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【底堅い人民元】過去最大の貿易黒字と高い金利水準「プロが解説 人民元見通し」戸田裕大

人民元見通し

こんにちは、戸田です。

本シリーズでは、日本ではまだまだ情報の少ない人民元について、発表された報道や公表された経済データなどをもとに、相場の見通しを立てていきます。中国の金融市場(人民元や中国株・中国債券など)が世界の金融市場に与える影響は年々大きくなっていますので、人民元や他通貨の売買、ひいては世界経済の流れを掴むための情報としてご参考にして頂ければ幸いです。

第5回は「【底堅い人民元】過去最大の貿易黒字と高い金利水準」といたしまして、お伝えいたします。

目次

1.足元の人民元相場
2.注目のトピック
3.今後の見通し

1.足元の人民元相場

まず簡単に足元の人民元相場について振り返っていきましょう。

<USD/CNH(ドル/人民元)日足>
作成段階の為替レート:1ドル=6.3957人民元

USD/CNH(ドル/人民元)日足

USD/CNHは先月の中旬に直近のサポートレベル6.4250をクリアに下抜けたあと、一時6.36台に下落しました。ですが、その後は緩やかに反発し6.39を挟んでの推移が続いています。

もう一つ下のサポートレベルが6.35で、これは2021年5月の安値水準です。ここを下抜けると、もう一段の下落(ドル安、人民元高)が想定されます。


<CNH/JPY(人民元/日本円)日足>
作成段階の為替レート:1人民元=17.76円

CNH/JPY(人民元/日本円)日足

2021年10月のCNH/JPYは、20日にドル円の上昇と人民元高が同時発生し、一時17.98円まで上昇するなど強い伸びを見せました。その後はじりじりと値を下げていますが、ドル円の調整が主因であり、人民元が売られているわけではありません。

まとめますと、人民元高の勢いが少し和らいできている状況と言えます。

2.注目のトピック

為替レートに関係が深そうな話題を3つピックアップしました。

一点目がUSD/CNHの6.40の攻防です。毎営業日、中国人民銀行(金融当局)の動きを追っているのですが、どうも6.40を意識しているように感じます。具体的には6.40よりも人民元安が進むと短期金融市場を引締め、6.40よりも人民元高に進むと短期金融市場を緩和的に誘導しているように映ります。

あくまで推測の話になりますが、中国人民銀行は政策として6.40を意識している可能性があります。従いまして、6.40から大きく動かないシナリオも想定しておくべきと考えます。

二点目が米中の金利差です。人民元の3ヵ月金利は米ドルの3ヵ月金利よりも約2.3%高い水準を維持しています。これはシンプルな人民元高要因です

人民元が底堅く推移する中で、高金利の人民元を売って、低金利のドルを買うインセンティブはなく、この要因が引き続き人民元高要因として市場で意識されると考えます。

米中金利差(3カ月物)


なお米国の量的緩和のスケジュールが決定(2021年11月開始、2022年6月完了)したことで、米利上げ時期も2022年7月以降になると見られています。したがって目先、米ドルの3ヵ月金利が上昇することはまずないでしょうから、しばらくは米ドル売り、人民元買いのキャリートレードが選好されるのではないかと考えます。

三点目が過去最高を記録した中国10月の貿易黒字です。中国経済に関して色々と騒がれている割には中国の輸出は伸びていますし、コロナ厳戒態勢で国民は海外旅行に行けず爆買い(貿易の赤字要因)もしませんから、貿易黒字が非常に大きく積み上がっています。

中国の貿易統計
貿易黒字が大きくなればなるほど、中国の国内に外貨が溜まり、それを人民元に替えるフローが多く発生しますので、これも人民元高要因と考えます。

3.今後の見通し

現時点における11月の人民元相場見通し
対ドル:6.3500~6.4250 横ばい~やや下の目線
対円:17.50縁~18.00縁 横ばい

対ドルの人民元相場については底堅い動きを想定します。前述のように約2.3%の金利差(高い人民元金利)が維持される可能性が高く、また貿易が好調で外貨を人民元に転じる圧力も強まっていることから、人民元が大きく売られる展開を想像することは出来ません

唯一の懸念材料は中国人民銀行がUSD/CNHを6.40前後に誘導している可能性です。その場合には上下どちらにも大きく動かないかも知れません。従って目線は人民元高ですが、小幅に上下する展開を想定しています。

このような状況下で、対円の人民元相場についてはドル円次第となりそうです。ドル円のレンジを112.20円(2021年10月の上昇が始まった起点)~114.40円(直近の高値圏)で置いた場合の想定レンジが17.50円~18.00円となります。

ドル円は上値が重い展開が続いています。ここのところドル高と円高がセットで発生したり、新興国が買われるとなぜか円も買われたりと、少し普段と違う動きが見られるようになってきました。

2021年はほぼ一本調子で上昇してきましたから、そろそろ大きめの調整が入る可能性についても留意しておきたいところです。


本日は以上となります。引き続き、ご支援のほどよろしくお願いいたします。



戸田裕大


<参考文献>
各種為替データ:https://Investing.com
米国の短期金利:http://iborate.com/
中国の短期金利:https://Investing.com

<ご留意事項>
文中で人民元を日本円へ変換した為替レートは、1人民元=17.30円で計算。

米中金利差のグラフは参考文献に記載のウェブサイトよりデータ取得し、戸田が手元で作成。

<補足事項>
人民元相場を追っていく時に、大切なことは、USD/CNH(ドル/人民元)を必ずチェックしておくことです。取引そのものはCNH/JPY(人民元/日本円)で行うことが多いと思いますが、CNH/JPYはUSD/CNHとUSD/JPYで構成されていますので、USD/CNHもチェックしておくことが肝要です。

またPBOC(中国人民銀行)が最も気にしているのもUSD/CNH(厳密にはUSD/CNY)です。日本銀行がドル円のレートを常に注意しているのと同様、PBOCも常に対ドルレートを気に掛けています。ですからUSD/CNHを見ておくことで、PBOCの動きにもアンテナを高くしておくことが出来るのです。

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株式会社トレジャリー・パートナーズ 代表取締役 戸田裕大 (とだ・ゆうだい)氏
代表を務めるトレジャリー・パートナーズでは専門家の知見と、テクノロジーを活用して金融マーケットの見通しを提供。その相場観を頼る企業や投資家も多い。 三井住友銀行では10年間外国為替業務を担当する中で、ボードディーラーとして数十億ドル/日の取引を執行すると共に、日本と中国にて計750社の為替リスク管理に対する支援を実施。著書に『米中金融戦争─香港情勢と通貨覇権争いの行方』(扶桑社/ 2020 年)『ウクライナ侵攻後の世界経済─インフレと金融マーケットの行方』(扶桑社/ 2022年)。
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