9日のニューヨーク外国為替市場でドル円は143.80円まで上昇後に142.66円付近まで下落した。米10年債利回りの上下に振らされ、水準を切り下げた時には日経平均先物が失速したことも材料視された。ただ一巡後は143円台まで下値を切り上げている。ユーロドルは米長期金利の上昇をきっかけに、一時1.1034ドルまで値を下げた。
本日の東京外国為替市場のドル円は、日本時間では明日の重要イベント(米大統領候補のTV討論会や米8月消費者物価指数の発表)を控えて米長期金利や日経平均株価の動向を見据えた相場展開が予想される。
昨日のドル円は141.96円から143.80円まで上昇しており、先週末金曜日の米8月雇用統計発表後の144.01円から141.78円までの下落を打ち消したことになった。日足的には、4手連続陰線の最後の6日の陰線に対して9日の陽線が「孕み線」(リバーサル)となり、目先の底打ちを示唆するパターンとなっているものの、依然として一目・転換線144.50円を下回っているため下値リスクが払拭されていない。
CMEグループがFF金利先物の動向に基づき算出する「フェドウオッチ」では、12月米連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げの到達点が、4.00-25%から4.25-50%になっており、ドルの買い戻しの要因となった模様である。
また、昨日は日本の4-6月期実質国内総生産(GDP)の改定値が下方修正された。植田日銀総裁が追加利上げの前提としている「経済・物価見通し実現の確度が高まれば、金融緩和の度合いを調整する」への警戒感が高まったことも円売り要因となった。
明日は午前10時(米国東部時間10日の21時)からハリス米副大統領とトランプ前米大統領によるテレビ討論会が開催され、21時30分にはインフレの伸び率鈍化が見込まれている米8月消費者物価指数(CPI)が発表される。
9月FOMCでの利下げ開始観測と年内1.00%程度の利下げ観測や日本銀行の年内の0.50%程度までの追加利上げ観測にも関わらず、ドル円は141円台で下げ渋る展開となっている。その要因として、次期米政権の政策が、どちらの陣営でも拡張的な財政運営が志向される可能性が高いため、インフレ的であることが挙げられる。
ドル円が8月5日に141.70円まで下落した背景には、7月31日の日銀金融政策決定会合の後の植田日銀総裁のタカ派発言、パウエルFRB議長のFOMC後のハト派発言、そして、米7月雇用統計(非農業部門雇用者数:前月比+11.4万人、失業率:4.3%)の悪化があった。
9月6日の141.78円まで下落した背景には、植田日銀総裁のタカ派発言、パウエルFRB議長やウォラーFRB理事のハト派発言、そして米8月雇用統計(非農業部門雇用者数:前月比+14.2万人、失業率:4.2%)が労働市場の改善を示さなかったことが挙げられる。
すなわち、ドル円が141円台まで下落した要因には、日米金利差の縮小が織り込まれたものの、下げ渋った要因としては、米国次期政権の財政出動、つまり金利上昇への警戒感があるのではないだろうか。
トランプ候補は、トランプ減税の恒久化と法人税率の引き下げを掲げていることで、歳出拡大や歳入減が見込まれている。さらに、中国からの輸入品に60%超の関税を課すと言及しており、関税は輸入物価の上昇を通じてインフレを加速させ、最終的に米経済の7割を占める個人消費に悪影響を及ぼす可能性がある。
ハリス候補の経済政策は、住宅や食品の価格抑制、税制を使った生活支援による高インフレへの対抗策であり、米連邦準備制度理事会(FRB)は金融引き締めを余儀なくされることになる。
(山下)
・提供 DZHフィナンシャルリサーチ
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