“楽観から悲観へ。”

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注目の植田次期日銀総裁候補の衆議院議員運営委員会での所信聴取と質疑が終わり、植田氏は“現在の日銀の金融政策は適切だ。”と指摘し、金融緩和政策を継続する考えを強調した。

同時にイールド・カーブ・コントロール政策(YCC)の副作用軽減のため、対象年限を前倒しすることはオプションの1つであると述べるなど、将来の政策修正が意識されるような発言もあって一時は円買いに振れる場面も見られたが、基本的には市場の大方の予想通りであり、質疑終了後は当面は黒田路線継承との思惑からドル・円相場はじり高の展開となった。

それよりも市場が反応したのはニューヨーク時間に発表されたFRB.がCPI.よりも重要視すると言われる米国の1月PCEデフレーターで、総合が前年比+5.4%、エネルギーと食料品を除いたコアが+4.7%と、市場予想(+5.0%、+4.3%)を大きく上回っただけでなく、前月(+5.3%、+4.6%)からも加速した。

先週もご紹介した様に此処数週間発表された米国経済指標は軒並み市場予想を上回り、しかもインフレ鈍化傾向がスローダウンしたことを受けて市場でのFRB.による利上げスローダウン機運が萎み、3月FOMC.での利上げ幅が再び0.50%に拡大されるのではないかとの憶測も出始めた。
市場が期待していた年末位からの利下げ開始議論は霧散した。

その結果米国長期金利は大きく上昇し、先週金曜日10年債利回りは一時3.97%を上回るレベルまで上昇し、米金利上昇に最も敏感なドル・円相場も当然上昇して136.51の高値を付けて本年の戻り高値を更新した。

本年のドル・円相場の安値は1月16日に付けた127.23で、其処からは週足ベースで殆ど毎週値を上げているが、その間米国10年債利回りは3.50%から3.95%へと45ベーシス・ポイント上昇している。

(今年に入ってからのドル・円相場・週足・ローソク足チャート)

実はこの間、円だけではなく、ユーロ、ポンド、豪ドル、そして株価も下落している。

1月は米国消費者物価指数の上昇幅が縮小し続けたことを受けてFRB.による利上げスローダウン機運の上昇により米国長期金利は下落し、それを受けて株価は上昇し、ドルは主要通貨に対して大きく下げた。

米国インフレに対しての楽観論が台頭したのである。

ところが2月中旬になるとムードが一変した。

米国の消費者物価指数(CPI.)減速が明らかになり、同時に経済指標が軒並み上昇しだしたのである。

米国インフレに対しての楽観論が打ち消されて悲観論が出始めて長期金利も上昇した。

下の表は楽観論が未だ台頭する前の昨年末の12月31日、ドル・円相場が安値を付けた1月16日、そして先週金曜日の米国10年債利回り、主要通貨の為替相場、そしてダウ平均株価を比べて見たが、一目瞭然である。



楽観論が出始めた1月に向けて米国長期金利が下落してドルが下がり主要通貨が上昇した。
当然株価は上昇する。

そして2月中頃から悲観論が出始めて金利は上昇してドルが上がり主要通貨が下落した。
当然株価も下落する。

日銀新体制が発足する4月9日までは円単体に関しての関心は薄れ、専ら米国の物価・景気動向が注目されることになろうか?

個人的には短期的なドル高のトレンドは変わらないと見るが、市場が多少金利上昇=ドル高=株安ムードに前のめりになり過ぎている様な気がしないでもない。

何れは再びFRB.のハト派(金融引き締めに消極的)化と日銀による現行の緩和政策の修正が行われることは必定である。

依然としてドル・円のロング(買い持ち)ポジションを保持するのは時限爆弾を抱えている様な気がしてならない。

只その時限爆弾のスイッチは少なくともあとひと月(植田新日銀総裁の誕生)は入りそうにないが..


今週のテクニカル分析の見立ては更なる上昇を見込むが、そろそろ買われ過ぎを警戒し始めた。
137円を越えての深追いは禁物。
下サイドは132.50まで大きなサポート(下値支持線)は無し。

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