前年比+8.6%と言うショッキングな5月の米国消費者物価指数(CPI.)が6月のFOMC.での0.75%の大幅利上げの原因となった。
先週発表された6月のCPI.はガソリン価格の高騰により5月の+8.6%を上回る数字となることが予想され、しかもホワイトハウス報道官が前もって、“13日に発表される6月米CPI.は非常に高い水準が予想される。”とコメントを出していて市場は“相当高い数字が出るだろうな。”と身構えていたが、案の定市場予想の+8.8%を大きく上回る+9.1%となり、市場に激震が走った。
26日~27日に開催予定の7月のFOMC.において一気に1%の利上げが決定されるかも知れないとの憶測が台頭し、ドルが買われて株価は下落したが債券市場では大幅な利上げが将来の米国景気後退を招くリスクが増大すると考え、10年債が買われて利回りは低下した。
ところが短期の政策金利(F.F.レート)の大幅引き上げ予想を受けて2年債は売られて利回りは上昇して2年物と10年物の利回りが逆転(長期金利が短期金利を下回る。)して所謂逆イールド・カーブが出現した。
逆イールド・カーブは景気後退のサインと言われている。
実はこの逆イールド・カーブは7月5日から昨日の18日まで13日間連続で出現しており、しかも2年物債券利回りと10年物債券利回りの逆イールドの差は7月5日の-0.004%から7月18日は-0.181%へと拡大している。
市場の米国景気後退に対する疑心暗鬼の根は深い。
CPI.発表後はドルが買われドル・円相場は24年ぶりのドル高&円安水準となる139.39を付け、ユーロ・ドルはParity.(ドルと等価)となる1ユーロ=1ドルを割り込み、0.9952の安値を示現した。
その他主要通貨であるポンド、豪ドルも下落してドルの全面高の様を呈した。
ところが次回FOMC.での1%利上げ期待に対してFOMC.のオピニオンリーダー格として知られ、タカ派(利上げに積極的)と目されるウォーラーFRB.理事が、1.00%利上げについて“マーケットは先走り過ぎている。FRBは、昨日のCPIに対し条件反射的な反応をしたくはない。”と発言して0.75%利上げを明確に支持して1.00%の大幅利上げを否定した。
そのほか同じくタカ派と言われるセントルイス地区連銀のブラード総裁が0.75%の利上げを支持すると表明したことで、一段と積極的な利上げ観測が後退した。
現在はFOMC.を控えてブラック・アウトと呼ばれる期間に入ってFOMC.メンバーとFRB.高官の金融政策に関する発言は禁じられている。
前回はウォールストリート・ジャーナルを使ってFOMC.前に0.75%の利上げを事実化したが、今回もFRB.の二人のタカ派高官の発言から察するに恐らく1%ではなく0.75%の利上げに落ち着く可能性が高かろう。
市場はこれを織り込みつつあり、+9.1%のCPI.ショックから立ち直ってドル・円相場は一時137円台まで下落し、ユーロ・ドルも同じく一時1.02ドル台まで回復した。
為替市場では上で述べた逆イールド・カーブに象徴される米国景気に対する将来的な不安によるドル安とFRB.による利上げによるドル高との鬩ぎあいが見られて今週は高値圏でのもみ合いが予想される。
今週のテクニカル分析の見立ては相変わらずドルの買われ過ぎを警戒しながら下への調整にも留意したい。