“不可思議な動き。”

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前週中国を為替操作国に認定して金融市場を混乱に陥れたトランプ大統領がまたやらかしてくれた。
火曜日までは米中貿易戦争の長期化が米経済に悪影響を及ぼすという懸念や香港のデモの悪化に対する懸念、さらにアルゼンチンやイタリアの政局不安を嫌気してリスクオフが進み、ドル・円相場は105.06迄下げが拡大する場面もあったが、振替休日明けの火曜日の夜、今度は米通商代表部(USTR)が突然一旦決めた中国からの輸入品に賦課する予定の10%の追加関税について、一部製品に限り発動を12月15日まで延期すると発表し、米中通商交渉に進展ありと見た市場はリスクオフのオフに走り、株価は上昇、債券は売られて金利は上昇し、ドル円は一気に107円手前まで上昇した。

まあ、毎週毎週トランプ発言やトランプ政権の行き当たりばったりの政策変更で右往左往させられ、たまったものではない。

唯一ほくそ笑んでいるのはお盆の15日前後に“105円をも割る様なドル安&円高の洗礼を受けるかも知れない。”とおののいていた我が国金融当局であろう。
覆面介入ではないかとの推測を生んだ公的資金と思われる“不思議なBid.=(ドル買い)”で辛うじて105円台をキープした後、このUSTR.の発表は正に頼もしい援軍となった筈である。

15日の午後、105.80~105.90で静かに推移していたドル・円相場が突然106.75迄急騰し、直ぐに戻ると言う動きが有ったが、この動きに対して、
‐当局の覆面介入が行われた。
‐業者が誤発注した。
‐A.I.=(人工知能)が暴走した。
‐短期の投機筋が仕掛けた。
と幾つかの憶測が走ったが真相は分からない。

不可思議な動きではあったがお盆休みで市場の参加者が少ない中の流動性の低下による異常な動きであったのであろう。

さて、今回の米通商代表部(USTR)の一部製品に対する追加関税延期であるが、これ等の一部製品というのは、携帯電話、ノート型パソコン、ビデオゲーム機、玩具といったもので明らかに一般庶民のクリスマス・ショッピングを意識したもので、米中の通商協議に進展があったからではなく、米国の一方的な都合(トランプ大統領のお得意のポピュリズム披露)でしかない。

USTR.の発表当日のドル・円相場の105.20から106.97までの急騰や、同じくダウ平均株価の約370ドルの急騰ははしゃぎ過ぎなのではなかったろうか?
案の定翌日の14日にはダウ平均株は約800ドルの大幅な下げを記録し、ドル・円相場も105.66まで反落した。

債券市場の反応は異なっており、長期債の利回りの下落が続いて10年物国債の利回りが2年債利回りを約12年ぶりに下回った。これは長短金利の逆転(逆イールド)と呼ばれる現象で、将来の米景気後退を示唆するとされ、米中の貿易戦争で投資家は世界経済への懸念を払拭していないと判断される。

株式・為替市場の“楽観的な”反応が正しいのか、或いは債券市場の“冷めた”反応が正しいのかは分からないが、個人的には上で述べた様に後者の反応に組したい。

さてお盆休みが終わり多くの市場参加者が戻って来たが週明けの東京市場は意外に落ち着いている。
本日午後3時時点でドル・円相場は高値106.47、安値106.25と動意が無く、日経平均株価も前日比約+160円で推移しており、先週の荒れた動きを見た後拍子抜けの感が有る。

今週は前回の米連邦公開市場委員会(FOMC)議事要旨も公表されるが、7月末よりも世界経済及び金融市場の動きが大幅に変わっていることで、議事要旨よりも22日~23日に行われる米カンザスシティー連銀主催の経済シンポジウム(ジャクソンホール会議)でのパウエルFRB議長の講演が注目される。
パウエル議長は前回のFOMC.後に“今回の利下げは利下げサイクル開始を示すものではない。”と失言してある意味市場の信頼を損ね、トランプ大統領からも誹りを受けたが9月の利下げは確実視され、その下げ幅が0.25%か或いは0.50%かとの市場の憶測にどの様に対応するかが注目される。

世界を見回すと、米中対立の不透明感に加えて、
⁻アルゼンチン、イタリアの政局不安。
⁻イラン情勢を巡るホルムズ海峡の緊張。
⁻花火を打ち上げるかの様にミサイルを放つ北朝鮮。
⁻インド・パキスタンのカシミール地方問題。
⁻英国によるEU.からの合意無き離脱。
⁻益々先鋭化する香港政府への抗議デモとそれに対する中国の武力鎮圧の危険性。
などの世界各地の政治・地政学的リスクを見るとそう簡単にはリスクオフ・モードを解消する訳には行かない。

毎週同じ戦略となってしまうが、“戻り売り戦略”は変わらず。
(注:戻り売りとは中期的なドル安感は保持するものの、レンジ取引を意識しながら弾力的に下では買って上がったところで売り直すという戦略である。
Don’t be too greedy.=余り欲をかかないで。)

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