“口ばかり。”

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日銀の長期金利目標の上限とする0.25%の無制限の指値オペの効果は大きく、先週月曜日の欧州市場ではドル高&円安の動きが続いて、凡そ6年半振りの円安水準となる125.08を示現した。

3月の始値は114.97、そして3月28日には高値125.08を付けて、何とひと月足らずの間に10円11銭上げると言う久し振りの大相場を見せてくれた。

これは此処でも挙げた様にどうやら“有事の円買い。”と言うシナリオが崩れてゲーム・チェンジが起き、市場がよりファンダメンタルズに目を向けだしたと言う点が最大の理由であるが、その他にも市場のポジションが変わったと言うテクニカルな点も挙げられる。

東京市場のドル・円の出来高の内の大きなシェアーを占める我が国の個人投資家のポジションの推移を見ると、ある程度120円を超えてからのドルの続騰の理由が窺える。

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一言で言うと、114~116円のレンジ取引が続いている間、114円台では買い、116円台では売りと言うレンジ取引が上手く行っていた。

116円を超えても再びレンジに戻ると思ってドルの売り持ちを保持したが、ついに120円を超えたところで売り持ちを損切りし、ドテンしてドルの買い持ちに転じた。
当然、ドルの上昇に拍車を掛けた。

ところが125.08を頭にしてドルの下落が始まり、123円近辺で今度は買い持ちを損切りし、恐らくドテンして売り持ちに転じたが為に相場はオーバーシュートして、ドルの下落に拍車を掛けて121円台まで急落した、と言うのが当たらずとも外れではない憶測であろう。

上の我が国個人投資家の残高そのものは大した額ではないが、これはネットの数字で実際に取引された額はもっと大きい筈で、取引を執行するインターバンク市場のディーラーに多大な影響を与えたことは間違いあるまい。
ディーラーの本能として顧客の動きに乗じて同方向の取引を行うのは常識である。

125.08まで上昇した後121.29まで急落し、相場は大分こなれた感が有るがドル・円の上昇局面が終わったと判断するには未だ早そうである。

先週のレポートで“お上(金融当局や政治サイド)からの円安牽制が期待出来ない今はテクニカルな相場の反転を望むしか無い。”と述べて、実際力強い円安牽制が無いままテクニカルに相場は反転したが、全くのところお上は口ばっかりである。

その口ばっかりをご紹介すると、
岸田首相、
-為替の安定は重要、急速な変動は望ましくない。
(そりゃ、誰だってそう思う。)

松野官房長官、
-為替の急速な変動は望ましくない。緊張感を持って注視。
(我々一般投資家の方がよっぽど緊張感を持って相場を見ている。)

鈴木財務相、
-悪い円安にならない様にしっかり注視。
(125円は悪い円安ではないのか?)

神田財務官、
-日米財務官協議で、最近のドル円相場の動きについて議論。
日米財務官協議で、G7やG20における為替に関する合意を維持。
為替について日米通貨当局間で緊密な意思疎通図ること確認。
為替の安定は重要で急激な変動は望ましくない。
為替の過度な変動や無秩序な動きは経済や金融の安定に悪影響。
 (為替介入の責任者として一番まともな事を仰っているが、目新しさは無い。)

(  )は塾長の独り言。

で、結局は皆さん口ばっかりで緊張感を持っているとは到底思えない。

どうやら125円はお上が考える危険なラインではなく、アメリカも以前ほど円安進行に神経を尖らせているとは思えない。

そもそもアメリカの財務省は、“為替相場は市場の動きに委ねるべきだ。”と言う意見が主流で、為替介入には否定的である。

先週の神田財務官とボーコル米財務次官との会談でも米国側は特にドル・円の上昇に懸念を示すことも無く、何方かと言うと物価高に悩む米国にとってドル高は問題とは言えないと言う雰囲気であったらしい。

今週は6日に前回のFOMC.議事要旨が発表されるが、その中で保有資産の縮小方法や規模について、これまでより具体的な内容が示されると思われる。
量的引き締め(QT)が、速いペースとなるようであれば、長期金利の一段の上昇を促しドル高が進む可能性もあるが、8日に発表される我が国2月の経常収支にも注目したい。
3月の円暴落の一因として、3月8日に発表された経常収支が2カ月連続の赤字となり、赤
字額が1兆1887億円と、14年8月の1兆4561億円に次いで過去2番目の規模に拡大していたことがあった。
只2月の経常収支は既に発表された同月の貿易収支赤字が大幅に減っており、一転して大幅な黒字になる事が予想される。
市場予想値は+1兆4500億円と前月の-1兆1887億円から大きく改善すると思われている。

恒常的な貿易赤字増大=経常収支赤字の拡大の構図は変わらないが、2月の数字を見て市場が短期的な円の買い戻し(ドル売り&円買い。)に入っても不思議ではない。

ある程度ドルが下落する様であれば、ドルの絶好の買い場となるかも知れない。


今週のテクニカル分析の見立ては121.50~123.50のレンジを予想。
123.50を上切れば、再び125円の挑戦も有り。
逆に121.50を切れば120.00までの調整も有り。
上下共に深追いは禁物。

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