“地政学的リスク。”

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米中貿易課税の報復合戦によりリスク・オフが進んで先週月曜日、一時104.44の年初来安値を再び付けた後、ショート・カバーと最近よく噂に上る政府系金融機関によると思われるドル買いによってじわじわと値を戻したドル・円相場であるがその頭は重い。

先週も述べた様に安値104.44を付けた後2ヶ月足らずの内に112円台まで大きく値を上げた1月3日のフラッシュ・クラッシュの時の相場展開とは明らかに異なる。

米中問題はそう簡単には収まるとは思えず、それがドルの頭を押さえる状態が続くと思うのだが、地政学的リスクの増大も気に成るところである。

先ず一つ目は益々悪化の一途をたどる香港問題である。
週末のテレビ・ニュースを見てデモに参加している民衆のエネルギーと、それに対して益々狂暴化する香港警察の対応に仰天した。
香港警察が一般人にも無差別で警棒を振るい叩きのめす場面を見て驚いた人も多かったであろう。
香港に近い深圳では中国武装警察が着々と香港の暴徒(とも言えない、)鎮圧の訓練を行っており、武力衝突の危険性は高まって第二の天安門事件にならないとの保証は無い。

トランプ政権は“香港問題に重大な関心を持っており、これが悪化する様であれば米中貿易交渉を続ける訳にはいかない。”と脅せば中国は“中国に対する内政干渉である。”とこれを突っぱねる。
貿易問題と共に香港問題は米中間の地政学的リスクとなる危険性を孕む。

もう一つの懸念の地政学的リスクは米韓関係の悪化である。
日韓関係悪化のニュースはもう毎日報道されていて我々一般人にはどうしようもない状況に成りつつあるが、どうやら今迄第三者的な態度を見せていた米国が怒ったらしい。

その発端は韓国が日本に通告した韓日軍事情報包括保護協定(GSOMIA)破棄である。
米国は日韓関係悪化が経済面で留まるようであればある程度静観する積りでいたと思われるが日米韓の軍事同盟が大きく脅かされるGSOMIAの破棄には強い不満を漏らした。
それに対して韓国は“米国も承知の上である。”と嘘を付き、またしても米国を怒らせて国務省や国防総省から相次いで批判と不満が表明されると、ハリー・ハリス在韓国全権大使を韓国外務省に呼び付けて報道陣の前で“GSOMIA破棄に関し、アメリカが繰り返し失望や懸念を表明することについて自制するように。”との異例の要求を行った。
要するに、韓国政府は前アメリカ太平洋軍司令官で軍人としてプライドの高い元海軍大将を韓国民が見守る中で晒し者にしたのである。

ハリス大使、いやハリス元海軍大将は怒った!
そして8月29日に予定されていた在郷軍人会の招請講演や対外経済政策研究院(KIEP)主催の行事出席を相次いでキャンセルした。
また2012年から韓国国防部が主催してきた“ソウル安保対話”=SDDには、14年を除き毎年米国防次官補もしくはそれに準ずる米軍関係者が出席してきており、今回も韓国国防部はシュライバー国防次官補の出席を強く要請したが、米国側は“日程上の理由”で参加は難しいと通知した。
何となくこちらでも報復合戦が始まった様な気がしてならない。

ムン・ジェイン政権が何を考えているのかは知る由も無いが日米韓軍事同盟から離れて、どうしてもOne Korea.=(一つの朝鮮)にしたいのか?
もしそうであれば確信犯的なしたたかさを感じる。
只一人高笑いをしているのは“ムン大統領は信頼出来ない。”とトランプ大統領に耳打ちした北朝鮮の金委員長であろうか?

いずれにせよ、日本と米国の対応に対するムン・ジェイン政権の読みの甘さには驚く程であるが、これは我が国とってもまた米国にとっても大きな地政学的リスクの増大と言えよう。

やはりドルは買えない。


105円割れが2回回避されて下では輸入筋や機関投資家のドル買いが見られると言う。
同時に106円ミドルから上では輸出筋や一部の機関投資家のヘッジ掛けのドル売りが見られると言う。

暫くは105円~107円のレンジを意識しながら下値ブレークに注意したい。

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