安部元総理が狂信者の凶弾に倒れてお亡くなりになった。
政治信条や主義・主張の違いも有って様々な意見も有ろうが長期安定政権を担い、政治家としては傑出した人物であった事は疑い有るまい。
アメリカは弔意を示すためにブリンケン国務長官を日本に派遣し、ホワイトハウスは半旗を掲げた。
ウクライナ情勢で対立の深まるロシアでさえプーチン大統領が"シンゾー。"とのファースト・ネームを使って弔意を示した。
我々金融に携わる者にとって咄嗟に浮かぶのは、"岸田政権になってからも多大な影響を与え続けたアベノミクスはどうなるのだろう?"との疑問であろうか。
安部元首相、撃たれる。との第一報が入った瞬間に株は下げ、ドル安&円高が進んだがこれは日銀による大規模な金融緩和、低金利、株高、そして円安を演出したアベノミクスの終焉か、もしそうであれば金融緩和は終わり、金利高、株安、そして円高となるとの思惑が市場に走ったと思われるが、それは長続きせず市場予想よりも良かった6月の米国雇用統計データを見て金曜日の終値は前日比で日経平均は約26円高、そしてドル・円相場は11銭高の136.11で週を終えた。
ドル・円相場の週足・ローソク足・チャートを見ると3月から9週連続で陽線、3週連続で陰線、そして再び6週連続で陽線を見せており、中長期的なドル高&円安の流れが続きそうであるが、3月からの相場上昇の勢いとは違って多少スローダウンの兆候が有る事には留意したい。
また以前にも指摘した様に米国10年債利回りとドル・円相場の相関チャートでも後者(黒いローソク足)のはしゃぎぶり(?)が目立っており、此方の動きにも同じ様に留意したい。
(今年に入ってからのドル・円相場(黒いローソク足)と米国10年債利回り(赤い線)の相関チャート。)
週明けの東京市場では株高とドル高が進み、日経平均は一時500円以上の上げ、そしてドル・円相場も先々週の戻り高値を更新して一時137.27を示現した。
市場は安部ショックが幾分落ち着き、週末投開票のあった参院選での自公・連立政権の圧勝を評価して株には買い戻しが入り、国民の円安批判が政権基盤を揺るがすものではなかったと理解してドル買い&円売りに向かったものと思われる。
選挙結果を見ると圧倒的な支持を受けて岸田政権の基盤は益々盤石なものとなり、今となっては岸田総理はアベノミクスの呪縛から解放されてある意味、フリーハンドを手に入れたとも言える。
どう言う訳か最近海外から,"日銀は近い内に政策変更を行うのか?"との問い合わせを受けることが多くなった。
彼らは先進国中唯一金融緩和を続け(このインフレ下にも拘わらず、短期金利を低く抑える。)イールド・カーブ・コントロール政策により長期金利をも0.25%以下に抑え込もうとする日銀の政策は遅かれ早かれ変更を余儀なくされると読む。
まあその点は間違いあるまいが、問題はその変更が"何時起きるか?"である。
我が国国内では殆どの市場参加者がその時期は黒田日銀総裁が辞める来春までは無いと読むが、海外の連中はそこまで悠長には構えていない。
彼らは日本国債を売り持ちにして日銀が守ろうとする0.25%のマジック・レベルを破ることを虎視眈々と狙っている。
金曜日の引け値で0.245%を付けたJGB.10年債利回りは本日午后1時の段階で上限の0.25%で取り引きされている。
技術的には日銀は為替市場での円売り&ドル買い介入と同じ様に無制限で債券の購入は出来るが後から債券大量購入の付けが回ってくることは日銀も百も承知の筈。
海外の投機筋の売りと日銀の買いとの攻防は暫く続くのであろう。
もし日銀がこの戦いに屈したら?
一時的には日米長期金利差縮小の思惑で円の買い戻しが入るのは必定であろう。
これから日銀政策決定会合が開催される直前には"イールド・カーブ・コントロール政策は変更されるか?"との議論が常に沸き起こるであろう。
因みに年内の日銀政策決定会合は7月20日~21日、9月21日~22日、10月27日~28日、12月19日~20日の4回が予定されており、来年分については近く公表になる予定である。
今週のテクニカル分析の見立ては戻り高値を更新したものの、買われ過ぎを示唆。
高値追いは禁物。買うなら136円台Low.で。
135.25を下切ったら更なる下落に注意。