総括
FX「予想外の大幅利上げで一時急騰、正統派政策の持続性がカギ」トルコリラ見通し
(通貨最下位、株価首位)
予想レンジ トルコリラ/円5.0-6.0
(ポイント)
*今週は8月経済信頼感指数、2Q・GDP 8月製造業PMIの発表がある
*中銀は予想を上回る大幅利上げを実行、リラは一時急騰
*6月経常収支は黒字化
*為替保護リラ預金制度を解除へ
*エネルギー問題で海外と交渉
*ムーディーズはトルコの政策に前向きな評価
*IMFは23年の成長見通しを小幅引き上げ
*中銀総裁、副総裁はみなアメリカ帰り
*今年のインフレ見通しは58%
*エルドアン大統領はEUに加盟したい
*新財務大臣は合理的な政策に変わると主張、経常収支改善も目標
*今年は建国100周年
(8月月間首位に躍り出る。中銀の予想を上回る利上げで)
8月月間では強調推移している米ドルを抜いて首位にたった。トルコ中銀が、政策金利を予想の2.5%利上げを大きく上回る7.5%の利上げを行ったことで市場が大きく反応した。ただ対円で一時5.72まで上昇したが、ボリバン3σ上限上抜きはさすがに行き過ぎとして、5.5近辺まで反落した。
(中銀見解)
中銀は 48%近くまで高騰したインフレを鎮静化させるため「適時かつ緩やかに必要なだけ」引き締めるとの見解を改めて表明した。中銀はインフレを急激に抑え込むのではなく、徐々に利上げを行い、エルドアン大統領に配慮していたが、今回の行動は予想外であった。新たに米市場経験者2人が中銀に加わったこともきっかけか。大統領からはコメントは出ていない。こうなると、9月4日の8月消費者物価により注目が集まる。予想は前年同月比45%上昇だ。
また、エルカン中銀総裁は、段階的かつ断固としたロードマップの実施が継続されると述べた。
(為替保護リラ預金制度を解除へ)
中銀は、リラの下落による預金の目減りを保護する制度(KKM)の解除に着手した。5月のエルドアン大統領再選後、利下げから利上げに転じたのに続き、正統派の金融政策にシフトする動きの一環。
銀行は現在、外貨預金を目標水準までKKMに転換するよう義務付けられているが、この目標を解除。今度は逆に、KKM口座を通常のリラ建て口座に移行させるための目標値を設定するよう銀行に求めた。中銀はまた、外貨預金の預金準備率を引き上げた。これも通常のリラ建て口座への移行を後押しする措置だ。 増税、利上げ、為替保護預金の解除、積極的な経済外交と推し進めているが効果はまだ見えていない。
(6月経常収支は黒字)
6月経常収支は2021年10月以来の黒字(6.74億ドル)となった。予想の4.26億ドルの黒字を上回った。観光収入の増加や金融引き締めでの消費(輸入)の減少が影響した。黒字が維持できればリラの浮上に繋がる。
また6月の小売売上高は前年比28.5%増加した。
食品、飲料、タバコ、自動車燃料で増加した。
(エネルギー問題で海外と交渉)
エネルギー大臣曰く、
・トルコは新たな原子力発電所の建設について中国と交渉を続けている
・北部シノプ州に原子力発電所を建設するため、ロシアおよび韓国と交渉を続けている
・イラクから石油の輸入を開始する計画だ
・サウジアラビアと鉱山協力協定に署名した
(今週の指標)
8月経済信頼感指数、2Q・GDP 8月製造業PMIの発表がある。
テクニカル分析(トルコリラ/円)
8月24日に大陽線、持続性は
日足、8月24日の大陽線で一気にボリバン3σ上限を突破、5.77をつける。ただ、行き過ぎで反落7.50-55台へ下落。5日線、20日線も上向く。
8月24日-28日の上昇ラインがサポート。8月24日-25日の下降ラインが上値抵抗。雲中。
週足、先週の大陽線を含め5週連続陽線。今週は陰線スタート。7月24日週-8月21日週の上昇ラインがサポート。5月29日週-8月21日週の下降ラインが上値抵抗。
月足、先週の上昇もまだ2σ下限近辺で推移。23年6月-7月の下降ラインを上抜く。5月-6月の下降ラインが上値抵抗。
年足、8年連続陰線。その間52円から5円台へ沈む。今年は僅かに陽転していたが3月から陰転。
メルハバ
ムーディーズの見通し
ムーディーズは、「トルコの正統政策への移行が持続でき、その結果蓄積された不均衡が秩序正しく削減されるならば、トルコの見通しは前向きに転じる可能性がある」と述べた。
トルコ中銀は主要政策金利を引き上げ、過去1年間に実施した「歪んだ」マクロプルーデンス政策を段階的に廃止した。市場主導のリラ切り下げは、中央銀行の枯渇した外貨準備を回復しながら、輸出業者の競争力を回復するのに役立つ可能性がある。政府は今年上半期の「非常に深刻な財政悪化」の是正に着手した。ムーディーズは金融政策引き締めの「非常に緩やかな」ペースが来年3月の地方選挙まで続くと予想している。
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