“お上のお墨付き。” 

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ドル・円相場の騰勢が止まらない。

3週間前の126.36を安値として先々週、そして先週も約4円ずつ上昇し、今朝の東京市場では134.99まで上昇する局面が有ったが午後1時現在では未だ135円の大台を突破するには至っていないが、まあ時間の問題でこの大台をブレークして2002年3月に付けた戻し高値の135.15をも突破する可能性は非常に大きかろう。

先週金曜日に注目の米国5月の消費者物価指数(CPI.)が発表される前には既に134円台のミドルで取り引きされていたドル・円相場であるが、同日午後に日銀、金融庁、そして財務省が“国際金融資本市場に関する情報交換会合。”と称する会合を開き、足元の為替相場について“急速な円安の進行が見られ、憂慮している。”との声明文を出し、“為替相場はファンダメンタルズに沿って安定的に推移することが重要であり、急速な変動は望ましくない。”と指摘して、市場には当局による介入を含めた何らかの措置が取られるのではないかとの警戒感が高まり、高値は134.48に留まった。

この情報交換会合は定期的に開かれており、ドル・円相場が135円に近付いた為に緊急に開かれたものではなかったが、この3者会合で声明文を公表するのは初めてであった。
財務省の神田財務官は会合後、為替介入も念頭に“あらゆるものを含めて適切な対応をとる。”と語り、協調介入も含まれるかと問われて“あらゆるオプションを念頭に置いて機動的に対応するが、今そういう局面にあるかは申し上げられない。”と話した。

結局は最近の為替市場での急速な円安の進行に対して,“憂慮している。”だけで過去によく聞かれた“断固たる措置を取る。”などの文言は聞かれず、今朝の東京市場での上値トライを許すこととなった。

米国5月の消費者物価指数(CPI.)であるが、前年比で3月の+8.5%から4月は+8.3%と下落基調にあり、もしかして米国での物価上昇が一段落してインフレーションは既にピーク・アウトしたかも知れないと言う憶測を打ち破る+8.6%となって株式市場は大きく下げ、債券市場でも債券が売られて長期金利が大幅に上昇し、10年債利回りは一時3.155%を付けた。

と、このレポートを書いている瞬間(午後1時10分)に突然ドル・円相場が上昇して135.17の高値を付けた。

本日の債券先物市場で米国10年債利回りは3.2%を超えており、ドル・円相場の戻し高値更新は不自然ではない。

FRB.が強力な金融引き締めに転じる中、黒田日銀総裁は“揺るぎない姿勢で金融緩和を継続していく。”と強調し、また10年債利回りを無制限の買い取りでもって0.25%に抑える姿勢を変えてない。

日米金利差は益々広がるばかりであり、円が売られてドルが買われる流れが続くのは自然である。

IMF.(国際通貨基金)の対日審査責任者であるサルガド氏は、
“最近の円安は、日米金融政策の先行き予想などファンダメンタルズを反映している。”
“円安は日本経済への影響は良いものと悪いものある。”
“円安は輸出業者や海外で利益を得る企業にはプラス、日銀の2%インフレ目標の達成を後押しする。円安の負の側面は輸入業者や家計への影響。”
“コストプッシュ要因がなくなれば、中期的なインフレ率は引き続き日銀目標を大幅に下回る見込み。”
“インフレが安定的・持続的に達成されるまで、日銀が金融緩和を継続するのは適切と認識している。”
と述べて日銀の金融緩和政策とそれに伴う円安進行を正当化する発言をした。

そもそもこの円安進行は日銀、金融庁、そして財務省がいくら騒ごうが、お上公認の動きと言ってもおかしくはないのではなかろうか。

ドル・円相場が20年来の高値を更新し、何処までドルが上昇するかを判断するのは難しいが、この流れが止まる前提としては、
-日米金利差拡大の流れが止まる。
この為にはFRB.が利上げとバランス・シート縮小を停止するか日銀が利上げをするかであるが短期的には何れも有り得ない。

-我が国の国際収支悪化が止まる。
これも円安と原材料高騰で短期的には無理である。

-市場のポジションが大きくドル買い(円売り)に傾く。
シカゴ・IMM.と我が国個人投資家はそこそこのドル・ロング(円・ショート)のポジションを保持しているが、規模としては大きくはない。
むしろ実需(輸出、輸入、資本筋のネット)の潜在的なドル不足の方が大きい。

-大幅な利上げの影響で米国が景気後退に陥る。
秋まではその可能性は低いと思われる。

今から振り返ると3週間前の126円台は何だったんだろうと思われるが、あの動きは米国10年債利回りが3.2%から2.7%台へ急落した為に起きたつむじ風の様なものであったのだろうか?

(本年1月からの米国10年債利回りとドル・円相場の動き。)

今週のテクニカル分析の見立てはドル・ロングの保持で次のターゲットは137.00。
下サイドには130.50まで大きなサポート(下値支持線)は見られない。

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