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「FXはプロが有利だとは限らない」今井雅人 特別インタビュー(後編)

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現在、岐阜4区選出の衆議院議員として国政の場で活躍する今井雅人氏。元邦銀チーフディーラー出身で金融・経済アナリストの"マット今井"としても知られる彼は、2018年春、約1カ月半の取引で5000万円の利益を出し、大きな話題を集めた。インタビュー後編となる今回は、5000万円の利益を出した取引のことや、取引する際に必ず守っているルール、FX初心者に対するアドバイスなどについて話を聞いた。

「ここぞ」というときのドカ取りで5000万円 の利益

PickUp編集部:
1カ月半の取引で約5000万円の運用益を出したことがあるそうですね。
今井:
GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)による年金運用の変更と、日銀の新たな追加緩和、マイナス金利導入が同じタイミングで実施されました。これだけのことがいっぺんにあれば、相場はかなり反応します。目をつぶっていても買える状況だったので、思いっきり買いました。何年に一度あるかないかのチャンスです。しかし、終わってみれば、その年の年間収支はトントンでしたよ。(笑)
PickUp編集部:
日頃は議員としての活動も忙しいと思います。普段からポジションは持たずに、スポットで取引したんですか?
今井:
議員活動をしていても、為替相場やマクロ経済の動きは普通に見えますよね。タイミングがきたときに、思いっきり買うだけなので、そんなに難しくないですよ。公表もしていますが、利益を出したのは、めちゃくちゃ忙しい選挙中に買ったものでした。(笑)
PickUp編集部:
短期間に大きな利益を出したとき、どんなことを考えましたか?
今井:
こんな相場がきたら"ドカっ"と利益を取らないといけないんです。毎年あるわけではありません。何年に一度しかないような相場です。こういうことが起きたときに、普段通りのペースで取引するのは凡人です。モードを変えて勝負しないんだったら、それはディーラーじゃないです。
PickUp編集部:
銀行の為替ディーラーや機関投資家と個人投資家では、FXの取引は違うものなのでしょうか。
今井:
銀行では最初、マーケットトレーダーといって、顧客をさばくのが仕事でした。これはFX会社でカバーをやっている人に近く、デイトレに近いです。それがチーフディーラーになっていくと、ポジションを持つ期間が長くなり、最後は何カ月も持っていました。同じディーラーでも役割とやり方で分かれます。チーフディーラーのときは管理業務もしなければならないので、デイトレのようにマーケットを見ることができなくなりました。現在は一日中マーケットに張り付くことなんてできませんから、毎日売買することはできません。1週間から1カ月単位でしょうか。

読めないトランプ相場で大負け

PickUp編集部:
FXで大失敗したようなエピソードはありますか?
今井:
2018年の最初に相当負けました。アメリカの金利がどんどん上がり、トランプ政権の減税効果も出て、ドル高・円安になると思っていました。113円でスタートしたんですが、どんどん円高になるんです。104円で底をついてから110円くらいまで戻りました。それをみて「ドル/円は120円までいく」と、意地になって持っていたら、結構な損を出してしまいました。前半で大きく負けたので、取り返しきれませんでした。
PickUp編集部:
読み通りに相場が動かなかった理由は分析されましたか?
今井:
実はいまだによく分からないんです。普通、はっきりした理由が見つかるものなのですが、いまだに謎です。これまで原因が分からなかったことは一度もありませんでした。読み間違えることはあったとしても、分からないことなんて初めてです。 唯一言えるのは、「トランプ大統領をどう評価するか」という点で、多くの人たちの判断が定まらなかった。貿易交渉で"ガンガン"やるので、「円高圧力が高まる」と考えていた人がいる一方で、海外から資金を戻して税制を変えるだろうということから「ドルが強くなる」という人もいた。減税効果で景気が良くなり、「ドルが強くなる」という人もいれば、逆に財政赤字から「ドル安になる」という人もいた。あえていうならば、トランプ大統領を材料に、ネガティブポジションで張った人が多かったのかもしれないですね。それくらいにしか、考えようがありません。

ナンピンは絶対にしない?!

PickUp編集部:
ナンピンしない取引スタイルと聞いています。
今井:
ナンピンが禁止かどうかは、その目的次第だと思います。上がると思って買うが、予想に反して下がったときに、取り返すために安いところで買う。同じだけ買って半分戻ればゼロになる。損を埋めようと思ってやっているナンピンは、だいたいうまくいきますね。半面、抜けたときには大損するようになっています。ヘッジする相場で買って、さらに下がって買って、上で売れたらもうかるので、それが何回か続くと「このやり方いいよね」と、つい続けてしまうんですが、最後にストーンと抜けて、下がったせいで、有り金を全部なくすこともあります。成功する回数は多いけれど、1回で全部やられてしまうことがある。それがナンピンのいけないところです。麻薬のようなものでしょうか。損切りしたくないから、ついやってしまうんですね。
PickUp編集部:
今井さん"マイルール"をもう少し詳しく教えてください。
今井:
いつもふたつのことを考えます。まず、相場の流れの中のポイントを決めないといけません。レンジの間で動いているうちはいいですが、抜けたのに持っているのは変です。自分は「このレンジにいる」と思って買っていたのに、それを抜けてしまったら、自分の思っていたことと、違うことが起きているわけですから、それはあきらめるしかない。相場の流れの中で、あきらめる場所を決めるんです。そして、もうひとつは自分の資金力です。100万円で運用して80万円の損を出したら、取引は終わってしまうじゃないですか。自分の資金の中で、いくらまで損を出していいかを考えます。最初に大きく損したら、それはなかなか取り返せませんので。お金のコントロールは技術です。
PickUp編集部:
取引する前に、損切りのポイントを決めておくべきだということですか。
今井:
投資はリスクがあるというよりも、もっと極端に「損するものだ」と考えるべきなんです。そんな気持ちを事前に持っていれば、ディフェンシブルな取引ができるはずです。そして、損をすることを、受け入れないとダメです。マーケットから退場していく人は、それを受け入れられないまま、結局、損して終わっています。

FXはプロが有利だとは限らない

PickUp編集部:
銀行で為替ディーラーを務めたような"プロ"のほうが、ノウハウもあって有利なんでしょうか?
今井:
銀行で為替ディーラーをやっていた人が、個人投資家になっても、FXで稼げるとは限らないと思います。世の中には、金融機関で為替ディーラーを務めてきた"プロ"よりも優秀な"天才"がたくさんいて、そうした天才は、むしろ個人投資家に多いように思います。金融機関にいれば、さまざまな情報が入ってくるので、もうけやすい環境にいたから稼げた人もいますし、どこかのヘッジファンドに乗っかる"コバンザメ"のような取引スタイルの人もいた。でも、そんな人たちが、個人投資家になり、裸一貫でチャレンジしても、もうけることはできないんじゃないかな。もちろん、職業として選んだ会社の業務だったけれど、自分の考えと技術で勝ってきた人は、もちろん通用すると思います。個人投資家も自分で勉強して、ディーラーとしての才能を伸ばすチャンスはたくさんある。甘い世界ではないから、やはりちゃんと研究しないと勝てない。
PickUp編集部:
最後に初心者の方々にメッセージをお願いします。
今井:
とにかくチャートを見ることです。相場は何によって、どう動いているかをつかんでください。そして、お金の管理をしっかりしましょう。最初に大きく損すると、なかなか立ち直れないから、最初から大博打を打つのではなく、とにかく損を減らす取引を第一に考えましょう。利がのってきたら、すぐに利益確定をしないで、辛抱することです。そして、「売り」と「買い」の両方を、同じようにできるようになりましょう。中には「買い」からしか入れない人がいますが、それは良くないです。FXは単純に上がると思ったら買えばいいし、下がると思ったら売ればいい。「売りってなんだろう」などと考えずに、下がると思ったら売るのです。機械的に考えましょう。「ないものを売るってなんだろう」なんて考えないで、下がるから売る。上がるなら買う。単純に考えないと混乱します。
PickUp編集部:
今日はどうもありがとうございました。
株式会社マットキャピタルマネージメント 代表取締役
今井雅人
1962年生まれ、岐阜県下呂市出身。上智大学卒業後、1985年に三和銀行入行、1987年よりディーリングの世界に入る。1989年から5年間シカゴに赴任、その間多くの著名トレーダーと出会う。日本に戻ってからは為替部門に従事。2004年3月までUFJ銀行の為替部門の統括次長兼チーフディーラーを勤めていたが、同年4月に独立。内外の投資家にも太いパイプを持ち、業界を代表するトレーダーとして活躍するが、2009年8月第45回衆議院選挙に立候補し、初当選。現在は、経済アナリスト活動など多忙な毎日を送る。元東京外為市場委員会委員、東京フォレックスクラブ理事歴任。株式会社マットキャピタルマネージメント代表取締役。