投資家に人気のトルコリラ。
その人気の理由は高いスワップポイントにあります。
それでは、トルコリラのスワップポイントはなぜ高いのでしょうか。
その理由を探るために、チャートを見ながら、トルコの政治と経済をおさらいしてみましょう。
トルコの高い政策金利
外為情報ナビで政策金利を確認するとトルコの政策金利は24%もあります。
もし、銀行の預金金利が24%もあったらどうでしょうか。
誰でもその銀行への預金を考えるのではないでしょうか。
しかし、いかに高金利といえども、預金前には、その背景を調べて、リスクを認識しておかなければなりません。
トルコのインフレ率
2018年9月からインフレ率は20%を超えており、一時は24%以上もありました。
例えば、月に1万円支払っていた携帯電話の料金が、次年度は1万2千円になったり、10万円の家賃が12万円になったりする状況です。
身の回りのすべてのモノとサービスの価格が、1年後に20%も高くなる状況を想像してみてください。
このような状況は、そこに住む国民にとって、生活はかなり大変なのではないでしょうか。
インフレと政策
高インフレによって国民の生活が混乱しないように、インフレを抑制するのが、政府や中央銀行の役割です。
一般的に、政府は増税をしたり、公共事業などの政府支出を減らしたりして景気が加熱するのを抑えて、インフレを抑制しようとします。
一方、中央銀行は政策金利や銀行に強制的に預けさせる預金準備率を上げたり、国債やファンドなど売却したりして、市中に出回る貨幣の量を減らそうとします。
例えば、政策金利が引き上げられると、市中銀行は中央銀行からの借り入れや銀行間借り入れを減らします。
企業や消費者も、市中銀行が提示する高い金利では、借り入れを渋るようになり、その結果、経済における通貨の流通量が減って、経済活動が停滞し、インフレ抑制につながります。
トルコの高金利の背景には、このようなトルコ中央銀行とインフレとの戦いがあるわけです。
トルコリラに投資するなら把握しておきたいトルコの政治と経済
それでは、なぜ中央銀行が金利を上げて、インフレを抑制しているのにもかかわらず、インフレ率は高いままなのでしょうか。
1)政府の景気刺激策
インフレ率を抑制させるためには、前に述べたように政府は増税をしたり、公共事業などの政府支出を減らしたりして、景気の加熱を抑えなければなりません。
しかし、トルコのエルドアン大統領は、自身の政権の長期化を目論み、有権者の人気を得るために、拡張的な財政政策を続けてきました。
このエルドアン大統領の与党は、3月31日に行われたトルコ統一地方選挙で、首都アンカラとトルコ最大都市イスタンブールの両市長選挙で敗北しました。
ところが、「選挙に不正があった」と主張して、6月23日に再度選挙を実施することを発表しました。
政権維持のために、なりふり構わないエルドアン大統領および与党の姿勢から推測するに、インフレ抑制のために、財政を引き締める政策を打ち出す可能性はかなり低いのではないでしょうか。
やり直し選挙に勝つために、さらなる景気を拡大させる政策を打ち出す可能性すらあります。
2)景気刺激策の限界
政権支持率を維持するために、景気刺激策を継続する可能性がありますが、インフレ率高止まり以外にも、悪影響があるかもしれません。
在トルコ日本大使館が公開している資料から、拡張的な財政政策によって中央政府の借金(債務残高)が増えていることがわかります。
しかも、注目すべきなのは、 債務残高のうちの国内債務比率が53.7%という低さです。
言い換えると残りは国外の債務です。
つまり、借金です。
だから、トルコへの投資は慎重にならざるを得ません。
トルコリラがなかなか評価されない"下地"になっています。
3)エルドアン首相の大統領就任から下落圧力が強まる
2002年から、現在の与党である公正発展党(AKP)が単独政権を維持しています。
2014年8月、当時首相だったエルドアンが大統領に就任しました。
トルコリラ/円の月足チャートを確認しましょう。
その時から下落傾向が強まっていることがわかります。
4)インフレ率を高止まりさせる原油価格の影響
在トルコ日本大使館が公開している資料からもわかるように、トルコは輸入超過の国です。
トルコでは、石油や天然ガスの産出量が少ないため、エネルギーを輸入する必要があります。
そのため、中東や南米の政治不安で、原油価格が高騰すれば、トルコのインフレ率は、さらに高まることでしょう。
トルコリラに投資する前に、トルコリラの魅力となっている高金利について、どのような背景で、高金利になっているかを理解しましょう。
投資前に、その投資対象についてよく知ることが大切です。
長い間、トルコは高いインフレ率に苦しんできました。
高インフレ率を抑制するために、中央銀行は金利をあげて対抗していますが、現政権は拡張的な財政政策を実施しており、中央銀行と政府のインフレ対策の足並みがそろっていないという見方もできます。
また、財政赤字や原油高によるインフレ圧力から、トルコリラが売られやすい状況になっています。
トルコリラに投資する際には、トルコのインフレ対策、財政赤字に対する政府の取り組み、原油価格の動向には注意してください。
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