“FRB.総タカ派化。”

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先週、注目の前回FOMC.議事要旨が発表され、政策金利に関してはインフレ圧力が強い状態が続く場合は0.5%の利上げを一回以上行うことが適切であり、保有国債を月600億ドル、住宅ローン担保証券(MBS.)を月350億ドル削減するバランス・シート縮小(QT.)にも概ね合意していたことが判明した。
そしてロシアのウクライナ侵攻が無ければ3月の会合時点で多くの参加者が0.5%の利上げを支持していたが、侵攻を受けて0.25%の利上げに留めたことも明らかとなった。

またFRB.内でハト派最右翼と目されていたブレイナード理事が金融引き締めに積極的な姿勢を見せて、これでFRB.内のハト派は皆無となった。
FRB.総タカ派化が実現したのである。

これを受けて米国債券市場は債券売りが台頭して長期金利は軒並み上昇し、10年債利回りは週初の2.393%から2.703%へと0.31%も上昇した。

これを受けてドル・円相場もじり高となり、週初に付けた122.26を安値として今日週明けの東京市場では125円台一歩手前の124.99まで上伸した後午後3時半現在125.30で取り引きされている。

3月からのドル・円相場の日足・ローソク足・チャートを見てみると、125円を付けた後の3日間の調整の売りを除けば、見事な上げ足である。

この動きを見て、“一体、何処までドル高&円安が進むのですか?”とのご質問を受けるが、恥ずかしながら良い答えが見出せない。
言い換えれば、何処まで行くのか見当が付かなくなってきた。

幾つかの要因が絡まって為替相場が形成されるのだと思うのだが、その要因を挙げてみると、
-経済成長率、物価上昇率、失業率、財政収支状況、国際収支状況などのファンダメンタルズ(経済的基礎要因)。
 日米で比較してみると国際収支を除いて日本が圧倒的に劣っている。
 その我が国の国際収支もついに貿易収支に続いて経常収支が赤字に転落するなど、悪化の一途をたどっており、ファンダメンタルズの観点からも円が買われる地合いではない。

-日米金利差。
 これは説明の必要性は全く無い。
 片や頑なにゼロ金利を続け、長期金利の上昇迄もイールド・カーブ・コントロールとやらで意図的に抑えている。
 もう一方は金利の上昇のみならず量的引き締めを行おうとしており、益々日米金利差は拡大傾向にある。
 ゼロの金利の円を持つか、それとも金利の高いドルを持つか?

-市場需給。
 シカゴ・IMM.の投機筋や我が国個人投資家はドルの買い持ちポジションを保持しているが、輸出入・機関投資家のポジションは決して買い持ちとは言えない。
 輸出筋はリーズ(ドルを早目に売る。)を行ってドルの上昇局面で“売るべきドル”をとっくに売っており、むしろコロナ禍で輸出が減少した煽りでオーバー・ヘッジ(余計に売り過ぎている。)となっていて輸出業者がドルを買い戻すと言う珍現象も見られる。
 輸入筋はラグズ(ドルの買いを遅くする。)を行って買いそびれており、また120円の節目や122.50でのノックアウト・オプションの消滅で“虎の子の安いドルを買う権利”を失っており、下がれば買わなければならないニーズが多い。
 市場は需要過多である。

-市場のセンチメント。
 “これからドル・円は上がりますか、それとも下がりますか?”と質問したら、10人中8~9人は“上がると思います。”と答えるであろう。
 市場のセンチメントは間違いなくドル上昇を見ているのは明らかである。
 (尤も、こういう風に相場観が偏ると反対方向に行くものだと言う人も居るが..)

-そして最後は当局、或いは政治サイドからの円安牽制発言(口先介入)、及び行動(実弾介入)。
ここ最近、両者から“為替相場の急激な変動は好ましくない。”、“為替相場の動きを注視している。”、“円安にはメリット・ディメリットの両方あり、総体的に日本経済にとって円安がプラスと考えられる。”などのどうでもいい発言が聞かれるが、緊迫感は感じられない。
はっきり言って、これだけドル高&円安進行の要因が目白押しの中での介入は、有ったとしても効果は薄い。
そしてどうもアメリカ・サイドもドルの上昇を気にしている様子も無い。

かつてMr.Yen.の異名を取り、1995年に80円台の円高を阻止し、1998年には逆に130円台での円安を阻止する為に大規模介入を行った榊原元財務官は、“介入を成功させる為には市場に大きなサプライズを与え、市場に負けない規模での大規模介入が必要である。”と仰っていた。
そしてそれを実践されて平均85円で買って、140円で売ると言う涎が出る様なディールを行われた、しかも途方も無い大きな金額で..
今はその様な気概を持った当局者は居ないのであろう..


市場では日銀がイールド・カーブ・コントロール政策の弾力化に踏み切るとか、岸田政権が夏の参院選を控えて円安牽制(口先・実弾介入を含め)に動き出すとの憶測が出だしたが、そうなった場合でもドル安&円高の動きは限られたものに留まろう。
なにしろ“何が何でも115円に持っていくぞ!”などの目的が有る訳でもなく、“円安進行のスピードが速過ぎる。”程度の認識ではこのドルの上昇トレンドを止めることは望むべくもない。
もし何かが起きてドル安&円高が進行したなら、ドルの絶好の買い場となろう。

Buy on dips.(下がったら 買う。)の戦略で臨みたい。

今週のテクニカル分析の見立ては、122.50を下切らない限り、ドル・ロングを保持。
上サイドには目立ったレジスタンス(上値抵抗線)は見当たらず。

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