3週間以上も108円台での均衡が続いていたドル・円相場が200日移動平均線の109.05を上切って109円台に突入した。
先週も米中通商交渉に関して“合意した。”、“いや合意していない。”との相反するニュースに翻弄されたが、振り返ってみると、ドル・円相場は8月26日に奇しくも正月の3日に付けた今年の最安値104.44と同レートを付けた後、ヘッドラインに振らされながらじわじわと円安、株高、金利高が進んでいる。
ドル・円 ダウ 日経平均 米債10年物利回り
8月26日 104.44 25,899 20,260 1.538%
11月8日 109.23 27,681 23,391 1.945%
(+4.6%) (+6.9%) (+15.5%)
ダウ工業平均株価は連日史上最高値を更新し、日米共に株価の堅調ぶりには目を見張るものが有るがこれを見ると投資家によるリスク・オンの動きが台頭して ドル高&円安が進むのもむべなるかな。
テクニカルな観点から言うと大きなレジスタンスと目された109円を上切り、リスク・オン相場がさらに進むかに見えるが、事はそう簡単ではあるまい。
今朝も香港で警察がデモ隊に至近距離で実弾を発射して重傷を負わせるという事件が起こり、午後4時現在で日経平均は約60円、NYダウ先物市場でも約110ドル下げてリスク・オフ相場となっている。
当然ドル・円相場も下げ、現在は200日移動平均線である109.05を下まわる108.95近辺で取引されている。
今暫くは相変わらずニュースのヘッドラインに踊らされる状況が続くと思われるが、また一つ気に成る事が有る。
今朝のニュースで前ニューヨーク市長のブルームバーグ氏が大統領選の立候補に強い関心を示したと言うのが有ったが、気に成るのはブルームバーグ氏の動向ではない。
彼は今までも何回か大統領選への立候補 の意欲を見せたことは有ったが、結局は取りやめにしてきた。
気に成るのは現在民主党候補の中で最も人気の高いエリザベス・ウォーレン上院議員である。
9月に訪米した時は“民主党候補の中で抜きんでている人は居なくて、来年の大統領選ではトランプ大統領が再選されるであろう。”との意見が多かった。
その頃、あまた居る民主党候補の中でウォーレン氏のウの字も聞かれなかったが、今や彼女の支持率はライバルのバイデン前副大統領よりも高い。
ウォーレン氏は民主党の中でも最も左派と言われており、彼女の持論は富裕層への課税強化、国民皆保険、そして巨大企業分割である。
彼女はハーバード大学法科大学院元教授で頭脳は明晰、経済にも精通し、演説はカリスマに満ちて集会などでは若者の熱狂的な支持を得ていると言われる。
もし彼女が最終的に民主党の指名を獲得してトランプ大統領とのディベイトになったらトランプ大統領はひとたまりも有るまい。
もしウォーレン氏が勝って初の女性大統領誕生となるとウォールストリートは大パニックとなり、株価は大暴落するのではなかろうか?
当然ドルの価値も株価に引きずられて大きく下げるだろう。
但し、選挙は水物。
来年の大統領選までの1年間何が起きるか分からない。
少なくとも弾劾問題で窮地に立つトランプ大統領もうかうかはしていられまい。
先日ニューヨークから一時帰国した方と話をする機会が有り、民主党員であるその方は“80%の確率でウォーレン氏が次期大統領となる。”と大胆な予測をしたが、筆者はその確率は大分低いと見る。
理由はウォーレン氏の極端な持論は民主党内でも相当な抵抗が有り、候補者指名争いが白熱化するにつれて民主党内での抵抗勢力が団結してウォーレン氏の引き下ろし作戦に加担する可能性が大だと見るからだ。
何れにせよ、そろそろ来年の米大統領選への関心を高めても良かろうか?