ドル・円相場が1998年の戻り高値であった147.66をいともあっさりと突き抜け、14日のニューヨーク市場では148.86の高値を付け、大台の150円を伺う展開となっている。
米国10年物債券利回りは再び4%を超えて一時4.07%を付けた後4.022%で週を終えた。
米国長期金利上昇に伴って対ポンド以外の主要通貨に対してドルは上昇したが、対円での上昇が際立つ。
下は今年に入ってからのドル・円相場(黒いローソク足)と10年債利回り(赤い線)を表すチャートであるが、見事に両者が相関しているのが分かる。
ドルが対円で際立って上昇している理由は此処でも何度も指摘した様に、日米金利差拡大と日本の国際収支を代表とするファンダメンタルズの悪化を嫌気しての円売りが台頭しているからであるが、その円売りを吸収するドル売り&円買い介入が9月22日に行われた。
ドル・円相場は介入当日こそ高値145.90から安値140.35まで暴落したが、その後はじわじわと値を戻してついに148円台まで上昇した。
介入に関しては、“出来っこない、出来たとしても効果は薄い。”との議論が多かったが、結果は、“介入は有ったが、結局相場は戻った。”で、効果が無かったのか、或いは効果が薄かったのかは断言は出来ない。
介入額2兆8千億円は我が国の凡そひと月分の貿易赤字額に相当し、介入でドルの不足分を充填した訳で市場のドル需給を均したことは間違い無い。
鈴木財務相と神田財務官は何度も、“再び介入を辞さない。”と繰り返し、実際に10月13日には少額のドル売り&円買い介入を行った模様で、“一々介入したかどうかは話さない。”と財務省高官が言ったと言われているが、これで良いのだと思う。
先週のレポートでも述べたが、我が国財務省の介入の目的は特定のレベルを守ると言うよりは、あくまでもドル上昇&円下落のピッチを遅らせることであり、時に応じて介入をやれば良いのだと思う。
ゼニ(介入原資の外貨準備)はたっぷり有るのだ。
そして市場のセンチメントの変化(日米金利差拡大のスピードの減速、そして停止。ドル上昇に対する懸念の増大。残念ながら我が国のファンダメンタルズの好転を望むのは難しいが、だからこそ円安進行をスローダウンさせる必要が有るのだ。)を待ちながら、時間稼ぎをすれば良い。
週末バイデン大統領が何かのイベントの折にドルの強さについて訊かれて、“ドル高を懸念していない。=I’m not concerned about the strength of US Dollar.”と述べて、市場は“バイデン大統領はドル高を容認する。”と解釈したが、これは少し違うのではないかと思う。
“強いドルはインフレ対策として有効である。”と言うアカデミックな事などは理解せず、中間選挙を控えてアメリカ大統領が、“強いドルを懸念しているか?”と訊かれて、“いいや、懸念していない。”と答えるのは至極当然であろう。
そもそもバイデン大統領はドルが対円で幾らの価値があるのか、言い換えれば1ドル幾らなのかには殆ど関心は無いと思う。
現在のバイデン大統領最大の関心事は中間選挙とウクライナ問題である。
日本政府(財務省)のドル売り&円買い介入によってドルが148円から140円に落ちたとしても、別にどうってことはないのだと思う。
介入について訊かれたら、“別に日本政府の為替介入に関して気にしていない。=I’m not concerned about Japanese Government’s currency intervention.とでも言うのではなかろうか?
依然として金利差拡大とファンダメンタルズに則ったドル買い&円売りと介入警戒のドル売り&円買いの鬩ぎあいは続こうが、介入のBeliever.(信奉者)として我が国金融当局(政府、財務省)のお手並み拝見と言うところである。
今週のテクニカル分析の見立ては、高値警戒ながらトレンドを重視して新高根更新(149円以上)を期待。
下値は145.50を切るまでは146~149円のレンジ。
145.50を下切ったら142までの下落を警戒。