“リスク・オンだからリスク・オフの動き。”

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中国湖北州武漢市を発症元とする新型コロナ・ウィルスが猛威を振るっている。
確か最初に報告された時は患者数が56名で死者数が1人だった。
先週の金曜日には患者数が1300名で死者数が41名と報道され、昨日はそれがそれぞれ1975名と56名に膨れ上がった。
今朝のニュースを見ていたら患者数が中国国内で2779名、そして死者数も80人を超えているらしい。

日本でも4人が発症したと報告されているが恐らく実際の人数はもっと多いのではなかろうか?
恐ろしいのはこの新型コロナ・ウィルスは2003年に大流行したSARS.と違って10日と言われる潜伏期間中にも人から人へと感染するらしいことだ。
潜伏期間中には恐らく自覚症状は現れないから患者が感染していても知らない内に色々な所を動き回って新たな患者を増やしているのだろう。

春節期間中に中国人にとって“最も人気のある日本”への渡航者が70万人を超えると言うが、その中に感染者が居ないと言うのは奇跡に近いであろう。
(言い換えれば恐らく結構な数字の患者が含まれているだろう。)

金曜日のニューヨーク市場では新型コロナ・ウィルスによる世界経済の新たな下振れリスクを嫌気して株価は下げ、債券は買われて利回りは大きく下げてドル・円相場も109.28で安値引けとなった。

週明けの東京市場ではドル・円相場は窓を開けて108.90でオープンした後108.73の安値を付けた。
日経平均株価はリスク・オフとなって500円以上下げたがドル・円は本邦機関投資家からのBid.が入って現在は109円台まで買い戻された。

相変わらず本邦機関投資家のドル買い意欲は強く、財務省がまとめた対外・対内証券投資(週次)のデータによると、彼らの外債(中長期債)の買越額は年初(1月5日~1月11日)に2兆3千億円にのぼった。2兆円を超えるのは2019年初め以来1年ぶりで、19年12月の売り越しから一転した。
その頃はアメリカ軍によるイラン革命防衛隊のソレイマニ司令官殺害をきっかけに米国とイランの報復合戦が激化するとの懸念から、ダウ工業株30種平均や日経平均株価は乱高下し、1月8日のイランによるイラク在住アメリカ軍基地へのミサイル攻撃で一挙にリスク・オフとなってドル・円相場は一時107.66の安値を付けており、割安なドルを買って大量の米債購入に充てたものと見られる。
当時、10年物債券利回りも1.85%を上回っており(債券価格は下落)ドル・円相場と債券価格の両方ともに値ごろ感も有ったのであろう。
面白い事にその翌週(1月12日~18日)は本邦機関投資家の買越額は1800億円に留まり、ドル・円相場も110円を超えていた。

先週のレポートでも指摘した様に、流石に110円を超えてからのドル買い(そして債券買い)には慎重であったのであろうか?

先週のディーラー諸君と投資家の集まりでも述べたのだが、机上の計算でしかないがもし自分が機関投資家であれば108円で買ったドルを一旦110円で売って110-108(÷)108 ≒約1.8%のキャピタル・ゲインをFix.して金利分の1.85%(円金利は無視)と合わせて1.8%+1.85%=3.65%の利益は悪くは無いと思うのだが….

個人投資家も110円を超えたところではドルの買い持ちポジションの解消を図り、日経Quick.社の集計によると外為取扱業者大手8社の1月第3週のネットのドルの買い持ちポジションは4,572万ドルと殆どゼロに近付いた。

この突然降って湧いた様なリスクに適切に対応するのは難しいが、リスクが発生した為に(“リスク・オン”となった為に)、“リスク・オフ”の動き(投資家が新たなリスクを取ることに逡巡し、既存のリスク圧縮を図る。)となる奇妙な動きとは言えまいか?

午後2時半現在で日経平均株価は-470円(約-2%)で低迷しているがドル・円相場は依然として109円台をキープして底堅い。

この新型コロナ・ウィルスがどの様な形で終息するか全く分からないが、2003年のSARS.の折は約3ヶ月金融市場は混乱した。
油断は禁物である。

新型コロナ・ウィルスのリスクをVirus risk.=(ウィルス・リスク)と呼んで警戒を強めることとしよう。

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