先週ドル・円相場が急落し、一時安値132円台のミドルまで下落した後週末に向けては値を戻して133.23で週を終えた。
週明けの今日の東京市場では一時133.56の高値を付けたが再び売り攻勢に押されて、安値132.08を示現した。
先々週の戻り高値138.87から比べると10日で凡そ6円80銭の大暴落である。
此のレポートでも再三“マーケットはドルの買われ過ぎの状態である。”と指摘したが、大きなポジション調整が起きた感が有る。
注目のFOMC.では市場の予想通り0.75%の利上げが決定され、株式市場と債券市場では買いが先行して株価は大きく上昇し、長期金利は下げた。
この傾向にさらなる追い打ちを掛けたのが米商務省が28日に発表した第二四半期の米国内総生産(GDP.)の年率換算で前期比-0.9%と言う数字であった。
第一四半期は-1.6%であり、2四半期連続でマイナス成長となって定義上は“テクニカル・リセッション。”という事になる。
長期金利は下げ足を速め、教科書通りに長期金利の下げにつられてドルも下げたが、その中でも対円でのドルの下げが一番強烈であった。
その理由は簡単で、マーケットがドル・円の買い持ちに偏っており、その調整が起きたのである。
先ずはシカゴ・IMM.であるが一時よりは減ったが相変わらず円のショート(ドルのロング)を保持しており、それは先週26日現在でネットで-61,481枚の円・ショート、約56億ドルのドルの買い持ちであった。
ご存じの様にヘッジ・ファンドの多くが日銀の政策変更を期待して日本国債(JGB.)を大きくショートにして大やられした。
イールドカーブ・コントロールの上限である0.25%で債券を売り、日銀の執拗な買い攻勢に一敗地に塗れて買い戻しを余儀なくされた。
金曜日はJGB.は0.180%で引けており、巨額の買い戻しが入って金利が大きく下げたことになる。
彼らはJGB.売りとドル・円買いをセットにしており、その反対取引としてJGB.の買い戻しとドル・円の売りを行ったであろうことは想像に難くない。
そして次に我が国の個人投資家のポジションを見てみると同じく先週26日時点で約28億ドルのドルの買い持ちポジションを保有していた。
前週は約10億ドルの買い持ちであったから、ドル・相場が高値138.87から月曜日に付けた135円台まで下落する過程で、ドルの上昇を見込んでドルの買い持ちを膨らませたものと思われる。
(黒い線がドル・円相場、赤い線が個人投資家のドルのポジションを表す。)
そしてまさかの135円割れを見て、慌てて損切りのドル売り&円買いを行ったものと思われ、これがドルの下落のスピードを加速させたと見て良かろう。
週明けの本日は133.20で始まり、一時は133.56の高値を付けたが、その後132.06まで急落した。
これを見るとマーケットは未だドルのロングで捕まっているのではないかと推察される。
そう言う意味では明日発表される我が国の個人投資家のポジションとIMM.のポジション状況が注目される。
ところで過去に此のレポートで米国10年債利回りとドル・円相場の相関をご紹介してきて、年初からの両者の相関性を見るとドル・円相場の動きが少しはしゃぎ過ぎで下への調整が有っても不思議ではないと言ってきたが、どうやらそれが少し解消気味の感じがする。
確か先週日経新聞がこの米国10年債利回りとドル・円相場の相関性の離脱を“ワニの口。”と表現していたが、段々このワニの口が縮まって行く様であれば130円割れも視野に入って来ようか?
今週のテクニカル分析の見立ては重要なサポート(下値支持線)である135.50を下切ったことで更なる下落を示唆。
先週までのBuy on dips.(下がったら買う。)の戦略は中止して何処まで下がるかを見極めたい。
p.s.
今週末から来週初に掛けて夏休みを頂く予定が有り、来週のレポートは一日遅れの9日にお送りします。