総括
政策金利は据え置きか、2週連続陽線。2か月連続陽線
「予想レンジ 南アランド円 6.8-7.8」
総括
(ポイント)
*今週の政策金利決定会合では「据え置き」が予想されている
*ムーディーズはジャンク債級への格下げは行わなかったが財政の問題は残る
*9月小売売上は冴えず
*中銀国有化の議論が再び始まる
*大統領の財政改善や海外からの投資呼び込みの効果が出るか
*エスコム社は再び停電を計画している
*最近の経済指標は弱い
*ムーディーズはエスコム社を格下げ
*中期財政計画では財政赤字拡大、成長見通し引き下げ
*南ア議会はエスコム社の支援を承認
*2016年から安定しているのは貿易収支の改善から
*世銀は成長見通しを下方修正
*資源価格は堅調
*中銀は金融政策ではなく財政政策を要求、中銀は追加緩和を否定
*土地収用問題では温和な報告書が提示された
*2Q・GDPは予想外の改善
*移民排斥運動が勃発
*中銀はランドの平均的な水準を1ドル14.5としている
(市況)
2週連続陽線。2か月連続陽線で今月も陽線スタート。低成長、財政赤字拡大などの悪材料もあるが、パラジウムを始め資源価格の上昇を背景とする貿易収支の黒字化が支えている。ムーディーズによる国の格付けのジャンク債級への格下げは避けられたが、財政と低成長の問題は引き続き残っている。ラマポーザ大統領の海外からの投資による景気浮揚が今後実現するかどうか。9月小売売上は前年同月比0.2%増、予想の2.0%増より低い数字となった。食品売上の減少が影響した。 エスコム社の格下げや、同社による計画停電の実施は不安要因だ。
(政策金利は据え置きか)
今週は政策金利の決定がある。現行の6.5%に据え置くとの予想が多い。抑制された物価見通しや低調なインフレ期待、軟調な景気、世界的な金融緩和拡大を考慮すると利下げもありうるが、財政とソブリン格付けを巡って高まりつつある懸念が通貨ランドにもたらす潜在リスクの不安のため、政策金利は据え置かれるとみられている。
エコノミスト調査による成長率の予想は今年が0.6%、来年は1.1%。消費者物価指数(CPI)の予想上昇率は今年が4.3%、来年が4.7%。
(財政状況)
ムボウェニ財務相は今後3年間の政府予算の方針を定める中期予算方針を発表した。「経済の状況はおもわしくない」と警戒感を示した上で、2019年の実質GDP成長率の見通しを、2月発表の1.5%から0.5%に下方修正するとした。世界経済の低迷を背景に、投資と輸出が減少したことを理由に挙げた。一方で、市場からの信頼の回復、効率的な国営企業の運営などを通じて、2022年までにGDP成長率は1.7%まで上向くとの見方を示した。
2019/2020年度の歳入は、経済成長率の下方修正とそれに伴う個人所得税、法人税、付加価値税などの減少を理由に、2019年2月の予算案時点から、525億ランド減少する見通しを示した。これにより、2019/2020年度の経常赤字はGDP比5.9%と、同予算案時点で発表した4.7%から悪化する見込み。公的債務(グロス)も、2019/2020年度は前年度のGDP比56.7%から60.8%へと拡大し、2022/2023年度には71.3%まで上昇するとの見通しが示された。ムボウェニ財務相は、徴税強化を目的として、南ア歳入庁(SARS)の構造改革に、追加で10億ランドを投じる考えを示した。
同相はまた、危機的な経営状況が続き、国庫の補填(ほてん)により財政を圧迫している電力公社エスコム向けに、2019/2020年度は490億ランドの予算を確保しているとした。同社を発電、送電、配電の3事業に分離することを通じて、経営の効率化を図り、2021/2022年度までに財政支援を330億ランドまで減少させる見通しを示した。
(南ア航空のスト)
南アフリカの労働者ストライキは激しく、時に暴動、流血事件ともなる。現在、焦点となっているストは南アフリカ航空(SAA)だ。労働者側は8%の賃上げを要求しているが、経営者側の回答は5.9%にとどまっている。航空会社だけにストが長引くと景気減速の要因となってしまう。南ア航空は11月15~16日に、国内・国際路線のほぼ全便を欠航した。
(南ア野党議員、中銀国有化法案を再提出)
南アの左派野党「経済的解放闘志(EFF)」のマレマ党首が、中銀国有化法案を再び提出したことが、議会の文書で明らかになった。同党首は昨年8月にも同様の法案を提出。投資家の間で中銀の独立性に対する懸念が広がったが、今年5月に新議会が発足したため、同法案は無効となっていた。
中銀を巡っては、与党・アフリカ民族会議(ANC)も2017年の党大会で完全国有化を目指す決議案をまとめた。ANCは責任ある形で国有化を進める必要があり、中銀の責務や独立性に悪影響があってはならないとの立場を示している。
マレマ党首が再提出した中銀国有化法案は、金融常任委員会で審議した上で下院で採決にかける。下院を通過した場合は、通常上院に法案を送付するが、マレマ党首は上院への送付は必要ないと主張している。
テクニカル分析(ランド/円)
窓埋めず反発
日足。11月4日は窓を開けて上昇。11月14日-15日の上昇ラインがサポート。
11月7日-15日の下降ラインが上値抵抗。5日線上向き。ボリバン中位へ下落。
週足。10月28日週-11月4日週の上昇ラインがサポート。10月28日週-11月4日週の下降ラインが上値抵抗。
月足。7月-8月の下降ラインを上抜く。8月-10月の上昇ラインがサポート。4月-7月の下降ラインが上値抵抗。
年足、16年-18年の上昇ラインを下抜く。15年-18年の下降ラインが上値抵抗。
喜望峰
南アとの繋がりは江戸時代から
ケープタウンと日本の繋がりは江戸時代に遡る。鎖国期に江戸幕府が貿易を許していた国の1つのオランダは、現在の南アフリカの大部分を「ケープ植民地」として統治していた。当時のケープ植民地は長い航海における補給地として栄え、自然と世界の交易品が集積する場所となっていた。当時ヨーロッパでは陶磁器製法が発見されておらず、日本からは大量の「伊万里焼」がオランダ船等により国外へ輸出され、中継地であるケープタウンにもかなりの数が卸されたことがわかっている。
実際に 17~18 世紀前後の伊万里焼がケープタウン市内で多く見つけられ、いくつかはケープキャッスルの William Fehr Collectionに現在も展示されている。
南アフリカのアンティークショップなどへ行くと稀に日本のものらしき焼物を見つけることができる。(在南アフリカ日本国大使館)
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