“当面の頭を打ったか?”

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先週のドル・円相場は、前週末にサウジアラビアの国営石油会社アラムコの石油関連施設がドローンによる攻撃を受け、生産が一時中断したことを受けて原油価格が急騰、リスク回避の動きも強まり、海外市場で一時107.50円まで下落した。

その後は週央に開催予定のFOMC.と日銀政策決定会合を控えて小動きとなり、FOMC.で市場予想通り政策金利であるF.F.金利の誘導目標を0.25%引き下げて1.75~2.00%にすることが発表されると、一部0.50%の利下げを期待していた参加者がドル買いで応じて高値108.47を示現した。
FOMC.メンバーの金利見通し(ドット・プロット)の中央値が2019年末も2020年末も1.875%と今回決定した水準と変わらずとなったことで追加緩和期待が後退してドル買いを助けたとも言えようか?
只パウエルFRB.議長はFOMC.後の記者会見で“経済が弱まればより大幅な利下げが必要になる可能性もある。”と述べて追加緩和に含みを持たせた。

“政策金利をゼロかそれ以下にすべきだ!”と主張するトランプ大統領は今回の利下げに対して“パウエルとFRB.はまた失敗した。根性も分別も先見性も無い。”とツイッターで吠えたが市場の反応は限られたものであった。

FOMC.が終了した水曜日に続いて木曜日も高値108.47を付けたがどうも108.50の壁が厚い。
聞くところによると我が国の3連休を控えて本邦輸出勢の売りオーダーが108.50にずらりと並んでいたらしい。

日銀もFOMC.終了当日に政策決定会合を開き、長期金利の誘導目標を0%前後、短期政策金利をマイナス0.1%に据え置いて大規模な金融政策の維持を決めたが、声明文に“物価安定のモメンタムが損なわれる恐れが高まる場合は躊躇なく追加的な金融緩和措置を取る。”と明記してFOMC.と同じく更なる金融緩和への含みを表した。

日米中央銀行の決定は殆ど織り込み済みであったが、米中両国が事務レベルでの協議を再開した19日のその日、米国を訪れている中国代表団が米モンタナ州の農家視察をキャンセルし予定を早めて帰国するとの報道が伝わると、米中貿易協議が進むとの期待が後退して再びリスクオフモードに火がともり、ドル・円相場は週末に向けてじり安となり107.53まで下げて週を超えることとなった。

米中通商交渉の行方に懐疑的な塾長にはこの小さなニュースには感慨も何も無いが、香港英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストが19日、貿易政策についてトランプ米大統領に非公式に助言しているハドソン研究所の中国戦略専門家マイケル・ピルズベリー氏が貿易協定が迅速に合意されない場合、トランプ大統領には中国との貿易摩擦を激化させる用意があり、その選択肢の中に“低水準の関税を50%や100%に引き上げる可能性がある。”と報じたニュースには驚いた。
マイケル・ピルズベリー氏の名は余り馴染みが無いが、昨年のペンス副大統領の対中国強硬演説の草稿を書いた人物と言われており、トランプ政権の対中国政策に多大な影響を与えうる人物らしい。

ここ暫く対中国問題では大人しいトランプ大統領であるが、又“何を言い出すか分からない。”不安は依然として残る。
ニュースのヘッドラインに要注意。

要注意と言えば25日に開催予定の日米首脳会談にもそれが必要であろうか?
会談では大筋で合意している日米通商協議の暫定合意への署名が予定されているが、ムニューシン財務長官は為替相場や為替操作も協議すると述べており、我が国金融当局が“何の為替操作もやっていないので文句を言われる筋合いは無い。”と高を括り続けるのは些か見当違いかも知れない?


果たして先週見た108.47が当面の頭かどうかは分からないが、“良いところまで来た。”感じがしないでもない。
再び戻り売りの戦略が良さそうである。

ところで先週1週間アメリカ・サンフランシスコに滞在したが、確かに景気は良さそうでホテルやゴルフ・リゾート地には裕福そうな人々で溢れていた。
1週間一緒に過ごした所謂“富裕層に属する友人達”は株価も堅調で“トランプ大統領に対して文句は無い。来年の選挙で再選されるであろう。”との意見が多かった。
ところが少し町の中心から外れるとホームレスが多数見られ、大きな格差を感じた。
富裕層に属さない中堅階級の人々のトランプ大統領への評価は知らないが、富裕層のそれとは大きく違う気がしてならない。
(トランプ大統領自身もそれを知っていてご機嫌取りに忙しいのではなかろうか?)

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