注目のカンザスシティー連銀主催のジャクソンホールでの金融シンポジュームが終わった。
昨年の同シンポジュームではパウエルFRB.議長が米国のインフレは一過性のものであると楽観的な意見を述べて、その凡そ半年後に利上げを行うという大失態を演じ、今回はどの様な挽回策を出して来るのかと期待されたが、議長は
-インフレ抑制に向けた政策をやり遂げるまで利上げを続けなくてはならない。
-金利上昇により成長鈍化や労働市場の悪化で家計や企業になんらかの痛みが生じるのは分かっているが、インフレを放置しておく事の痛みの方が大きい。
-7月の物価の伸び鈍化だけではインフレ抑制と確信するには程遠い。
-9月のFOMC.での利上げ幅は今後のデータや見通しで総合判断する。
-物価安定の回復には暫く引き締め的な政策を維持する必要がある。
とインフレ抑制の為の利上げを躊躇なく続けることを強調した。
市場は連日の地区連銀総裁のタカ派的コメントに引き続き、パウエル発言を同じ様にタカ派的な物と受け止めたが、講演終了後はSell on fact.(事が起きた後は売れ。)の市場の格言通りにドルは売られてドル・円は136.17の安値を付け、ユーロ・ドルは1.0090、ポンド・ドルは1.1900の高値を付けた。
只その後はドルの買い戻しが入ってドル・円は137.51、ユーロ・ドルは0.9965と再びパリティーを割り込み、ポンド・ドルも1.1738まで大きく下落して週を終えた。
株価はパウエル議長のタカ派的発言を嫌気して大きく下げ、前日比でダウは1,008ドル(約3.0%)、ナスダックは498ポイント(3.9%)、S&P.は141ポイント(約3.4%)の下落で週を終えた。
その煽りを食らって週明けの東京株式市場では日経平均も正午現在で凡そ800円もの大きな下げを演じている。
興味深いのは債券市場の反応で、パウエル発言を受けて2年債は売られて金利は上昇し、逆に10年債には買いが入って利回りは下落して長短金利差の逆イールドは広がった。
為替市場では日米金利差拡大の思惑から“140円台突破は時間の問題。”との声が聞かれるが、果たして7月14日に付けた139.39をそうすんなりと越えていくかどうかはよくわからない。
パウエル議長は9月のFOMC.での利上げ幅は今後のデータや見通しで総合判断すると述べたが、FRB.が注視する事前のデータの内9月2日発表の8月の雇用統計の非農業部門雇用者数は前月の+52万8千人から+29万人、9月13日発表の8月の消費者物価指数は前月の+8.5%から+8.2%と何れも鈍化が見込まれている。
これらを見て6月、7月に引き続き9月も0.75%の大幅利上げを行う必要があるのかどうか分からない。
市場はたった10分弱のパウエル講演の後、大きく利上げ機運に前のめりになってドルにBullish.(強気)になりすぎている気がしてならない。
もしFOMC.の決定が0.5%の利上げに留まり、長期金利の上昇が大きくなければ140円台の大台は意外に“近くて遠いレベル。”なのかも知れない。
次回のFOMC.は9月20日~21日の予定で開催されるが、その前の雇用統計、そして消費者物価指数をドキドキハラハラしながら見守る事になりそうである。
今週のテクニカル分析の見立ては更なるドルの上昇を示唆。
135円を下切るまではドルのロングを保持。