円安が止まらない。
ドル・円相場は109円~111円のレンジを3ヶ月間続けた後、レンジの上サイドの111円を切った後は、殆ど押し目らしい押し目を見せないまま糸が切れた凧の様に上昇を続け、先週は凡そ3年ぶりのドル高&円安となる114円台のミドルを示現した。
111円を終値で切った9月27日から先週金曜日までのその他主要通貨に対する動きを見ると、まるで円の独歩安であるかの様な動きを見せているのが分かる。
この3週間の間に米国10年債利回りは0.083% 上昇したが、米国長期金利高を反映してのドル高ではない。
年内の利上げが見込まれるポンドと、原油高によって買われた資源国通貨である豪ドルに対してはドル安が進んだ。
9/27 10/15
10年債利回り 1.490% 1.573% 0.083% 金利上昇
ドル・円 111.01 114.25 2.9% 円安&ドル高
ユーロ・ドル 1.1695 1.1599 0.8% ドル高&ユーロ安
ユーロ・円 129.83 132.52 2.1% 円安&ユーロ高
ポンド・ドル 1.3702 1.3745 0.3% ドル安&ポンド高
ポンド・円 152.11 157.05 3.2% 円安&ポンド高
豪ドル・ドル 0.7286 0.7419 1.8% ドル安&豪ドル高
豪ドル・円 80.88 84.77 4.8% 円安&豪ドル高
円が独歩安となった最大の要因は何と言っても原油高である。
9月27日には1バレル=75.45ドルであったWTI.は直近では82ドルを超え、市場では年内にも100ドルに達すると言う意見も有る。
原油高による輸入額の増大と輸出減少による我が国貿易収支悪化の恐れが増大している。
また他の先進主要国が金融緩和政策からの脱却を目指す中、我が国は新型コロナの影響による景気低迷でにっちもさっちも行かない超緩和政策を強いられ、金利差拡大による円安懸念を払しょくすることは甚だ難しい。
105円~115円の凡そ10円幅のレンジが5年も続き、その後109円~111円の狭いレンジを3ヶ月見てきて市場はかつての大相場を忘れかけているかも知れないが、ドル・円相場は2015年には125.85の高値を付け、翌2016年には98.80の安値を付けている。
その1年間の値幅は実に凡そ27円。
かつてはドル高&円安方向への歯止めとして往々にして米国からの円安に対するけん制が見られたが、現在のバイデン政権とイェレン財務長官には為替問題は大したIssue.
でない。
むしろ2015年の125円を超えるドル高&円安に対して黒田日銀総裁が“円安の行き過ぎ。”を懸念した事を思い出す。
このまま円安が進むと米国からよりは我が国の政策当局から、“悪い円安進行”を止める為の円安けん制の発言が出てきても不思議ではない。
現在我が国ではガソリン価格のみならず、幅広く物価上昇が目立つと聞く。
給料が上がらない中、円安による物価上昇で家計の懐がこれ以上痛んでは敵わない。
何時も思うのだが、我々庶民にとっては円安よりも円高の方が何かにつけてメリットが大きいと思う。
只残念ながら現時点ではドル高&円安の進行を阻む要因を見つけ出すのは易しくない。
理由を挙げると、
-殆ど調整が無いまま急激なドル高&円安が進行し、ドルを売りたい人は既に売ってしまい、ドルを買いたい人は買いそびれた。
これから更にドルが上昇すると輸出筋はラグズ(決済を遅らせる。輸出予約締結をためらう。)を行い、輸入・資本筋はリーズ(決済を早める。輸入予約締結を急ぐ。)を行う可能性が高まり、更なるドル高&円安を加速させる。
-順張り(ドルが上昇すると追い掛けて買い上げる。)が得意なシカゴ・IMM.の投機筋は円の売り持ち(ドルの買い持ち)を増やしているが、逆張り(ドルが上昇すると向かって売りを仕掛ける。)が得意な我が国個人投資家は3週間続けてドルの売り持ちを増やしており、あるレベルを超えると損切りのドル買いに走らざるを得ない状況にある。
-これから冬に掛けて世界的に原油やLNG.ガスなどの燃料需要が増えるのは必至で、燃料価格が下がり難い状況が続く。
輸入総額の増大と自動車減産による輸出総額減少による我が国貿易収支の悪化が懸念される。
-海外の岸田内閣に対する評価が余り芳しくない。
流石に選挙公約として挙げたキャピタル・ゲインに対する増税案は引っ込めたが、“Kishida, who ?”=(岸田って、誰?)と言う感じで大きなリーダーシップを期待していない。
“よく分からない人。”と見られていて新内閣の支持率が高くないことを気にしている風がある。
円にとってはどちらかと言うとネガティブの様な気がしてならない。
2017年から2018年に掛けて何度も115円の壁に阻まれて此れを上切るのは結構しんどいかも知れないが、一旦此れを上切れば思わぬドル高&円安相場になる可能性が有る事も頭に入れておきたい。
今週のテクニカル分析の見立てはドルが買われ過ぎと指摘しているものの、相変わらず上を見ており、2円下の112.30を下切れない限り115円をトライすると見ている。