Brexitの現状と為替相場
10月31日に迫ったBrexitを前に、ジョンソン首相は楽観的、且つ強硬姿勢を変えていない。
8月21、22日に行われた独仏との首脳会談では、アイルランドの国境問題についての解決策を30日以内に提示することをメルケル首相と合意したが、マクロン大統領とは折り合いが付かず合意無き離脱の可能性も否定できない。果たして合意無き離脱は回避されるのか。離脱協定案がイギリス議会の承認を得られず、メイ首相が退任に追い込まれたことを考えれば30日間以内に代替案を纏め議会と合意に達するのは容易ではないし、ジョンソン首相もハードBrexitの可能性に含みを持たせる発言を行っている。しかし、ハードBrexitに突入すれば、アイルランド国境での通関手続きの混乱や物流の遅れ、政治的な紛争への懸念もある。
また、上手く代替案が議会を通過した場合でも、これまで離脱協定案が二転三転したことで英国内の企業に対応の遅れが生じていると言われており、先の見えないごたごたが続く可能性が高い。
加えてイギリスの4-6月期のGDPは6年振りのマイナス成長となり景気後退の影も見え隠れしている。イギリス国内の政治、経済の先行きに好材料が見当たらず、歴史的な安値圏にあるポンド相場だが、ポンドの急反発にも繋がり難く、一段の下落リスクにより警戒する必要がありそうだ。
短期は反転、ポンド上昇の動き
チャートを見ると、日足は7/25に付けた135.67を直近高値として上値を切り下げて来た流から上抜けた位置で推移しており、8/12に付けた126.55で一旦底打ちした可能性が生じている。
また、8/22の日足が129.98に位置する21日移動平均線を上抜けており、短期トレンドが変化して上値余地を探る動きが強まり易くなっている。
一方で、5/3に付けた146.51を起点として上値を切り下げて来た流れからは上抜けておらず、この日足の上値抵抗が132.00-10に位置していることから、これをしっかり上抜けて終えるまでは“ダマシ”となる可能性があり、下値リスクにも警戒する必要がある。また、これを上抜けた場合でも134円超えから週足の上値抵抗が厚くなることや、中期トレンドが弱い状態にあることから、ポンド急伸にも繋がり難いと見られる。
短期トレンドは“ポンドやや強気”の状態にあるが、128.50割れで終えた場合は、再び下値リスクが点灯する。さらに、126円割れで終えた場合は新たな下落トレンド入りの可能性が高くなる。
(日足)
中期はポンド安/円高の流れ
週足でもう少し中期的なトレンドを見ると、2018年2月に付けた156.61を起点として上値を切り下げる流れの中にあり、長期トレンドは145円超えで越週しない限り、ポンド弱気の流れに変わりない。
また、2019年3月に付けた148.88を起点とする中期トレンドラインの上値抵抗が141円台にあり、中期トレンドもポンド安の流れを変えていない。
さらに、2016年10月に付けた124.85と今年1月にアジア市場で付けた133.89を結ぶ長期的なサポートラインを、7月第3週足が完全に下抜けており、中期的には新たなポンド下げトレンドに入った格好となっている。
この週足の上値抵抗は137円台に位置しており、これをしっかり上抜けて越週するまでは下値リスクにより警戒する必要がある。
また、31週、62週移動平均線は139.97と142.24に位置しており、中期トレンドが非常に弱い状態にあることを示している。
(週足)
長期トレンドもポンド安/円高の流れ
最後に月足で長期的なトレンドを確認すると、2015年6月に付けた195.88を起点とする長期的なポンド安の流れに変化が認められないが、2011~2012年に付けた116~118円台は超長期的な下値抵抗ポイントであり、ここでは大底を見た可能性が高い。
しかし2016年4月に付けた124.85を起点とするサポートラインを下抜けた位置で推移しており、141円台を回復するまでは中・長期トレンドは大きく変化しない。
また、126円割れで越月した場合は新たな下落トレンド入りの可能性が点灯する。
(月足)
外国為替ストラテジスト
旧東京銀行(現、三菱UFJ銀行)在勤の1980年より、テクニカル分析の第一人者、若林栄四氏の下でテクニカル分析を研究、習得する。同行退職後、1998年まで在日米銀などでカスタマー・ディーラーや外国為替ストラテジスト、資金為替部長を歴任。現在は外国為替ストラテジストとして、テクニカル分析に基づく為替相場レポートを発信中。各種メディアへの出演も多数。