“ドル全面高。”

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先週のドル・円相場は大きく値を戻し、週初の安値132.56から週末に掛けて高値137.22まで4円66銭の大幅高を演じた。

実は先週の動きはドル高&円安ではなく、ドルはその他主要通貨に対しても大きく値を上げており、ドル全面高と言っても良い展開であった。

 


ドル上昇の理由としては米国長期債利回りの上昇が挙げられ、10年物国債の利回りは週初の2.793%から2.975%へと上昇している。

米国長期債利回りの上昇の背景には相次ぐFRB.地区連銀総裁のタカ派発言が挙がられ、米金利上昇に伴ってドルが上げたとも言えるが、その他にも、
-猛暑によるライン川の水位の大幅低下により石炭や石油などのエネルギー運搬に大きな支障をきたしてドイツを始めとするユーロ圏の深刻なエネルギー危機が警戒される中、高インフレによる域内の景気悪化が意識されてユーロ売りが優勢となった=ドル高&ユーロ安。

先週発表された英国7月の消費者物価指数(CPI.)前年比+10.1%以上と約40年ぶりの物価高を記録して米国以上にインフレ懸念が強く、市場は9月半ばの金融政策委員会による0.5%の利上げを織り込んだものの、ポンド売りの勢いは収まらない。=ポンド安&ドル高。

オーストラリアも世界的な商品先物価格の下落により資源国通貨の豪ドルにも売りが入り易い。=豪ドル安&ドル高。

円に関しては米国短長期金利上昇による日米金利差拡大の思惑のみならず、7月の貿易収支が12ヶ月連続で赤字を計上するなど、我が国のファンダメンタルズ悪化が円高進行を阻む。=円安&ドル高。

3週間前の130.38までのドル安&円高進行は何だったんだろうと思ってしまうが、あの時は10年債利回りは2.5%台まで急落しており、又徐々に米国経済に対しての中長期的な慎重論が台頭して市場のドル・ロングがある程度整理され、またこのレポートでも触れた様に本邦機関投資家による“特殊玉の売り”によりドルの下落が加速されたのかも知れない。

依然としてドル・円相場は米国長期金利動向に大きく左右される状況が続くが、テクニカル上は日足が21日移動平均線(紫色の線)を上切って更なるドルの上昇を期待する向きが多い。

133円~134円の間くらいで収斂が期待された21日と90日移動平均線は日足相場の上昇に従って乖離を始めており、“収斂すれば意外や意外のドル安&円高相場が見られるかも知れない。”との思惑は遠のきそうである。

 

(2022年2月からのドル・円・日足・ローソク足・チャート。
紫色の線が21日、緑色の線が90日移動平均線)

今週は夏恒例の米国ワイオミング州、ジャクソンホールでの金融シンポジュームが開催される。

米国7月の雇用統計データ、物価指数に一喜一憂させられた後の先週のFRB.地区連銀総裁のタカ派発言の後、パウエル議長がどの様に収めるかが注目される。

9月2日に発表される注目の8月米国雇用統計、そして9月13日に発表される8月米国消費者物価指数を前にしてパウエル議長が極端なタカ派的、或いはハト派的発言をするとも思えないが、9月のFOMC.での利上げ幅について意見が分かれる今、果てさてどの様な発言が聞かれるか?

思ったよりもタカ派的な発言が聞かれれば再び139円台の高値トライ、逆にハト派的な発言であれば135円割れも有り得る。


今週のテクニカル分析の見立ては135.30のレジスタンス・レベル(上値抵抗線)を上切って、更なる上昇を目指す。
21日、90日移動平均線が収斂すると思われる134.00を下切るまではドル・ロングを保持。

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