(画像=PIXTA)
大阪府警は今年8月、FX投資の名目でお金を騙し取る詐欺グループ25人を摘発しました。「副業支援」と称して、FX投資に関する違法な助言を行うセミナーを主宰し、約19億円に上る資金を集めていた可能性があるとしています。このグループはSNS(ソーシャルネットワークサービス)を使って、不特定多数の人たちにコンタクトし、セミナーに集客していました。
また、6月には、FXで使用するトレード用アプリで偽の運用成績を示し、信じ込ませて約50人から1億5,000万円以上のお金を集めていた詐欺グループ10人を、警視庁が摘発するなど、FX関連の大型詐欺事件が相次いで報道され、驚かれた方々も多いのではないでしょうか。
SNSが投資詐欺のツールに
最近の投資詐欺の特徴のひとつは、SNSなどのコミュニケーションツールを利用した手口が増えていることです。あなたも見ず知らずの人から、下記のような投資交流グループに招待されたり、月平均利益50万円のコンサルティングが受けられるメンバーに勧誘するダイレクトメールなどが、普段から利用しているSNSに届いたりした経験はありませんか。
こちらは数カ月前に、私に直接届いた投資交流グループへの招待状をスクリーンショットしたものです。
(ライターが使用しているSNSの画面より作成)
有名私立大学教授を名乗る人物が主催していて、関連投資会社などに関する記載もありました。念のため調べたところ、名乗った大学に該当する名前の教授はいませんでした。また、記載された関連投資会社は金融庁に登録されておらず、後日、同一人物から、同じような別の投資交流グループにも招待されたため、「詐欺の可能性が高い」と判断して、そのときは「既読スルー」しました。
現在までのところ、この人物が逮捕されたり、詐欺グループで摘発されたりしたというニュースは確認されていません。しかし、今回改めてこの人物の名前や投資ディスカッショングループをネット検索してみると、被害を受けたという人による「口座からお金を引き出そうとしたら『FXは税金を先に支払わないと引き出せない』という説明で拒否され、最終的に数千万円も騙し取られた」という書き込みを見つけました。また、同様の被害を受けたという人たちが「警察に届けた」「弁護士と相談中」と書き込んでいました。
コロナの影響もあり、人との接触を避けた日常生活、SNSを使ったネットでのコミュニケーションが当たり前のようになっています。まったく面識のない人とSNSで、以前からの知り合いのように会話する機会も増えました。大阪府警に摘発された詐欺グループは、「投資スクール」の勧誘であることを告げずに集客し、入会者から高額な入会費を集めていたほか、数名に対して無登録のまま投資のアドバイスをしていた疑いが持たれています。
見ず知らずの人に持ちかけられた「おいしい儲け話」に簡単に乗っかると、大きな「落とし穴」に落ちるかもしれないことは、肝に銘じておくべきでしょう。
FX関連の詐欺が増えている
長年自分でもFXトレードを行い、金融関連の記事もたくさん書いてきた私が一番気になるのは、この数年でFX関連の詐欺が増えていることです。国民生活センターは今年2月、「FXに関するトラブル相談が急増している」というデータを発表しています。2018年には577件だった相談が、2021年には2,172件と4倍近く増えています。FX 会社が乱立していた2000年代前半ならいざ知らず、「業界もルールも整備され、金融商品として成熟してきたはずのFXでなぜ」という疑問がわきます。
※消費者生活センター経由の相談件数は含まない
(国民生活センターの公表資料から筆者が作成)
また、FX関連の投資トラブルとして、国民生活センターでは以下のような相談事例を紹介しています。
国民生活センターで紹介されている相談事例 |
1)SNSで知り合った女性にFXを勧められ、利益を引き出そうとしたら、高額な手数料を請求され、支払ったにも関わらず出金ができない。 |
2)ブログで知り合った人に「儲かる」と言われて海外FXで自動売買していた。多額の損失が出たので取引を停止したいがFX業者と連絡が取れなくなった。 |
3)マッチングアプリで知り合った女性に勧められ、海外FX業者で口座を開設し、その女性に指定された個人口座に高額を振り込んだが、お金が引き出せなくなった。 |
いずれもネット経由で知り合った人たちの間で起きています。
背景として見逃せないのはスマートフォンの普及です。NTTドコモのモバイル社会研究所が2022年1月に実施した調査の結果によれば、日本国内のスマホとケータイの所有者のうちスマホ比率は94.0%でした。「もはや国内で暮らすほとんどの人が携帯電話としてスマホを利用している」と言っても過言ではないでしょう。
スマホの登場は、動画を見たり、聞いたり、ショッピングしたり、公共料金を支払ったり、もちろん、株式やFX投資などをしたりと、携帯電話の利便性を飛躍的に高めました。ただ、「ワンストップ」でなんでもできて、今まで以上に日常生活で欠かせないものになったために、スマホ経由で届いたおいしい「儲け話」に飛び付き、手軽にスマホアプリで始めてしまう可能性は高くなっていそうです。
巧妙化する騙しの手口
冒頭でも紹介した警視庁が6月に摘発した詐欺グループの事件でもスマホが利用されていました。この詐欺グループはFXトレードで利用するアプリを用意し、海外の証券会社に口座を開設させて、そこに投資させていました。FXトレード用のアプリをインストールすると、海外証券会社の口座と連動し、架空の運用実績がアプリ上で表示されるようになっていて、偽の運用成績を信じ込み、追加で資金を投入した被害者もいたそうです。このアプリでは自動売買の設定もできたそうですから、詐欺グループの中には高度なコンピューターやインターネットの知識と技術を持った人がいて、極めて巧妙な手口で詐欺を働いたということになります。
(報道内容を元に筆者が作成)
過去にも、高額な自動売買システムを「絶対に儲かる」といった謳い文句で売りつけ、海外FX業者に口座を開設させた後に、口座から出金しようとすると、さまざまな理由で出金させないといった詐欺は多数ありました。最近ではスマホの普及にともない、FXの「専用アプリ」を無料ダウンロードさせるような手法に変化してきています。金融庁に登録されている「本物」の国内FX会社でも、同様のアプリを使ってFXトレードを開始することになりますから、経験のない初心者が「本物」か「偽物」かを見分けるのは、以前よりもかなり難しくなっているのかもしれません。
詐欺被害にあわないために
こうしたFXに関連する詐欺事件やトラブルに見舞われないようにするための最善の方法は、相手が金融商品取引法に基づく登録を金融庁に済ませている事業者かどうかを確認することです。登録業者名は金融庁のウェブサイトで確認できます。
金融庁 https://www.fsa.go.jp/menkyo/menkyo.html
また、金融庁は「無登録で金融商品取引業を行っている」として、過去に警告を発した業者のリストも公開しています。
金融庁 https://www.fsa.go.jp/ordinary/chuui/mutouroku.html
これまでに国民生活センターに寄せられたFXに関するトラブルの事例をみると、「必ず儲かる」などのセールストークで誘われて、「自動売買ソフトやシステムを購入させられたり、専用アプリをインストールさせられたり、FXの勉強のための情報商材を売りつけられたり」しています。また、「海外証券会社に口座を開設させられて、運用益が出ているにもかかわらず、さまざまな理由で出金を拒否され、最後は連絡が取れなくなる」ようなケースもありました。
もし、これに似たような「FXの儲け話」を持ちかけられたり、トラブルに陥ったりした場合は、地域の消費者センターに相談してください。消費者庁が設置している「消費者ホットライン」188(電話番号)に連絡すると身近な消費者センターや消費生活相談窓口を案内してくれます。
消費者庁「消費者ホットライン」
https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
金融庁も金融サービス利用者相談室でも、質問や相談、意見を受け付けています。
https://www.fsa.go.jp/opinion/
詐欺は「騙されてからでは遅い」というケースがほとんどです。詐欺の手口は千差万別です。実際にお金を渡してしまう前に、勧誘してきた相手や組織、お金の使い道は必ず調べるようにしてください。「よくわからないな」と思ったら、上述した団体、組織などに相談するようにしましょう。「絶対に儲かる投資」は、この世の中にありません。「甘い誘い」は疑うようにしてください。
PickUp編集部: ライターK 大学卒業後、テレビ制作会社に勤務、NHKや民放局の報道番組でディレクターを務める。その後、出版業界に転じて金融・経済誌の編集者や記者として、政治・経済・金融などの記事制作に携わってきた。現在はフリーで活動中。FX歴は10年以上。実際にポジションを持って、FXトレーダーたちのトレード手法を確認する日々を送っている。
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