサイドに移動して、機関投資家さん向けの日本株セールスをやり、最後に外国株の営業もやりました。お客様はアセットマネジメント会社でした。
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PickUp編集部:
アセットマネジメント会社とはなんでしょうか?
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エミン:
例えば大きな証券会社さんの名前を冠した○○アセットとか、プライベートファンドもあるんですけど、そういった機関投資家さんへの営業でした。
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PickUp編集部:
ファンドを運営している彼らは、かなりのプロフェッショナルですよね。
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エミン:
そうです。だからプロに対して、野村のリサーチとプラスアルファのサービスを売る。これは普通の一般的なセールス仕事に加え、例えばアナリストとかエコノミストとかのミーティングを設定したりだとか、企業のIRミーティングを設定したりとか、アナリストを企業へ連れていったりとかをしました。私は後にアメリカ株の担当になったので、アメリカの企業を日本にたくさん連れてきていました。10社ぐらい連れてきて、2日間スケジュールを組んで、そこに日本の投資家さんを呼んで、1対1のface to face、1on1ミーティングをやったりしていました。一般投資家向けではないからあまり知られていないですが、実はこれがアメリカデーという日本最大の米国株IRイベントでした。
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PickUp編集部:
セッティングなど大変そうですね。そういう仕事は顧客にどう評価されるのですか?
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エミン:
ブローカーレビューっていうのがありまして、これは機関投資家さんが一番サービスが良かったブローカー、つまり証券会社にポイントを付けるというものなんです。同じグループ会社の野村アセットも、グループ会社関係なく評価するので、私としては、野村アセットもお客さんだったんです。だから、アセットマネジメントっていうのは機関投資家セールスのお客さんであり、逆にいわゆる証券会社の小売部門っていうのは、アセットマネジメントのお客さんですね。何故かといえば投資信託を作ったら、小売りのセールスが売ってくれるので。そう考えたら一番力が弱いのは私がいる部署ということになります。機関投資家さんのブローカーレビューっていうのは証券会社ごとにポイントつけるので、今回はここが1位、ここが2位、3位というふうに決まります。それに合わせて機関投資家のトレーダーさんが注文を傾斜させます。機関投資家さんは取引の金額が大きく、多く注文するので、1カ月のコミッションだけでも数億円こちらに入ってくることがあるんです。
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PickUp編集部:
ブローカーレビューのポイントは、すごい大事なことなんですね。
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エミン:
そう。だからなるべく満足してもらえるようなサービスを心掛けていました。その中で、僕らもいろんな企業のミーティングに同席しているので、いろんな話を聞けました。マーケットサイドに移ってからは、会社四季報を読破するようになり自分でも投資するようになりました。M&Aの部署だとインサイダーに関わる仕事なので投資は出来ないんですよね。
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PickUp編集部:
M&Aという仕事柄、様々な儲かりそうな情報を聞く機会が多かったと思うんですが、誘惑はありませんでしたか?
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エミン:
お金に関する仕事においては倫理が一番重要だと思っています。つまらない犯罪に手を染める人って倫理観が足りないだけではなくて、視野も非常に狭いと言うか、つまらない人なんだなと思いますね。つまり、金融っていうのは普通に真面目にやれば儲けられるし良い仕事なので、何も犯罪をやる必要がないんです。 だって僕らは会社四季報を読んでテンバガー(株価が10倍になりそうな株)を見つけられるのです。実際今までたくさん見つけました。TOBの情報を先に知ってインサイダー取引しても、とれるのはせいぜい30%くらいのTOBプレミアムだけです。たった30%のために犯罪に手を染めて捕まっている人っていうのはそもそも倫理観が足りない上に、失礼ですけどあんまり頭も良くないっていうことじゃないですかね。
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PickUp編集部:
能力が足らないと倫理観も低くなるんですかね・・・。
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エミン:
つまらないですよね。インサイダー取引する人は金融業界全体にとってもイメージを悪くしちゃうのですごくイヤですね。

投資で尊敬する人

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PickUp編集部:
証券会社に入って、この人は凄いなと思った方っていましたか?
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エミン:
私が一番すごいと思った方、今でもすごいと思っているのは、一緒に仕事している渡部清二です。自分の師匠ですね。
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PickUp編集部:
はい、渡部清二さん。
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エミン:
私は彼から会社四季報を学んだんですけど、彼は23年ずっと会社四季報を読破している人で、これ本当に1ページから2000ページまで全部読むんですよ。あと、投資の三種の神器って言っているんですけども、日経新聞を読んで、その後会社四季報を読んで、その後指標ノートを付けるというのをずっとやっているんですよ。彼が若いセールスだった時代からずっと続けているわけなんですけれども、やっぱり投資の基本って企業を知る事であり、自分が投資している物、資産を知る事であるので、そういう絶えない研究心が僕は成功に繋がると思います。今でも一緒に仕事をしていますけれども、色んな事を教えて貰っています。
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PickUp編集部:
すてきな出会いがあったんですね。ちなみに具体的にはどのようなことを教わったのでしょうか。
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エミン:
やはり相場の動き・心理というのを教えてもらったのが一番ですね。私は最初に投資銀行サイドにいましたが、投資銀行とマーケットサイドの考え方っていうのは全く違います。投資銀行は企業価値を計算したりするんだけれども、相場ってどう動くか分からないんですよ。だからM&Aをしている人達って、株価算定書というのを作るんですけどけど、実際には株価の動きは分からない。なぜかというと、人の心理が関係するからなんです。
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PickUp編集部:
算定しなければ仕事が進みませんが、その後の値動きまではわからないというのは、言われてみれば確かにそうですよね。
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エミン:
最終的に物の価値っていうのは、計算しても成長モデルのとおり行くとは限らない。経済環境がこうなら、これくらい成長しますとか、何らかの前提や仮定を使ってる訳ですよね。でも、そんなものってすぐ変わるじゃないですか。だってインフレ率3%で経済成長すると見通しを持っても、リーマンショックのような金融危機が起こったら計画が狂っちゃう。米中と関税戦争が起こっても計画は狂っちゃう。前提そのものが大きく変わることがある中で、ではいったいどこに真の価値があるかって言う事ですよね。個別企業の場合は、やはり社長だと思っているんです。だから社長に会わなきゃいけない。
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PickUp編集部:
企業なら社長こそ重要なんですね。
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エミン:
はい。最終的には会社の資産の価値っていうのは、社長で決まるんですよ。長期的には全体を動かすのはトップだから、トップがすべてなんです。社長がどういう人で、周りにどういう人達がいて、何を考えて動いているのかが大事になるんです。いくら私たちがで投資を検討する会社の価値を想定しても、そんな物って水みたいな物で毎日変わる。もちろん算定するのは重要ですよ。ディスカウントキャッシュフローと言って、将来のキャッシュフローを計算して割り引いて、今の価値を見つけるってやり方もあれば、マルチプル比較で今同じ業界の企業の市場価値はどれぐらいで取引されているかというやり方もある。これは凄く重要です。投資家さんが良く使っているPER(株価収益率)にしてもPSR(株価売上高倍率)にしても、いろんな指標はあると思います。そういうものも重要だし覚えるべきだと思うけど、でも最終的には企業は人だから、そこの社長に会いに行かないといけません。だから僕がいつも言っているのが、株式投資家であれば絶対に株主総会に行って1回社長の顔を見た方が良いということですね。
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PickUp編集部:
社長が、今後どんなストーリーで仕事するのかを聞きに行くんですか。
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エミン:
そうそう。社長は何を思って仕事をしているか、具体的に今後の計画を喋れるのか、自分のビジョンを語れるのか。何か質問した時に、自分の会社を隅々まで知っているのか、それともいちいち周りの人達に聞いているのか。例えば、レストランは実はすごく面白い。飲食業っていうのは分かりやすいビジネスで、同時にすごく難しいんですけれども、レストランっていうのは大体オーナーで分かるんですよ。自分で調理出来るぐらいの能力が無ければダメなんです。別にコックさんである必要はないけれども、でもその味の細かさまで全部で分からないと。もしくはコックさんが来なくなった時に自分が出来ないといけない。だって店なんて勝手に休めないんだから。キッチンから育ったオーナーなのか、そうじゃないのかって分かるんですよ。飲食業に限らず、そのビジネスのキッチンは何なのかを考える。小売りならだったら現場、トップは現場がわからないと、みたいに。
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PickUp編集部:
会社の細かな意思決定とか大方針とかは、現場が分かってないと出来ないということですね。
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エミン:
よい社長さんっていうのは、実はその下で働く従業員は相当難しいと思う。だから私は、自分が投資している企業の社長の下で働きたいとは思わないです。だって、厳しそうだもん(笑)。でもそれは投資価値ある会社です。
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PickUp編集部:
株を買って、出資して応援するっていうことでしょうか。
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エミン:
そうそう。いい社長さんっていうのは、細かかったりするでしょう。すべて把握しているから。完全主義者が多いですね。ウォーレン・バフェットは構面白い事言っています。「ビジネスモデルがシンプルなものにしか投資しない」って。何でそうかって言うとビジネスがシンプルな物っていうのは、社長に高い能力が求められないからだって(笑)。
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PickUp編集部:
身もふたもないですね・・・(笑)。
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エミン:
逆にビジネスモデルが難しい物とか、社長に頼りきりの事業っていうのは、社長の能力が高くなければ潰れる。逆に、社長に能力があればその企業はそれだけ伸びるって事なんですよ。繰り返しますけど、最終的には人間なんですよね。もしくは社長が良くても、周りの人達次第のところもあります。会社訪問すれば分かることは、スタッフの対応のほかに、社長の手が回らない状態なのかどうか。うまく回せていない時は、よいスタッフが見つからないんだろうな、とか思います。
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PickUp編集部:
M&Aで様々な人物を見たりしてきた経験の結果、やはり企業トップが大事だと分かったということですね。
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エミン:
そうですよ。株も結局はそうなんですよ。株価は短期的には需給で動くし中期的では恐らくその会社のサービスや財務とかで動くけど、長期的には社長で形成される。よく考えてみると、SoftBankやファーストリテイリングっていうのは、SoftBankは孫さん、ファーストリテイリングは柳井さんって、社長の名前がパッと出てきますよね。
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PickUp編集部:
確かに人物が立っていますよね。
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エミン:
社長がいなくなった時に、会社の価値って変化すると思う。ある意味Appleって、スティーブジョブズが、イコールAppleだった。スティーブジョブズがいなくなって普通の会社になりましたよね。 やはり企業にとっても一番大きいアセットっていうのはやっぱり人なので。そういう意味では直接社長に会えるっていうのは一般人には株主総会しかない。100株でも持っていれば会えるから、会いに行きましょう。あ、FXと直接関係ない話でしたけど、よいですかね。
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PickUp編集部:
ちょっと強引ですが、FXでは、各国の中央銀行総裁の発言に注目しましょう、という事でしょうかね。

自ら価値を見つける訓練

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PickUp編集部:
あの分厚い会社四季報を、1ページから2000ページまで目を通しているという事なんですが・・・
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エミン:
投資先の選別に必要ですね。3300社あって3300人の社長には会いに行けないからね。
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PickUp編集部:
だいぶ昔から四季報の情報って、CD-ROMで提供されたりしていると思いますが、やはり本でチェックすることには理由がある訳ですか?
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エミン:
そうです。紙で読むっていうのは、ドライブの時カーナビを使うのと紙のマップを使う違いみたいな差があるんですよ。
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PickUp編集部:
と言いますと?
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エミン:
カーナビっていうのは、行き先が分かっていれば一番便利ですよね。だから調べたい企業の、見たいところを見られればインターネットでも良い。今は会社四季報オンラインがありますしね。

でも、行き先がまだ分からないときや、ちょっと今日はぶらっとドライブしたいけれどもどこに行こうかな、ちょっと熱海行くけど何かここに良い湖があるな、この周辺に色々ありそうだな、ここを寄り道したら何かこの辺にキャンプ場があるなって、マップを見ないと分からないからね。紙のマップで調べるといろいろ気づく。
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PickUp編集部:
紙のマップであれば、まわりの物にも目が行くという事ですね。
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エミン:
カーナビって、目的地以外は見えないんですよ。今の人たちって、多分カーナビでしか運転してないと思うけど、私は紙のマップで運転していた経験があるから分かるんですよ。地理感覚があると地図をズームアウトして、そこに何があるのか、周りに何があるのか見えるんです。だから会社四季報も同じで、パラパラっと読むのは、特定の企業の前後も見えるから、その企業の相対的な位置も分かる。四季報を全部読まないにしても、1つの企業が気になったらその前後の10社とか20社とかも見た方が良い、と。個別の会社に対するコメントを読むと、その企業だけが良いのか、業界全体がそういう風になっているのか、見えてくるわけですよね。
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PickUp編集部:
なるほど、紙の会社四季報だと周囲の情報も分かるわけですね。
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エミン:
そうそう。面白い事に、企業に対するコメントって、全部良いのが株にとって良いとは限らないんですよ。もう既に織り込まれている可能性が高いという事で。むしろ、全部悪いコメントの方が珍しいわけです。むしろこっちの方が、株としては「買い」だったりするんですよ。
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PickUp編集部:
「逆回り」するんですね。
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エミン:
はい。良いニュースが出たらポッと株価が上がるから。 コメントがすべて悪い会社って、実はそんなに簡単に見つからないんです。そういう株は、大体もう底打ちしているか、底打ちが近いかですよ。
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PickUp編集部:
つまりそれはバリュー株になり得るっていうことですか。
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エミン:
まあそうですね。会社四季報を読んで、自分で企業の価値を見出さないといけません。市場が非効率だからこそ、そこにチャンスがあるし、投資家が儲けられるっていうことですね。市場が全てを100%効率的に織り込んでいたら、ボラティリティはゼロになるから。
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PickUp編集部:
そうですね。全部均等にバランスしちゃったら歪みがないですものね。
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エミン:
株価が全然動かなくなっちゃう。いつかはそんな時代になるかもしれませんよ。あと50年もしたらAIや量子コンピュータが相場を織り込んじゃう。そう考えると、我々は市場の非効率さで儲ける最後の世代である可能性も無きにしもあらずですね。

PickUp編集部より

投資とは物事の真の価値を見極める仕事。決してギャンブルではなく、エッジが高い方にベットするという話をポーカーの話になぞってお話してくださいました。また、「絶えない研究心が成功の秘訣」とお話しされていたのが印象的でした。エミンさんの考え方がすこしわかる中編となりました。

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