読む前にチェック!最新FX為替情報

読む前にチェック!
最新FX為替情報
CFD銘柄を追加!

スプレッド
始値比
  • H
  • L
FX/為替レート一覧 FX/為替チャート一覧 株価指数/商品CFDレート一覧 株価指数/商品CFDチャート一覧

ドル/円の6月見通し「4カ月連続下落も下値ポイントは維持 円ロング巻き戻しを警戒」

House View

ドル/円の6月見通し 「5月は今年初の上昇 6月もテーマは関税」

執筆・監修:株式会社外為どっとコム総合研究所 調査部長 神田卓也

 

ドル/円 の基調と予想レンジ

基調
横ばい

予想レンジ
141.000~148.000円

ドル/円5月の推移

5月のドル/円相場は142.096~148.652円のレンジで推移し、月間の終値ベースで約0.7%上昇した(ドル高・円安)。日銀が金融政策決定会合で物価見通しを下方修正したことから円売りが先行すると145円台へ上昇。その後、142円台前半に反落したが、8日には米英が関税交渉で合意した事を好感して反発した。さらに、12日には米中が関税の引き下げに合意したことから148.65円前後まで上値を延ばした。ただ、世界的な貿易摩擦を巡る懸念は拭えず、米国景気の先行きにも不透明感がくすぶる中でドルの上値は重かった。16日の大手格付け会社による米国の信用格付け引き下げなどもドルの重しとなり再び145円台を割り込んだ。そのほか、日米財務相会談で米側が日本に円安是正を求めるとの憶測もドル/円の上値を抑えた。そうした中で23日にはトランプ米大統領が欧州連合(EU)に対する高関税の賦課を示唆したことからあらためて142円台へと下落。27日には142.096円前後まで下落して約1カ月ぶりの安値を付ける場面もあった。しかし142.00円付近の下値は堅く、米5月消費者信頼感指数で消費者マインドが大幅に改善したことなどもあって、その後は月末に向けたショートカバーが優勢となった。29日には、トランプ関税を巡る米司法の判断を巡り大きく乱高下したが、翌30日には値動きが落ち着き、144.04円前後で5月の取引を終えた。なお、月間で上昇するのは5月にして今年初めてとなった。

ドル/円 日足チャート

ドル/円5月の四本値

始値 142.963 高値 148.652 安値 142.096 終値 144.037

1日
日銀は政策金利を市場予想通り0.50%に据え置くと発表。同時に公表された展望リポートでは成長率や物価見通しを下方修正した上に、見通しについて「2025年度と26年度は下振れリスクの方が大きい」との認識を示した。植田総裁は会見で、各国の通商政策などの影響を理由に「経済の先行きについて不確実性は従来以上に大きい」と述べた。米4月ISM製造業景況指数は48.7と前月(49.0)から悪化したものの、市場予想(47.9)を上回った。構成指数の仕入価格が69.8と2022年6月以来の高水準を記録した。

2日
米4月雇用統計は非農業部門雇用者数が17.7万人増と市場予想(13.8万人増)を上回った。失業率は予想通りの4.2%、平均時給は前月比+0.2%、前年比+3.8%と予想(+0.3%、+3.9%)を若干下回った。トランプ米大統領は、ガソリンや食料品が値下がりしており雇用も好調だとした上で「インフレはなくFRBは金利を引き下げるべきだ」と強調した。

7日
米連邦公開市場委員会(FOMC)は大方の予想通りに政策金利を4.25-4.50%に据え置いた。声明では「経済見通しを巡る不透明感はさらに増した」「失業率の上昇とインフレ率の上昇に対するリスクが高まっている」とした。パウエルFRB議長は会見で「企業と家計が非常に悲観的になっているものの、経済は依然として健全だ」とした上で、「関税を巡る不確実性があまりにも大きいため、何が適切な金融政策対応かは全く明確ではない」「状況が明確になるのを待って行動することが出来る」と述べて、利下げを急がない姿勢を改めて強調した。なおトランプ大統領の利下げ要求は「われわれの仕事に全く影響しない」と語った。

12日
米国と中国は、相互に課していた関税を90日間引き下げることで合意したと発表。関税率は暫定的に米国が145%から30%へ、中国は125%から10%へと引き下げられた。ベッセント米財務長官は会見で「どちら側もデカップリング(分断)を望んでいないという点で一致した」と述べ、両国が対立緩和に向かっていると強調した。

13日
米4月消費者物価指数(CPI)は前年比+2.3%と市場予想(+2.4%)を下回り、2021年2月以来の低い伸びとなった。生鮮食品やエネルギーを除いたコアCPIは前年比+2.8%と予想通りだった。トランプ米大統領は「インフレは見られない、ガソリンやエネルギー、食品などほぼすべての価格は下落している!」「FED(連邦準備制度)はヨーロッパや中国のように利下げをしないとならない」「『遅すぎる男パウエル』は何をしているんだ?」とSNSに投稿した。

15日
米4月小売売上高は前月比+0.1%と市場予想(±0.0%)を上回ったが、変動の大きい自動車を除いた売上高は+0.2%と予想(+0.3%)に届かなかった。自動車、ガソリン、建築資材、食品サービスなどを除いた国内総生産(GDP)の算出に用いられるコア売上高は前月比-0.2%と市場予想(+0.3%)に反して減少した。

16日
米5月ミシガン大消費者信頼感指数・速報値は50.8と市場予想(53.4)に反して前月(52.2)から低下し、2022年6月以来の低水準となった。一方、消費者の1年先の期待インフレ率は7.3%と前月(6.5%)からさらに上昇。5-10年の期待インフレ率は4.6%と1991年以来の水準に上昇した。大手格付け会社ムーディーズは米国の信用格付けを最高位の「Aaa」から「Aa1」へ1段階引き下げたと発表。格下げの理由について「歴代の米政権と議会は、巨額の年間財政赤字と金利負担の増加傾向を反転させる措置で合意できなかった」と説明。「米国が持つ経済・財政の著しい強さは認識しているが、これらの強みだけで財政指標の悪化をもはや完全に埋め合わせることはできない」と指摘した。ただ、格付け見通しについては「ネガティブ」から「ステーブル(安定的)」に引き上げた。

22日
加藤財務相とベッセント米財務長官の会談後に米財務省は「為替相場は市場で決定されるべきだとの見解で一致した」などとする声明を発表。加藤財務相は「為替の過度の変動は経済に悪影響との認識を共有した」としつつ、「米財務長官と為替水準については議論していない」と語った。

23日
トランプ米大統領は「貿易において米国から搾取することを主な目的として設立された欧州連合(EU)は対応が非常に難しい」とした上で「6月1日から、EUに50%の関税を発動したい」などとSNSに投稿。ただ、わずか2日後(日本時間26日)には、欧州委員会のフォンデアライエン委員長との会談後に「発動期限を7月9日まで延長することに同意した」と発表した。

27日
本邦30年債や40年債利回りが過去最高を更新する中、財務省が超長期債の減額を視野に2025年度国債発行計画の年限構成を再検討するとの関係者の話が伝わった。これを受けて本邦長期金利は急低下した。その後、米5月消費者信頼感指数は98.0となり市場予想(87.1)以上に前月(85.7)から上昇。米中がお互いの関税を引き下げたことを好感し、今後6カ月の見通しを示す期待指数が大幅に上昇した。

29日
米国際貿易裁判所はトランプ政権の関税措置について、大部分が大統領権限を逸脱しているとして差し止めを命じた。トランプ政権はこの判決を不服として直ちに控訴。ほかの権限を使ってでも関税政策を推し進める考えを示した。その後、米連邦巡回控訴裁判所はトランプ政権の申し立てを受け、国際貿易裁判所の差し止め命令を一時停止する判断を下した。パウエルFRB議長はトランプ米大統領と会談。「利下げをしないのは間違いだ」と利下げを強く求めるトランプ大統領に対し、パウエル議長は「法律に求められている通り、自身とFOMCのメンバーは、最大雇用と物価安定を支えるための金融政策を策定する」「それらの決定は慎重で客観的、かつ『政治的に中立な』分析のみに基づいて行うと述べた」とFRBが声明で明らかにした。

各市場5月の推移

6月の日・米注目イベント

ドル/円の6月見通し

 ドル/円相場は年始から下落基調が続き、月足ベースで4カ月連続の陰線引けとなっていたが5月足は小幅ながらも陽線で引けた。年初来のドル安は米国の関税政策に対する不確実性などから「ドル離れ」の動きが強まったことが背景にある。4月までのドルはユーロなどの欧州通貨に対する下落が顕著で、その結果ユーロ/円やスイスフラン/円はドル/円が下落したにもかかわらず年初来で上昇している。これは、ドル/円の下落が円高によるものではなく、ドル安によるところが大きいことを物語っていよう。5月は対円だけでなくユーロやスイスフランに対してもドル安が一服しており、ドルの下値が固まりつつあることがわかる。こうした動きから、6月はドルの底堅さが増すことでドル/円相場を押し上げる可能性があると見る。なお、日本の石破首相は6月中旬にカナダで開かれるG7首脳会議(サミット)の直前に訪米し、トランプ大統領と会談する方向で検討に入ったことが伝わっている。日本政府内には、6月14日はトランプ米大統領の誕生日であり、これに合わせて関税合意を発表できれば「象徴的なものになる」と期待する声もあるとのことだ。日米関税合意は市場センチメントの改善という観点からドル高・円安につながると考えられるが、それだけでなく米国から日本への輸出拡大(日本の輸入拡大)や、日本から米国への投資拡大という資金フローの観点からもドル高・円安を誘発しそうだ。6月も「トランプ関税」がドル/円相場の中心テーマであり続ける公算が大きいだろう。17日に日銀、18日に米連邦準備制度理事会(FRB)と日米で金融政策発表が行われるが、いずれも米国の関税政策を巡る不確実性を理由に様子見姿勢を示していることから、市場は政策金利の据え置きを確実視している。こうした中、「金融政策」はドル/円相場のテーマにはなりにくそうだ。

株式会社外為どっとコム総合研究所 取締役 調査部長 上席研究員
神田 卓也(かんだ・たくや)
1991年9月、4年半の証券会社勤務を経て株式会社メイタン・トラディションに入社。 為替(ドル/円スポットデスク)を皮切りに、資金(デポジット)、金利デリバティブ等、各種金融商品の国際取引仲介業務を担当。 その後、2009年7月に外為どっとコム総合研究所の創業に参画し、為替相場・市場の調査に携わる。2011年12月より現職。 現在、個人FX投資家に向けた為替情報の配信を主業務とする傍ら、相場動向などについて、経済番組専門放送局の日経CNBC「朝エクスプレス」や、ストックボイスTV「東京マーケットワイド」、ニッポン放送「飯田浩司のOK! Cozy up!」などレギュラー出演。マスメディアからの取材多数。WEB・新聞・雑誌等にコメントを発信。
本レポートは、投資判断の参考となる情報の提供を目的としたものであり、投資勧誘を目的として提供するものではありません。投資方針や時期選択等の最終決定はご自身で判断されますようお願いいたします。また、本レポートに記載された意見や予測等は、今後予告なしに変更されることがございます。なお、本レポートにより利用者の皆様に生じたいかなる損害についても、株式会社外為どっとコム総合研究所ならびに株式会社外為どっとコムは一切の責任を負いかねますことをご了承願います。 Copyright©Gaitame.com Research Institute Ltd. All Rights Reserved. https://gaitamesk.com/