“ドル・円相場は再び、乱高下。”

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先週のドル・円相場は週の始値の140.14を凡その安値としてどんどん値を上げ、あっと言う間に144.98の高値を付けた。

5円近い暴騰(と言っても良かろう。)である。

ドル・円上昇の背景には相変わらずのFRB.による利上げ期待と我が国国際収支悪化などのファンダメンタルズ的要因が挙げられるが、どうやら今回も143.00と143.50近辺に長期為替(例えば飛行機会社の様に10年単位での輸入予約を行う企業の実需のドル買い。)のオプション絡みのノック・アウト・オプション(143.00や143.50を付けると、ドルを買う権利を失ってしまう。)が存在したと言われており、高値144.98までのドル高騰を演出したものと思われる。

そう言えば139円台から130円台へと暴落した時もこう言ったドル売りの特殊玉が引き金となった。

そしてこの様な特殊玉によって演出された動きはそれが出尽くすと相場はある程度大きな値幅で戻すことが多い。

今回の144円台から141円台への下落はその表れと思われるが、ドルの下落を誘ったのにはもう一つの大きな要因が考えられる。

それは我が国金融当局の円安牽制発言である。

先週木曜日に財務省、金融庁、そして日本銀行が集まって所謂三者会談を開催し、神田財務官が“最近の円安進行は明らかに過度な変動であり、政府・日銀は極めて憂慮しており、あらゆる措置を排除せず、為替市場において必要な対応を取る準備がある。”と述べた。

何時も相場には関係無い金融庁が参加することを不思議に思っているのだが、まあ所謂金融当局が集まって円安を牽制しようとしたことには間違いは無い。

そして金曜日午前中には黒田日銀総裁が岸田首相と官邸で協議を行った後に、“為替相場が1日に2円~3円動くのは急激な変化と認識しており、今後も為替相場を注視する。”と述べて過度な動きを警戒する姿勢を示したこともドル売り&円買いを誘った。

俄かにドル売り&円買い介入の可能性についての議論が高まったが、敢えて個人的な意見を述べると、
-“インフレに悩むアメリカはそれを緩和するドル高を望んでおり、ドル売り介入を許さない。”と言う意見に対しては、確かにアメリカ財務省は基本的には介入には反対であるが、アメリカが中国とロシアに対して対決姿勢を強める中、アメリカ寄りの日本を懐柔させる為には為替問題はMinor issue.(小さな問題)であり、日本政府が介入を行うと言っても反対はしないのではないか?
日韓関係に関しても安倍政権よりは柔軟的な岸田政権に対してアメリカ政府は一定の評価をしている。

-“ドル売り&円買い介入は原資にドル外貨準備を使うので甚だ難しい。”と言う意見に対しては、我が国の外貨準備は1兆3000億ドルを超えており、1998年に榊原元財務官がドル売り&円買い介入を行って,“1回で外貨準備の1割を使ってしまった!これ以上は難しい。”と匙を投げた時の約2000億ドルの準備高から6倍以上の規模に達している。

あの頃よりは、相当余裕があるものと思われる。

-Don’t fight the Fed.(Fed.とは喧嘩するな。)と言う諺が有る。
言い換えれば“中央銀行とは喧嘩するな。”ともとれる。

今年6月に海外の投機筋が我が国10年債を売り浴びせて、利回りが一時日銀のイールド・カーブ・コントロール政策の上限である0.25%を超えたことが有ったが、日銀はすかさず指値オペを行って0.25%で無制限に債券を購入すると宣言して利回りが0.2%近くまで急落して投機筋はこっぴどい目に遭った。

1998年のドル売り&円買い介入は短期的には功を奏せず147台まで上昇したが、たった一月で115円台まで下落した記憶が有る。
この年は、ロシアの財政破綻に伴うルーブル・ショックが起きてそれがヘッジファンド危機に連鎖し、世界経済が急にリスク回避モードとなってドルが下落したこともあり、Mr.Yen.
のドル売り&円買い介入のせいでドルが下がったとは言い切れないが、矢張り介入は短期的には効かないこともあるが、長期的には必ず聞くと言うのが筆者の経験からの持論である。

実は1985年のプラザ合意の時もそうであった。
9月23日、日本の祭日の折に休日出勤してドル売り介入のお手伝いをしたが、介入当日は240円くらいから242円まで上昇したが、2日間で20円近く暴落したのを覚えている。

急にドル売り介入に怖気づいた訳ではないが、先週の金融当局と官邸の動きを見ると“何だか嫌な気がする。”と言う漠然としたものを感じるだけである。


介入が有るか、否かは分からない。

介入が効くか、否かも分からない。

テクニカル的には買われ過ぎを警戒しながらも145円を上切ったら次は148円、そしてそれをも上切ったら次は150円。
それを上切ったら、次は目標となるレベルが分からないと言うのが本音であるが、50年為替をやってきた者が“何となく警戒し始めた。”と言うと気障であろうか?


今週のテクニカル分析の見立ては上述した様に買われ過ぎを警戒しながらも依然としてトレンドは上を目指す。

145円を上切れば、次のターゲットは148円。
逆に140.50を下切ったら、次のターゲットは138.00。

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