“ドル・円相場は行って来い。”

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先週のドル・円相場は民主党のペロシ下院議長によるトランプ大統領弾劾尋問開始の報により一時106.97の安値を付けたが、その後徐々に値を戻して金曜日は戻し高値108.18を付けて“行って来い。”の展開と成った。

その後トランプ政権が米国から中国への証券投資の制限を検討していると報じられて直ぐに107.80まで急落し、米中関係の行方に悲観的な筆者は“ほら、やはりな。”と思ったがドルの下落は長続きせず、その後は107円台のHigh.で推移している。

このニュースで株価は下がり、債券は買われて金利は低下したがドルは底堅い展開となっており、その一つの理由としてユーロの下落が挙げられようか?
9月のドイツ総合PMI.=(購買担当者指数)速報値は49.1で6年半ぶりに50を下回ってドイツ製造業の悪化加速が明らかになり、ユーロ・ドルは1.10の大台を割る事となった。
ユーロ安はドル高である。

米中関係の行方と言えば相変わらず香港情勢が気になって仕方ない。
昨日も抗議デモは市中心部にある政府庁舎を目指しながら列車の駅入り口に放火し、火炎瓶を投げつけるなどしたが、それに対して警察は放水砲やゴム弾、催涙ガスを使って応戦し約100人ものデモ参加者が警察によって拘束された。
デモ隊の行動には賛同しかねる部分もあるが、それに対する警察の警棒を使っての過激で暴力的な取り締まりにはもっと反対である。

明日10月1日、中国は建国70周年を迎え安倍首相がお祝いメッセージを送ったが、香港では大規模なデモが行われる懸念が有る。
余り大きなニュースにはならなかったが先週米上下院両院の議会委員会で香港人権・民主主義法案が全会一致で可決された。
これは、
‐香港の自治・人権の確保を検証。
‐確保されていない場合、香港への優遇措置を撤廃。
‐香港の自治・人権を侵害した中国・香港当局者に対して、米国への入国禁止、資産凍結などの制裁を科すと言う厳しいものである。
この法案は上下院の超党派の支持を得ており、両院の本会議でも近く可決される見通しで中国政府への大きなけん制となると見られている。
内政や自分の身辺が穏やかでなくなると大衆の興味を外に向けるのは施政者の常。
弾劾問題である意味窮地に立つトランプ大統領が対中国政策で再び強硬な姿勢を見せるのは極めて当然であろう。
同時にこの法案が可決されれば中国政府が沈黙を保っているとも思えない。
これも筆者が米中関係の行方に悲観的な理由の一つである。

ところで先週は日米首脳会談が行われ日米貿易協定の締結で合意し、
工業品部門では
‐米国による自動車への追加関税は日本に発動しない。
 米国に輸出する自動車・自動車部品の関税撤廃は先送りし、協議継続。
農産品部門では
‐米国から輸入する牛肉に掛かる関税を削減し、段階的に9%にする。
 米国産豚肉の低価格品の関税を引き下げ。
 米国産の米無関税枠は導入しない。
デジタル部門では
‐国から企業へのアルゴリズムなどの開示請求を禁止。
 独占禁止法など公共政策上の例外規定を設ける。
などとして、トランプ大統領は“米国の農家にとって勝利だ。”、安倍首相は“ウィンウィンの合意だ。”と述べてお開きとなった。
懸念された為替条項などの話は出ず、我が国金融当局はほっとしたことであろう。
勿論、相場に対する影響は皆無であった。

日米欧の金融政策決定会合や日米首脳会談が終わり、暫くは何となくイベントに欠ける感じがするがこのレポートでも再三述べたリスク・オフ要因が“直ぐ其処に在る。”状態は変っていない。
“戻り売り戦略”は不変であるが、どうやら“下がったら買いたい。”輸入・資本筋と“上がったら売りたい。”輸出筋の両方が存在する。
上がったところは売って、下がれば買い戻すと言うレンジ取引が有効なのかも知れない。

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