先週の11月25日(木)はアメリカではサンクス・ギビングデイ(感謝祭)と言って、この日からクリスマス・モードに入り、人々は旅行に出掛けたりショッピングに繰り出す。
そしてその翌日の金曜日はブラック・フライデイと言って前日の感謝祭の売れ残り商品のセールと共に大規模な安売りが実施される。
買い物客が殺到して小売店が繁盛することでも知られており、店が大きく黒字を出すので何時からかこの日はブラック・フライデイ(黒字の金曜日)と呼ばれだした。
このブラックは黒字の黒のブラックである。
我々金融界に居る者にはもう一つブラックが付く馴染みの言葉が有る。
これは1987年10月19日(月)ニューヨーク株式市場で株の大暴落が発生し、この日の事をブラック・マンデイ(暗黒の月曜日)と呼ぶのである。
このブラックは暗黒のブラックである。
そして先週の金曜日、突然ブラック・フライデイ(黒字の金曜日)が違った意味のブラック・フライデイ(暗黒の金曜日)へと豹変した。
同じブラックでもその中身は途轍もなく違うものである。
そのきっかけとなったのは東京時間に伝わった南アフリカで新型コロナ・ウィルスに変異型が見付かったと言うニュースであった。
それはオミクロンと名付けられた。
金曜日の日経平均株価は一時900円以上値下がりした後747円安で引け、その後の欧州株式市場、ニューヨーク株式市場でも株価は大きく下げ、リスク・オフ(投資家が既存の債権を売り、新たな投資を控える。)となって安全資産と目される円とスイス・フランが大きく買われた。
ドル・円相場は高値115.36から徐々に値を下げ、何と2円以上も下げる安値113.06を付けた後113.29で週を終えた。
アメリカで早期利上げ機運が高まって多くのプレーヤーがドルを買い持ちにしていたので、損切りのドル売りが出たことも下げを加速した事であろう。
ビット・コインも前日終値680万円から618万円へと9%以上も下げ、違ったブラック・フライデイ(暗黒の金曜日)になってしまった。
木曜日がサンクス・ギビングデイでニューヨーク市場が休場となり、金曜日も祝日を取って4連休の長い週末とした市場参加者も多く、市場の流動性が低かったことも相場のVolatility.=(変動率)を大きくした。
金曜日の夜に海外の友人と話したら、"There are lots of tears and blood in the market."=(市場は涙と血で溢れている。"と市場の惨憺さを表現していた。
株価が下がり、安全資産である債券が買われアメリカの長期金利も軒並み下げたが原油価格も前日比10ドル以上下げて68.15ドルで週を終えた。
備蓄石油の放出を決めたバイデン大統領はほくそ笑んでいるであろうが、実は価格の下落はそれによるものではなく、オミクロンによって再び世界中の人的、及び物流の流れが滞ることを懸念してでのことである。
案の定幾つかの国が外国人の入国を禁止したり、入国制限強化に乗り出した。
たった今、ニュースが我が国も明日の午前0時を期して全世界からの外国人の入国停止を決めたと報じた。
恐ろしいのは、このオミクロンについてその毒性が強くて重症化リスクや致死率が高いのか、既存のワクチンが効くのかと言うことが全くと言う程分かっていないことである。
少なくともオミクロンの伝搬能力と速度が物凄く早いことは分かっており、南アフリカの近辺諸国やヨーロッパ幾つかの国々、そして香港とオーストラリアでも陽性反応者が発見された。
この不安な状況ではリスクは取れない。
週明けの東京市場でも株価は乱高下し、オープン後に前日比400円超の下げを演じた後に一時はプラス圏内に戻したが、午後2時半現在では再び500円安となっている。
ドル・円相場は安値の113.30近辺でオープンした後実需の買いに押されて高値113.87まで上昇したが株価の下落と共に再び売られて午後2時半現在では113.40まで値を落としている。
オミクロンの正体(どの程度の毒性を持つのか?ワクチンは効くのか?)を突き止めるのには最低2週間程度は掛かるらしい。
その間は余りリスクを取るのは賢明とは思えない。
基本的には様子見のスタンスが良いのではなかろうか?
テクニカル分析は今回の様な突然の地政学的リスクの勃発や為替介入などの外的な要因による動きには甚だ弱い。
理由は過去の動きが全く参考にならないからである。
暫くはヘッドライン・ニュースに気を付けながら保守的な取引に終始したい。