本日のアジア時間、ドル円はイラン情勢の早期沈静化期待を背景に、有事のドル買いの巻き戻しが優勢となり、一時156.46円まで弱含んだ。ただ、午後に入るとドルは再び買い戻され、地政学リスクを巡る思惑が依然として交錯していることを示している。
昨日のNY時間以降も関連報道は錯綜しているが、戦闘の長期化や中東全域への拡大リスクを楽観視するのは時期尚早だろう。イランの最高指導者とされるハメネイ師は、昨年の「12日間戦争」後に3名の後継候補を指名していたと伝えられるが、その具体像や安否は依然不透明だ。もともと一枚岩とは言い難いイラン政情を踏まえれば、直ちに米国との対話路線へ傾くとみるのは難しい。
加えて、今回の軍事行動は明確な「着地点」が示されないまま開始された側面がある。今後の出口戦略が見えない以上、市場はリスクプレミアムを維持せざるを得ない。人口約9000万人、広大な国土と豊富な原油資源を有し、さらにホルムズ海峡という戦略的要衝を抱えるイランの地政学的重要性は極めて大きい。宗派的にもシーア派を中心とする独自の宗教的・政治的構造を持ち、仮に軍事的優位が確立されたとしても、反イスラエル・反米感情が容易に沈静化するとは考えにくい。
こうした構図を踏まえれば、短期的なヘッドラインでドルが上下する局面はあっても、リスク回避姿勢そのものが急速に後退するとは想定しにくい。市場は引き続き、長期化リスクを意識した神経質な展開を強いられる可能性が高い。
ただ、有事のドル買いが対円ではやや通じないところには警戒したい。水準的にもベッセント米財務長官の意向のもと、1月23日に米連邦準備理事会(FRB)がレートチェックを実施したとされる水準が158円台との観測があり、同水準が事実上の警戒ラインとして意識されやすい。再び円安をけん制する動きが出る可能性は、上値を抑える要因となろう。
なお、本日は米国からは雇用指標(前週分の米新規失業保険申請件数と失業保険継続受給者数、10-12月期米非農業部門労働生産性ほか)が発表される。ただ、市場の注目はイランへの攻撃により高騰している原油先物価格がどの程度米国のインフレに影響を及ぼすことになるかだ。よって、FRBの2大責務のうち「雇用の最大化」よりも、現在は「物価安定」に目が移っていることで、当面は米経済指標での市場の反応は限定的になるだろう。
・想定レンジ上限
ドル円の上値めどは、1月23日NY参入後の高値158.30円台。
・想定レンジ下限
ドル円の下値めどは、2月27日高値156.23円。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
