昨日の海外市場でドル円は、米中貿易摩擦の緩和期待が高まりダウ平均が一時670ドル超上昇するなど、米国株相場が底堅く推移すると、投資家のリスク回避姿勢が後退し円売り・ドル買いが進み152.45円まで強含んだ。ユーロドルは米中貿易摩擦再燃への警戒感が和らいだほか、フランスの政治・財政の先行き不透明感を背景に一時1.1558ドルまで弱含んだ。
本日の東京時間でのドル円は、引き続き政治相場となることで政局をめぐる報道に注目することになる。特に日米仏の政局は混迷を深めていることで警戒したい。
先週末10日に、公明党が26年にわたる自民党との連立政権の離脱を発表したのが15時半過ぎで、為替市場は東京時間の一端の区切りをつけ、その後の取引を翌日分にブッキングするような時間帯だった。ただ、通常は欧州入り後も取引を手控えるようなことはないことで、為替市場はある程度は公明党の離脱については消化したと言えよう。ただ、本邦の株式市場は日中の引け値が出た後だったことで、まずは日経平均をはじめ本邦株式市場がどのような反応になるかに注目したい。更に、10日のNY参入後はトランプ米大統領の中国への関税強化、そして週末に一転してトランプ政権のTACO化(Trump Always Chicken Out=トランプはいつも尻込みして退く)など、株式市場が休場期間の間に市場を動意づける様々なニュースが飛び交っていたことで、これらの影響を見極める必要がありそうだ。
政治相場となっている中で、まずは本邦の政局の行方が注目される。衆議院定数465議席のうち、自民党議席は196議席、立憲148議席、維新35議席、国民民主27議席、公明党が24議席となっている。どの政党も単独過半数獲得が無理なのは周知の事実だが、公明党の離脱までは自民党と公明党を中心とした連立政権という図式は変わらなかった。しかし、公明党の離脱で状況は一変した。更に離脱直後は、公明党幹部は野党共闘へは否定的だったが、昨日には一転して公明党も首相指名で野党一本化の協力を示唆する考えが伝わっている。
現時点で首相選挙が行われた場合は1回目で過半数を獲るものがいないと思われ、上位2名の決選投票が行われるだろう。その場合、高市自民党総裁が首相に就くことができず、野党統一候補が就任した場合のリスクシナリオも頭に入れる必要がありそうだ。先週週初から市場が過度に高市トレードの円売りが進んだことの調整がこのまま継続されるのか、または野党からの首相選出となった場合でも財政拡大路線が変わらず株高・円売りになるのか、もしくはイデオロギーが違う連立政権樹立で株安・円高に動くのかなど、全く読みにくい相場状況になりそうだ。
米国の政局に関しては、昨日まで休会だった米上院が本日から休会明けになる予定。トランプ米大統領はイスラエルで自分の成果に酔いしれていたが、帰国後は政府機関の一部閉鎖への対応に追われることになる。2018年の米政府機関の一部閉鎖では、1週間でGDP成長率を0.1%低下させるとの試算もあったが、すでに3週目に突入している。議会との交渉だけではなく、朝令暮改を繰り返している中国との貿易交渉についてもどのような決断をトランプ大統領が下すのかが注目される。
なお、本日は本邦からのイベントは9月マネーストックM2が発表される程度だが、豪州からは9月29日-30日に開催された豪準備銀行(RBA)理事会の議事要旨が公表されることで、豪ドルの動きにも注目したい。
(松井)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
