“リスク・オフ、そしてドル高&円高。” 

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先週のドル・円相場は前週発表された米10月消費者物価指数が前年比+6.2%と31年ぶりの高い伸びとなったことで消費への影響が懸念される中、10月の米小売売上高(季節調整済み)が前月比1.7%増と、市場予想の1.4% を超えて増加したことを好感して長期金利が上昇し、それに伴ってドル・円相場も4年8ヶ月ぶりの高値となる114.96を示現した。
小売売上高の増加は3カ月連続で、新型コロナ・ウィルスの影響で供給の制約が続く中、年末商戦が早めに始まったことで押し上げられたとみられている。

これを受けてニューヨーク株式市場も堅調に推移し、S&P.は木曜日に、ナスダックは金曜日に史上最高値を更新して引けた。

ドル・円に関しては115円の大台を前にして利食いのドル売りが入り、又115円丁度のオプションに対する防戦売りの大玉も出て同日の内に1円以上も下げて113.94の安値を付ける場面も有り、荒い展開となった。

ドル・円相場は週末に向けて再び値を戻し、金曜日の欧州市場が始まる頃に114円台のミドルまで上昇していたが、午後6時頃(欧州時間午前10時)に新型コロナ・ウィルスによる新規感染者数が増え続けていたオーストリアが週明け22日からロック・ダウンを行うと宣言し、またドイツもロック・ダウンの可能性を示唆した為にユーロが急落し、リスク・オフの動きとなってドルが買われ、同時に円も買われる展開となった。

通常はユーロ下落=ドル上昇でユーロ・ドルが下落する時はドル・円は上昇する傾向が有るが、金曜日はユーロ下落、ユーロ・円下落、そしてクロスの円高につられて豪ドル・円やポンド・円が軒並み円高となり、ドル・円、ユーロ・ドル、ユーロ・円、豪ドル・円の60分足チャートを見ると、この4通貨ペアーが同時刻に揃って大陰線になると言う面白い動きを見せた。

その他通貨に対する円高の煽りを食ってドル・円相場も一時113.59の安値まで下落したが、115円手前で防戦売りをした投機筋の買い戻しも入り、週明けの東京市場では114円台を回復して小動きとなっている。

先週数多く聞かれたFRB.高官のコメントは総じてタカ派的(金融緩和に消極的)と思われたが、今週公表される11月からのテーパリングを決定した前回のFOMC.議事録でFOMC.に於いてどの様な議論が為されたのかを知る事が出来れば興味深い。

もう一つ、来年2月に任期が切れるパウエルFRB.議長に関する人事の行方も気になるところである。
パウエル議長の再任が濃厚と見る向きが多いが、ブレイナード理事の昇格を望む声も大きい。
ブレイナード理事はFRB.内でも強力なハト派と見られており、パウエル議長の後任となれば好調な雇用状況や小売売上、そして高い物価指数などによる早期利上げ期待が萎んでドルが下がる事も考えられるが、バイデン政権にとっては現在のインフレ高進が最大の問題となっており、同じくハト派であるがよりバランスの取れたパウエル現議長を再選する可能性が高いと思われる。

パウエル議長の再選ならば現状維持でドル高、ブレイナード理事の昇格ならば早期利上げ期待縮小でドル安と見るが、依然としてドル・円相場は113円~115円のレンジが続くものと思われる。

レンジのドル・円相場に比べて動意が有りそうなのがユーロであろうか?

対ドルで1.1500の大きなサポート(下値支持線)を下切り、上で述べた欧州のコロナ事情やECB.による頑なな利上げに対する抵抗を見ると更なる下落の可能性が高いと思われる。


シカゴ・IMM.の投機筋のユーロの持ち高を見ると先週11月16日の時点でネットで3,826枚の売り持ち(約5億ユーロ)となっているが、これは円のネットの売り持ち93,126枚(約102億ドル相当のドルの買い持ち)に比べると極めて小さい。

シカゴ・IMM.のポジションの観点から言うとドル・円の上昇余地は小さくユーロ・ドルの下げ余地は大きいと思われる。


ドル・円のテクニカル分析の見立ては113.80を割り、先週の安値113.60を下切る様であれば111円台も有り、逆に115.00を上切るとストップの買いも含めて一段の上昇も考えられる。

今週もレンジを意識して安値で売らず、高値で買わない様に丁寧にやりたい。

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